第3話1通の招待状

7月のある日、早苗達6人の元に1通の招待状が届いた。

差出人はA警察署長で、指名手配犯水島英一の逮捕に協力した副賞として、丁度、学校が夏休み中の8月に、3泊4日で、早苗達をある温泉地に招待するという内容だった。

その温泉地というのは、N県の山間にあるひなびた温泉地で、周辺は緑に囲まれていて、近くには小川が流れている広場がある等自然豊かで、夏の時期にふさわしい場所であった。

封筒の中には、8月某日の特急券等も同封されていて、早速、早苗達6人は、その日に旅行に行くのを心待ちにしていた。


だが、旅行に行く日を2週間後に控えたある日、早苗だけ当日の朝、一緒に旅行に行けない事になってしまった。

実は7月に、早苗の父方の祖母が亡くなっていて、その四十九日法要の日程が、旅行に出掛ける日と重なってしまったのだ。

それを聞いて由香里達は、早苗の為に、旅行に行く日程をずらす事も考えたのだが、全員の日程を変更すると、予約先の旅館に迷惑をかけると早苗の考えもあって、結局、当日は由香里達5人が予定通り出発し、法要が終わり次第、早苗が合流する事になったのだ。

「早苗と一緒に行けなくて、残念だなぁ。」と、ため息をつく香織。

「しょうがないよ。大事が用事が入っちゃったんだから。」と、慰めの言葉をかける恵梨香。

「ごめんね。出来れば私も一緒に行きたかったんだけど、私もお祖母ちゃんには可愛がって貰ったし、それに他の親戚も人も来るから、どうしても日程をずらして貰えなくて。」と、早苗は平謝りするしかなかった。

その上で、早苗はみんなに、「ねぇ。私が遅れて来る身で何なんだけど、旅行中は、みんなと全く同じ服装してみない。私達が仲良しだという証で。」と提案した。

「それいいね。団結力も感じられて。」と、真由美も乗ってきた。

「じゃあ、どんな服装で出掛ける?」と、杏理も興味津々になってきた。

そこで由香里が、「せっかく3泊4日も旅行するんだから、荷物にならない様、ワンピース着て行こうよ。涼しげな白いワンピース。」と提案した。

「だったら、タンクトップ型の白いミニワンピなんかいいんじゃない?この時期だとより涼しげだし、それに頭からすっぽり被るだけのタイプだと、着るのも楽だし。」と、香織も調子に乗って来た。

更には恵梨香が、「ついでにノーブラでワンピ着て行こうよ。私達タンクやキャミの場合、基本ノーブラでしょ?だからタンク型ワンピもノーブラで着て、より涼しさを感じて、それにブラが無い分、荷物も減るし。」と言い出した。

「じゃあそれで決まりね。旅行の日は、お揃いのノーブラで白いタンクトップ型ミニワンピね。私も、法要が終わり次第、この格好で行くから。」と、早苗が締めくくった。

こうして、旅行に行く準備を着々と進める早苗達だったが、1つ大事な事をするのを忘れていた。それは、旅行に出掛ける事にヤッケになり過ぎて、最後までA警察署長に今回の旅行についての連絡を一切していなかった事である。その事が当日になって、思いもよらぬ結果を生む事になるのである。

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