第3話

 緊急避難警報が流れて30分ほど経過した頃。

 私は見ず知らずの場所でドラゴンと熾烈な戦いを繰り広げていた。

 

「ちょっと、これ本当にどうにかなるの……?」

 

「何を仰いますか!?

 勝てる保証があるからこそこのような岩場の多い水辺の湿原にしてあげたのでしょう!?」


「だからって、勝てる保証は何処にもないわよね!?」


「ご心配なくっ!! 魔法少女はどんな逆境をもくつがえす存在なのです!!

 だから、あなたにも出来るはずなんですっ!!!!

 さあ、私と共にあのような下劣なトカゲを倒しましょう!!!!!

 と、いうわけで……がんばって♪」


「結局私任せじゃない!?」


 こんな風に呆れた会話を続けながら、私は絵本に出て来そうなハートのステッキを片手に振り続け、“魔力玉マジカルスフィア”と呼ばれる10センチほどの球状の魔力の砲弾を放って攻撃。

 その後は岩場に身を隠し、不意をついて攻撃という同じ手順を繰り返した。


 何とか、ダメージを与えられてはいるものの、ダメージを与えた側から傷口が物凄い速さで治っていく。

 

 一撃で倒さないとただ無駄に魔力と体力を消耗していくだけだ。


 だが、一撃でといっても相手はドラゴン。

 時として、神として崇められる存在。

 どう考えても決め手が見つからない。


 正直、八方はっぽうふさがりだ。


 それに比べて―――――


「もう何やってるんですか!? 魔法少女は魔法少女らしくズドーンっとサクッと解決しなくちゃいけないですよ!!?」


 こいつはこいつで無理難題を押し付けてくるばかりで、助言すらしようともせず、傍観に徹するだけ―――――

 ほんと、どうすればいいのよ……。


 絶望的な状況下で、ただただ私の溜息だけが空しく湿原に響き渡っていった。


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