第7話フェイスキラー現る
「誰…?」と由香里は、その場に現れた男に聞いた。
男は全身黒ずくめの格好で、細長いバッグと小さい手提げ鞄を持参していた。
「俺の名はフェイスキラー、お前ら小娘達をこの地に呼び寄せた物だ。」と男は答え、続けて、「そう言えば、お前達小娘は6人居る筈だが、もう1人はどうした?」と聞き返して来た。
「早苗は急用が出来て、遅れて来る事になってるの。」と香織が答え、今度は真由美が、「それより、私達をこの地に呼び寄せたって、どういう事?」と、聞き返した。
「簡単な事だ。俺様がA警察署長の名前を使って、旅館から特急券の手配までして、この地に呼び寄せたんだ。お前達小娘をこの手で葬る為にな。」と、迫って来た。
「私達を葬るって、一体私達が何をしたって言うの!?」と、恵梨香が声を上げた。
「俺の名を明かせばはっきりするだろう。俺の名はフェイスキラーこと水島英二だ!」と男は改めて名乗った。
「水島英二…」と杏理が呟いた後、由香里達は一斉にはっとした。
「どうやら気付いたみたいだな。俺はお前達小娘によって警察にパクられた、水島英一の弟だ!」と叫んだ。そして、「兄、英一の仇を、この手でとらせて貰うぞ!」と宣戦布告して来た。
「お兄さんの仇って、お兄さんは悪い事してきたんだから、捕まって当たり前じゃないの?」と、由香里は突き放したが、水島英一の弟、英二は、「確かに兄はパクられて当然の事したよ。だがな、お前達小娘とは言え、兄1人しか居ないのに、6人で一斉に襲い掛かって、警察に突き出すっていうのが、頭に来るんだよ。」と、身勝手な口調を放つと、「能書きはこれくらいにして、そろそろお前達小娘を、この写真の様にズタズタにしてやる!」と声を上げると、ズボンのポケットから、1枚の紙切れを取り出すと、由香里達に向かって投げた。
由香里達は、その1枚の紙切れを見ると、思わず「キャッ!」と、小さな悲鳴を上げた。
そう、この紙切れは、3カ月前に、水島英一の犯人逮捕に協力した際の、写真付きの新聞記事で、早苗達6人の顔の顔の部分が、無惨に刃物でズタズタに切り裂かれていた。
それを嘲笑うかの様に、英二が細長いバッグのチャックを開けると、その中から小振りな斧が現れた。
その様子を見て由香里達は、改めて恐怖を感じた。そして、このままだと私達は間違いなく殺されるかも知れない、と感じた。かといって、仮に人数を武器に戦うとしても、相手は斧を持っている為、とても勝てる自信は無かった。更に悪い事に、外では比較的静かに過ごそうと思う気持ちもあって、携帯も全員、部屋に置いて来てしまっている。助けを呼ぶ事も出来ない。もはや、残された手段な唯1つ。
由香里達5人は、一斉に斧を持った英二に突進して押し倒すと、「逃げよう!」と叫んで、その場を駆け出した。
しかし英二も、すぐに起き上がると、「この野郎!」と叫びながら、由香里達を追って来た。
英二の気配を感じ、必死にこの場を立ち去ろうとする由香里達。
しかしその時、振り向き様に走っていた由香里が石に躓いてしまい、転んでしまった。
すぐに立ち上がって走りだそうした矢先に、追い付いて来た英二に捕まってしまった。
必死にこの場を逃れ様とする由香里だが、「大人しくしろ!」と叫び声を上げる英二に顔を平手打ちされ、再びその場に倒れた。
そんな由香里を尻目に、英二は手提げ鞄のチャックを開けると、その中には手錠が何個か入っていた。
その手錠を1つ取り出すと、由香里の両手首を頭上でしっかり固定してしまった。
恐怖に怯える由香里と、そのおぞましい様子をただ見続ける事しか出来ない香織達…
英二は、由香里達に押し倒された場所から、斧を取りに行って戻って来ると、まずは由香里を起き上がらさせると、「まずは手始めにこうしてやろうか?」となじると、思いっきり片方の手で由香里の髪を引っ張ると、もう片方の手で斧でバッサリ由香里の長い髪を切ってしまった。
そして、由香里を再び押し倒すと、「次はいよいよ、あの写真の様にしてやろう!」と叫ぶと、思いっきり斧を振りかぶった。
「お願い、止めて!」と、叫びながら必死に訴える由香里…
しかし、由香里の訴えも虚しく、英二は容赦無く斧を、由香里の顔めがけて降り下ろしたのだった。
ちょうどその頃、旅館には、由香里達の身を案じて、急遽、温泉地に旅立った早苗の姿があった。
「随分早く来られたんですね。」と、女将さんの問い掛けに対し、心配させてはいけないと感じた早苗は、「用事が想像以上に早く終わったんで。」と、嘘を言った。
そして、由香里達の居場所を聞くと、「多分、この近くに、小川が流れている広場があるので、そこに行っているのかも知れませんよ。」と答えが返って来たので、すぐ、部屋に荷物を置くと、万一に備えて、携帯を持って、その場に急いだ。
その場に急ぎながら早苗は、由香里達の無事を祈り続けた。
「由香里、真由美、香織、杏理、恵梨香、どうか無事でいて…」
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