第12話嗚呼…早苗も顔を…

一体、早苗の身に何が起こったのか…?

振り返ると、早苗の猛攻で失神した筈の英二が、頭から血を流しながら、片手に手提げ鞄を持って、立ち上がって早苗を睨み付けていた。

そう、英二は実は失神した振りをしていて、隙を見て早苗に襲い掛かって来たのだ。

「ずいぶんと舐めたことをしてくれたなぁ!このお礼はたっぷりさせて貰うぞ!」そう言って英二は、倒れたままの早苗に近付くと、思いっきり早苗の顔を平手打ちした。

そして、「俺様から離れる前に、この手提げ鞄の中身を調べれば良かったものを!」となじりながら、手提げ鞄を開けると、中にはまだ手錠が入っていた。

そう、早苗は英二を襲撃した後、その手提げ鞄の中身を調べれば良かったのだ。しかし、英二に顔をズタズタにされ、虫の息状態の由香里達が気掛かりで、それを怠ってしまったのだ。

英二は、手提げ鞄から手錠を取り出すと、すっかり恐怖に怯えてしまい始めた早苗の両手首に、容赦なく頭上で手錠を掛けた。

そして、次に斧を手に取ると、早苗の頭を持ち上げ、腰にまで伸びた早苗の長い髪をバッサリ切った。

再び早苗を押し倒すと、「今すぐこの小娘達の仲間にしてあげるからな!」と声を上げ、恐怖に怯える早苗を顔に、斧を降り下ろしたのだった。


早苗の顔目掛けて、何度も斧を降り下ろし続ける英二…

その度に、早苗の顔から悲鳴と共に、赤い血が容赦なく吹き出し続けた。

ようやく英二が手を止めると、そこには新たに目も当てられない様な光景が広がっていた。

そう、由香里達の身を案じて、その場に助けに現れた早苗までも、フェイスキラー・英二の手により、早苗本人だと分からなくなるほど、顔をズタズタに切り裂かれてしまっていた。

しかも、先に顔をズタズタにされた由香里達と同様に、腰にまで伸びた長い髪までバッサリ切られてしまっている為、余計、早苗本人である事が分からなくなってしまっていた。

服装も、由香里達と同じ、白いタンクトップ型ワンピースなので、尚更である。

当の早苗は、由香里達と同じ様に、顔から溢れ出る大量の血が目に入ってしまい、目が見えなくなってしまっている上に、喉の奥に血が入り込まない様に、口を閉ざし続け様としたものの、所々貫通してしまっている頬の傷口等から血が入り込んでしまい、やがて口から血を吐きながら咳き込み始めた。

少しでも出血を止めたいのと、これ以上英二に顔を見られるのが嫌で、手で顔を覆いたくても、両手首を頭上でしっかり手錠で固定されてしまっている為、それさえも出来なくなってしまっていた。

早苗の異変に、辛うじて目が見えないながらも意識を保ち続けていた、杏理と恵梨香の2人も気付き始めた。

「まさか…早苗も顔を…?」

「そ、そんな…早苗…」

そう杏理と恵梨香が呟くと、ついに奇跡的に意識を保ち続けていた2人も、意識を失ってしまった。

「いかがかな?小娘達の仲間入りした感想は?」英二は、早苗に向かってこう言葉掛けると、血で赤く染まっている早苗の両頬に、容赦なく平手打ちした。

続けて、「小娘達と同じ目に遭う事が出来て光栄だろ?」と暴言を吐くと、立て続けに、早苗の両頬に平手打ちを繰り返し、鈍い音と共に、早苗の口から悲鳴が漏れた。

更に、「これでひとまずラストだ!」と叫ぶと、早苗の頭を掴んで起き上がらせると同時に、思いっきり早苗の顔を、ゴキッという音と共に、英二の膝がとらえた。


英二の膝蹴りを顔にまともに喰らい、同時に鼻に激しい痛みが襲い、声にならない悲鳴を上げる早苗…

英二の膝が顔から離れ、再び仰向けに倒れると、無惨に骨折してしまった早苗の鼻から、新たな出血が確認出来た。

早苗は、顔の無数の傷口からの激しい痛みと出血と、立て続けに平手打ちされた痛みに、更には、顔を膝蹴りされたせいで骨折してしまった鼻の激しい痛みが短時間に加わり、急速に意識が薄れていった。

薄れていく意識の中で、早苗は、朝方、法事を強引に欠席して、途中で別れた両親を思い浮かべた。そして、心の中で、「お父さん…お母さん…」と呟くと、ついに早苗も、意識を失ってしまった。

そんな様子を英二が見ると、「どうやらこの小娘も気絶してしまったか?まぁいいや。このまま放っといてもくたばると思うが、止めをさしておこう。」と言うと、残酷にも、既に意識を失ってしまっている早苗達の頭を、斧で致命傷を負わせる暴挙に出ようとした。

「まずはやっぱりこの小娘からあの世に送ってやろう。」そう言って最初にターゲットに選んだのは、早苗だった。早苗にゆっくり近付き、「兄、英一の仇だ!喰らえー!」と叫んで、早苗の頭目掛けて、思いっきり斧を降り下ろそうとした時、突然、男の叫び声が響いた。

「止めろー!」

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