第13話絶望の果て…

英二が、叫び声が響いた方向に視線を向けると、そこには、拳銃を向けた1人の男が立っていた。

更に、拳銃を持った男の後ろには、4人の男と、1人の女の姿があった。

拳銃を持った男は、銃口を英二に向けたまま、「手に持っている物を捨てろ!」と怒鳴った。

しかし英二は、斧を手に持ったまま、男に襲い掛かろうとする素振りをみせた。

すると男は容赦なく、英二に向けて、拳銃を1発、2発と発砲した。

撃った弾丸は、容赦なく英二の胸に命中し、英二は赤い血を流しながら、仰向けに倒れた。


英二に向けて発砲した男と、後ろにいる5人の男女は、実はN県警S警察署の刑事だった。

数時間前、A警察署長河西は、早苗との電話のやり取りの後、早苗達に身の危険が迫っていると感じ、早苗の証言を元に、N県警本部に、協力要請を依頼した。

依頼を受けたN県警本部は、N県内のホテル、旅館に電話を掛け、早苗達6人の宿泊予約が入っているかを調べる事から始めた。

しかし、N県自体、比較的広大な面積があるのに加え、A警察署からは具体的な場所の情報がなかった事もあって、捜索は難航を極めた。

捜索から数時間後、ようやく早苗達の宿泊予約が入っている旅館を特定し、所轄であるS警察署に、刑事を向かわせる様指示した。

連絡を受けたS警察署では、すぐに警部の田中、田中の部下の武川、塩崎、赤石、清水、それに女刑事の小島を向かわせた。

田中達6人は、旅館に着くと、旅館の女将から、まず5人のお揃いの白いワンピース姿の女性達が旅館に現れ、部屋に荷物を置くと近くの小川が流れる広場に向かった事、それから2時間ほどして、もう1人の同じく白いワンピース姿の女性が少し慌てた様子で旅館に現れ、その女性も、部屋に荷物を置くと、急いだ様子で広場に向かった事を聞いた。

田中達は、すぐにその場所に急行し、そして、6人の白いワンピース姿の女性らしき人物が、手に斧を持った男に襲撃されている光景を目の当たりにしたのだ。


警部の田中は、英二に向かって発砲した拳銃をしまうと、すぐに携帯を取り出し、現状を細かく説明しながら、数台の救急車の出動要請の電話を入れた。

そして、田中達6人は、改めて想像以上に悲惨な場と化してしまっている現場を見渡した。

胸元から血を流しながら仰向けに倒れている英二の近くには、6人のお揃いの白いタンクトップ型ワンピース姿の女性らしき人物が、仰向けに倒れている。

彼女達の顔は、英二の近くに転がっている斧で、無惨にズタズタに切り裂かれてしまったらしく、大量の血で赤黒く染まっていて、すっかり誰が誰なのか分からなくなってしまっていて、顔から溢れ出た血が、大きく空いた胸元や、白いワンピースも赤黒く汚してしまっている。

そして、彼女達の周辺を見渡して見ると、所々髪が散らばっていて、斧で髪もバッサリ切られてしまって、余計、誰が誰なのか分からなくされてしまっている光景も窺えた。

更に、田中達がより残酷に思えたのは、彼女達の両手首が頭上でしっかり手錠で固定されてしまっていて、本来なら、両手で無惨な顔を隠したい筈なのに、それさえも出来なくされてしまっている事であった。

こんな悲惨な光景をより悲しい思いで見続けているのは、やはりただ1人の女刑事である小島であった。

S警察署長は、被疑者が若い女性という事もあって、ケアも必要だと考えて、より相手になりやすい様に小島を向かわせたのだが、正直、こんな目も当てられない光景を想像していなかったのである。

こんな思いを振り払うかの様に、田中は重々しく部下達に指示を出した。

「この場所だと救急車が入ってこれないから、大変だけど彼女達を旅館の近くまで移動させよう。俺と武川、それと塩崎と赤石で彼女達を運ぼう。清水はここに残って男と彼女達を見張っていてくれ。男は恐らく生きていない可能性あるが、万が一という事もあるから。小島は取り敢えず俺達に付いて来てくれ。」

そして、まずは田中と武川、塩崎と赤石のペアで、1人ずつ両手・両足を持って、彼女達を移動し始め、小島が後を付いていった。数十分かけて旅館の近くまで彼女達を運ぶと、ひとまずその場所に寝かせ、田中は小島に、「辛いかも知れないが、この場で見張っていてくれ。」といい、再び、武川達と共に、広場に戻って行った。

小島は、一旦旅館に向かい、女将に、タオルを6枚欲しいとお願いした。女将から、白いタオルを6枚受け取ると、急いで彼女達の元に戻り、そっと2人の血に染まった顔にタオルを掛けてあげた。

一方、田中達は、広場に戻ると、再び2人の女性を2組で旅館の前まで運んだ。そして、その場に寝かせて、三たび広場に戻り、小島は、2人の顔にタオルを掛けた。

残る2人を運び終わると、今度は田中1人が広場に戻り、清水と2人で、英二を運んだ。その間に小島は、2人の顔にもタオルを掛けてあげた。

救急車が到着擦るまでの間に、彼女達の両手首を固定している手錠も、どうにか旅館から借りた工具を使って外した。

やがて、旅館近くに、7台の救急車が次々と到着し、彼女達は搬送されて行った。










































































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