第9話早苗…さなえ…サナエ…
由香里達を身を案じ、必死に由香里達がいると思われる、小川が流れる広場へ駆け続ける早苗…
しかしその場所は既に、フェイスキラー・水島英二の魔の手により、まさしく地獄絵図と化してしまっていた。
由香里、真由美、香織、杏理、恵梨香の5人は、両手首を頭上でしっかり手錠で固定され、斧で髪をバッサリ切られて、顔を斧でズタズタに切り裂かれて仰向けに倒れていた。
ズタズタに切り裂かれた顔は、血で赤く染まっていて、ただでさえ誰の顔なのか分からなくなってしまっている上に、髪もバッサリ切られてしまっている為、余計、誰が誰なのか分からなくなってしまっていた。
由香里達5人が、共にお揃いの白いタンクトップ型ワンピース姿でいるのも、顔が分からなくなってしまっている事に拍車がかかってしまっていて、更に酷い事に、顔から大量に溢れ出た血が垂れ流れて、大きく開いた胸元や、ワンピースの胸元の辺りまでも血で汚れてしまっていた。
彼女達の容態は徐々に深刻さを増して来てしまっていて、大量の血が目に入って目が見えなくなってしまっている上に、所々貫通してしまっている傷口から血が口の中に入り込んで、喉に血が入りそうになる度、血を吐きながら咳き込み続けていた。
そして何よりも彼女達が辛い事なのは、無惨な顔を必死に隠したくても、両手首を頭上でしっかり手錠で固定されてしまっている為、顔を隠す事も出来なくなってしまっている事だった。
激しい痛みと出血で、由香里達5人は、目が見えないながらも、意識が徐々に薄れていくのを感じ始めていた。
そんな苦しみ続ける由香里達をよそに、英二の暴挙はおさまる事なく、「兄、英一を集団で警察に突き出す真似しなければ、こんな目に遭わないで済んだものを!」と声を上げると、血で手が汚れるのも構わず、再び由香里、真由美、香織、杏理、恵梨香の順に、血まみれの両頬を平手打ちしたのである。
平手打ちする度に、無情にも鈍い音が響き、彼女達から微かな悲鳴が漏れた。
平手打ちが済むと、英二の行動は更にエスカレートし、由香里の元へ戻ると、瀕死の状態の由香里の頭を後ろを右手で持って起き上がらせると、思いっきり由香里の顔を膝蹴りしたのである。同時に、鼻の辺りから『ゴキッ。』と音が響き、由香里は声にならない悲鳴を上げ、英二が手を離すと、再びその場に倒れた。
そう、英二の膝が由香里の鼻を直撃し、鼻を骨折してしまったのである。その証拠に、由香里の鼻の辺りから、新たな出血が確認出来た。
英二は続いて、真由美、香織、杏理、そして恵梨香にも、頭の後ろを持って起き上がらせては、思いっきり顔目掛けて膝蹴りを繰り返した。そして、真由美達4人も、鼻を骨折し、鼻から血が出始めていた。
数ヵ所に及ぶ切り傷の痛みと出血に、鼻を骨折した痛みと出血が加わり、由香里達5人の意識は、更に薄れていく一方であった。
そんな由香里達を尻目に英二は、「これ以上苦しみ続けるのも嫌になって来ただろうから、そろそろ楽にしてやろう。」と言うと、一旦手から離していた斧を再び手に取った。
その口調から、由香里達は皆、ついに自分達は英二の手で殺されるのを悟った。そして、由香里達の脳裏を、複雑な思いがよぎった。
私達は殺される…出来るなら生き続けたい…でも、仮に命が助かっても、顔に無数の傷痕が残るかも知れない…だったら、死んでしまったのがいいのではないか…と。そんな思いが頭に浮かぶと、由香里達の血に覆われている目から、涙が溢れて来た。
涙を流しながら、由香里達の頭の中に、次々と大切な人の顔が浮かんだ。父や母、そして早苗の顔が浮かんで来ると、由香里、真由美、香織、杏理、そして恵梨香と、心の中で早苗の名前を呟いた。
「早苗…」
「さなえ…」
「さなえ…」
「サナエ…」
「サナエ…」
そんな彼女達をよそに、英二は斧を持ちながら近付くと、まずは由香里の前で止まり、「あの世へ行っても仲良くするんだぞ!」と言い、斧を振りかぶった。
そして、「くたばれー!」と罵声と共に、由香里の顔目掛けて斧を降り下ろそうとした瞬間、どこからか女の叫び声が響いた。
「止めてー!」
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