第14話衝撃的な一夜
早苗達6人は、それぞれS市内の2つの病院に、3人ずつ救急車で救急搬送された。
一方、英二も、救急車で搬送されたが、途中で死亡が確認された。
早苗達は、2つの病院にそれぞれ救急搬送されると、直ちに緊急手術が行われた。
まず医師たちが彼女達を見て驚愕的に感じたのは、やはり誰が誰なのか分からなくなる程、大量の血で赤黒く染まっている顔だった。
これほど大量出血していて、辛うじて生きているのさえ奇跡に思えた。
更に医師達が残忍に思えたのは、彼女達の顔に数ヵ所も切り傷があるのに加え、鼻を骨折しているのも見受けられた事だった。
その為、数ヵ所の切り傷の縫合に加え、鼻骨骨折の手術も併せて行われた。
彼女達も顔の損傷が激しかった為、手術は夜にまで及んだ。
その日の夜、早苗達の両親が、知らせを受けてS警察署に駆け付けた。
両親達は皆、現場に居合わせた警部の田中から、事の一部始終を聞かされ、余りにも驚愕的な話に動揺するだけだった。彼女達がお揃いの白いワンピース姿だった事、両手首を頭上でしっかり手錠で固定されてしまっていた事、顔を斧でズタズタに切り裂かれ、顔が分からなくなる程血で赤黒く染まっていた事、更には、髪もバッサリ切られていて、余計、誰が誰なのか分からなくされてしまっていた事…
田中の話を聞いて、誰よりも号泣していたのは、早苗の両親だった。元々早苗は、この日行われた法事に参列してから、遅れてこの場所に来る予定だった。しかし、A警察署長からの電話で、胸騒ぎを覚えた早苗は、急遽、法事をドタキャンし、この場に駆け付けたのである。あの時、早苗を説得し、法事に参列させた方が良かったのではないか?それとも、早苗を行かせてあげて良かったのか?両親は泣きながら、複雑な思いを感じていた。そして何よりも、両親が田中の話を聞いて、心に残ったのは、早苗も、白いワンピース姿で、無惨な姿で発見されたという事だった。あの後、一旦家に帰り、喪服からわざわざ友達と同じ服装に着替えていた事で、早苗がより友達思いだという事を、改めて感じていた。
今回の一件で、課題として残っていたのは、彼女達の身元確認だった。何しろ、彼女達の顔が分からなくされているのに、髪も切られていて余計、誰が誰なのか分からなくされているのに加え、同じ服装だった事も災い、余計、身元確認が困難な情況だったのである。
そこで、田中達は、彼女達が救急車で搬送される直前に、あらかじめ彼女達から指紋を採取し、その指紋と旅館に残されていた彼女達の所持品に付着している筈の指紋を照合する事で、身元判明に繋げる様にした。
その為、早苗達の両親は、田中の話が終わった後も、しばらく警察署に止まっていたが、ほどなくして少なくと各病院に搬送された人物が特定出来たと知らせを受けた。
まず、S総合病院本院に搬送されたのは、早苗、由香里、真由美の3人。
そして、少し離れたS総合病院医療センターに搬送されたのは、香織、杏理、恵梨香の3人だった。
その知らせを受けて、両親達はすぐ、彼女達が搬送された病院に移動した。
早苗達両親がS病院本院に着くと、長時間に及んだ手術が終わり、集中治療室(ICU)に移された所だった。
両親達がICUの中を覗くと、早苗、由香里、真由美らしき3人が、顔を包帯でグルグル巻きにされて寝かされていた。
彼女達の変わり果てた姿を見て、改めて両親達の目から涙が溢れた。
手術に立ち合った医師によると、彼女達の顔の数ヵ所に及んだ切り傷を縫合し、併せて鼻骨骨折も確認出来たのでそれの手術も行ったが、出血が激しいので、現在のどころ、生存率は五分五分といった状態だという。
また、助かったとしても、恐らく顔の傷痕は残ってしまうだろうという見解を示した。
ただ一つ、唯一の救いだったのは、目に大量の血が入っていたものの、幸い眼球は無傷だったので、多少の視力低下はあっても、失明の心配は無いという事だった。
話を聞いた両親達は、それでも早苗達は、無事に生きて欲しいと、泣きながら願った。
一方、S医療センターに向かった香織達も両親達も、同じ様な境遇に晒されていた。
長時間に及んだ手術を終え、ICUで顔を包帯でグルグル巻きにされて寝かされている香織、杏理、恵梨香らしき3人を見て、両親達は、ただ泣き崩れるだけだった。
香織達3人も、数ヵ所の切り傷と鼻骨骨折で大量出血し、生存率は五分五分の状態であり、助かっても切り傷の痕は残ってしまうだろうと説明受けたが、眼球は無傷で、少なくとも失明する恐れは無いとの説明も受けた。
そして、香織達も両親も、どうか無事に生きて欲しいと、涙ながらに祈った。
両親達はそれぞれ、病院内で衝撃的な一夜を過ごした。
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