第21話 禁断のカルマ

「では、タナキア様をよろしく頼む」


 ボーネルドは、残りの四悪柱(エンキーネ、グアッドルフ、ダイタルニア)に言い残し、魔王城の地下室へと降りて行った。


 暴犬中の暴犬、何人にも制御不能のくそ厄介ものである、ケルベエを解き放つためである。

 おぼれるものはわらにもすがるというが、タナキア達は現状おぼれかけてはいるが、すがるものは藁というにはあまりにも、インパクト大な存在だった。

 ケルベエは、長年、魔王城の地下に半ば幽閉、軟禁されている。


 今は扉を塞いで自由を奪っているが、扉を開けてしまえば、ボーネルド自身もすぐに安全な場所に避難しなければならない。


 ダイタルニアやグアッドルフでは逃走速度に不安があり、エンキーネはこれから自らの身を別の危険に晒すことが予定されているために、ボーネルド自身が望んでケルベエ解放の任を請け負ったのであった。


「すぐに合流するのじゃぞ。

 とにかく気を付けて、扉を開けたら逃げるのじゃぞ。

 餌で釣れば時間は稼げよう」


「わかっております」


 ボーネルドに別れを告げ、タナキア達は城を後にする。

 彼女たちが再び城に戻ってこられる可能性は低い。


 エンキーネが火の魔脈と接続し、暴走することなく、力を得て、勇者を倒し、さらにはケルベエを力づくで従わせるだけの力を身に着けなければならないのだ。


 実際問題として、過去のどの時点をとってもケルベエは全盛期のタナキア以外には御することができなかった。

 仮に、エンキーネがアズマ達を倒せたとしても。

 エンキーネが果たしてケルベエを再幽閉できるかどうかは疑問である。


 そうなれば魔王城はケルベエのものとなり、かなりの期間、帰還することが叶わぬことになってしまうのだ。


 それでも、ケルベエにすがらなければならない。

 そうしなければ、第七騎士団に魔王城を占拠されるというさらに深刻な事態が訪れるのだから。


「こっちから大回りすれば、騎士団には出会わへんいうことやったな」


 ダイタルニアがボーネルドが偵察で得た情報を元に進行ルートを決定する。

 目的地は、皮肉にも、アズマ達が先日訪れたシンプローブの森である。


 かの地は火の大精霊が守護しているという特別、神聖な場所であるだけあり、魔脈の流れのいしずえとなっている。

 可能であればその場まで赴き、不可能であればできるだけ近くまで行ってエンキーネに儀式を行わせるという予定であるのであった。


 タナキアたちが、城を出て進み始めた頃、ボーネルドは首尾よくケルベエを解き放ち、そして、一目散に逃げ出すことに成功した。




 ◆◇ ◆◇ ◆◇




「いよいよ城まで辿り着きましたぜ、親分」


「ああ、思っていたよりも楽勝だったな」


 フェスバルは騎士団団長の身分であるが、部下に親分呼ばわりされても気にもとめない。そういう男である。

 もっとも、部下達は好き勝手に呼んでいるので兄貴だったり、親分だったり、年上のものはフェスバルだったり、親しみを込めてフェスちゃんだったり、呼び方は定まっていない。

 そういう部隊が第七騎士団なのである。


「とはいえここまで静かだと逆に不気味ですな」


「待て、中に何かいますぜい」


「魔王か? ならば手っ取り早い。探す手間が省けたな。

 扉を開けるぞ。

 全員開け次第突入だ!」


「「「おうよ!」」」


 数十名からなる第七騎士団の討伐隊が、扉の外側で待機する。

 今にも城内へ押し寄せんと皆、殺気立っている。


「行くぞ!」


 フェスバルが扉を開け放つ。

 そして……、一瞬言葉を失う。体の動きがままならなくなる。

 だが、それもつかの間。

 さすがは愚連隊の第七とはいえ、騎士団の団長を任されている男である。

 正気を取り戻し、現状理解に努める。


「あれは……」


「げぇぇ!」


「なんだ?」


 フェスバルの……、そしてその他の団員の目に飛び込んできたのは三頭の黒い獣。


「け、ケルベロス……」


 ケルベロスのケルベエは、開け放たれた扉に気付き……。


 その奥に居る騎士団の面々に視線を投げ、威嚇の声を上げた。

 喉の奥から、絞り出したような低いうなり声。


 そして……。

 そっと閉じられる扉を見て外の様子に興味を失くした。


「な、なんで閉めたんでやんすか!」


「馬鹿野郎! 見ただろ! わかりきったことを聞くな!」


 言いながらもフェスバルは走っている。

 釣られてというか、当然の反応というか他の団員たちもフェスバルを追って、あるいはフェスバルよりも先んじて走っている。


「見ましたぜ。あいつはヤバイ」


「そうだろ。ケルベロスだ。

 あんなやつ相手に命がいくらあっても足りるかよ」


「にしても、即座に逃げ出すことも無かったんじゃないっすか?

 すぐそこに魔王も居たなら、半分ぐらいがおとりになって、ひきつけているうちに魔王を倒すとかって作戦も……」


 部下の指摘に対してフェスバルは、


「下手に絡むとそれこそ命が危ない。

 こんなことで部下を危険に晒すなんてな。

 もともと俺達の任務は……」


「偵察ですね」


「そういうことだ」


 魔王が弱ければ倒してしまって一旗揚げる。

 今の状況であれば魔王城に到達できるぐらいの力量は備えている。

 

 が、しかし。

 さすがにケルベロスクラスの魔物に対しては対抗できないことをわきまえているフェスバル、そして第七騎士団の面々は、凶暴な魔物を野に放つというきっかけを作っただけであっさりと退散していった。


 ケルベエは、今のところ腹も満たされ――ボーネルドが解放前に十分な量の食事を置いて行ったのである――、自身の縄張りだと認識している魔王城でくつろいでいる。


 空腹になれば、近辺の魔物を狩って食事にありつこうと近場をうろつくことはあるだろう。

 気まぐれに、遠出もするかもしれない。

 街や人を襲うようになるかもしれない。

 だが、今後のケルベエの、気ままな魔界犬の動向を知る者は誰も居なかった。




 ◆◇ ◆◇ ◆◇




 アズマ達は、国境を越え、魔王城を目指していた。


 魔王領ともなれば、魔物のレベルはぐんとあがり、ほとんど一回の魔法で魔力切れを起こすミリアの魔法や、未だレベルの低いタツロウの剣技では対応するのが難しくなっていた。


激烈なる炎レイジ・フレイム!!」


 アズマの目の前で炎の渦ができ、それが一塊となって魔物に襲い掛かる。

 それが地獄の茶碗ドンブリーの群れ(地獄の茶碗群ドンブリーズ)を焼き尽くした。


 ちなみにではるが、ドンブリーは、魔族の血液を混ぜた地獄の土をこねて地獄の業火で焼かれることで創り出される茶碗型のモンスターであるが、誰がなんのために土をこねて焼いているのか、どうして茶碗型にこだわっているのか等ははっきりしてない。とにかく凶暴な茶碗であった。


「ふう、片付いたようじゃな……」


『お疲れさま~。魔力は大丈夫……みたいだね』


『ああ、体力と違って魔力は老化で低下せんからな』


 ほーちゃんに返してから、アズマはそっと腰に手を当てる。


「にしても、精神的にはちときついわい……」


 現状のアズマの力は、冒険者にしてかなりの上位レベル。騎士団の中に入ったとしても上位につけるだけの戦力ではある。

 というより、魔法使いとして見てしまえば、火の大精霊を御しているのであるから、下手をするとミリアに次ぐほどの実力である。


 が、第七騎士団が数十人がかりで――その全ての戦力を傾けるほどの戦いはなかったとはいえ――踏破した魔王領なのだ。


 いざという時の切り札として魔力も温存しておくことが必要なミリアや、もはやこれっぽっちも役に立たないタツロウも抜きで、一人で戦い続けるのは少々酷でもあった。


「だから、ヒノジローを俺に譲れって言っただろう。

 結局精霊なんてこれっぽっちも出会わねーし」


 何もできない苛立ちからか。タツロウはアズマに迫る。


「こればっかりはね。運だからしょうがないわよ」


 と宥めにかかるミリアに続いてヒノジローが、


「何度か近くまでは来た精霊はいたんだぜ。

 だけど、人間の気配で逃げ出すんだぜ。

 精霊と見れば片っ端から捕まえようとする人間が悪いんだぜ」


「そういう奴に言うことを聞かせるのが大精霊であるお前の役割じゃねーのかよ」


「無理強いは良くないんだぜ!

 それに精霊は人間の性格の良しあしをちゃんとわかってるんだぜ。

 心優しい人間にはあっちから寄ってくるんだぜ。

 お前の心が汚い証拠なんだぜ。

 何の役にも立たないし、いなかった方がマシなんだぜ!」


 ヒノジローがタツロウに食って掛かる。


「うっせえ、チビ猫。

 お前こそ役に立ってねーだろーが!」


「アズマの魔法は僕の力なんだぜ!」


「まあまあ、二人とも。

 落ち着くのじゃ。

 このパーティのメンバーにはちゃんとそれぞれ役割がある。

 ヒノジローは儂の魔法の糧となっておるし、ミリアは……、いざという時には攻撃でも守護でも魔法を使えるだけの魔力を残してもらっておる。

 そうじゃな?」


 アズマがミリアに向き直る。


「えっ? ああ、うん。一回ぐらいなら使えるわよ。

 ちょっと、魔王領に入って魔素が安定しないから、普段の消費魔力がまた上がっちゃってるけど……。

 うん、大丈夫、一回くらいなら。魔法使えるから」


 ミリアの言いようにアズマは若干の不安を覚えるが、気を取り直して話を続ける。


「そしてタツロウは、儂に何かがあった時に聖剣を引き継ぐという役目があるからのう。

 ヒノジロー、何も役立たずを連れてきているわけではないのじゃ」


 アズマは口ではそう言うが……。


 実際のところ……。

 自分と契約して魔法を使えるようにしてくれているヒノジローはともかくとして。

 小じわを気にして魔力を垂れ流しているミリアも。

 いざという時は……という思いがあるものの、現状ヒノジローといさかいばかり起こし、ほーちゃんに呆れられているタツロウも。――それを見てほーちゃんはかたくなにアズマからタツロウへの聖剣譲渡を拒んでいる――。


 わりと足手まといなのであった。

 アズマ一人であれば、もっと効率的に魔法を使えるのであるが、二人の身を護りながらというのでは気苦労も多い。


 もっとも、ミリアはさすがに危機ともなれば魔法を使って切り抜けてくれるだろうし、万一アズマの身に何かが起こればほーちゃんだって渋々タツロウへの引き継がれてくれるだろう。


 先ほどヒノジローをなだめるために吐いた台詞は、二人はお荷物ではあるが、まったく意味がないというわけではないということを自分に言い聞かせるためのものでもあった。


「まったく。酷使されるこっちの身にもなってくれなんだぜ」


 ヒノジローがそれでも収まりきらないのか愚痴をこぼす。


「大丈夫であるか?」


「ああ、なんとかなってはいるんだぜ。

 だけどこうも続けざまに魔力を使われると、魔脈の制御が不安定になるんだぜ」


「ふむ、遠隔で制御しているというあれじゃな」


「それはいいことを聞いたわ!」


 アズマとヒノジローの会話をぶったぎって、颯爽さっそうと現れたのは……。


「エンキーネ!」


「お久しぶりね、アズマと新勇者ね!」


 先刻より物陰でそっとアズマ達の様子をうかがっていたエンキーネであった。


「タツロウだ! まだ勇者じゃねーけどな!」


「あいつが四悪柱のエンキーネなのか?」


 ヒノジローがアズマに尋ねる。


「そうじゃ。あやつがそうじゃ。

 エンキーネ! 何用じゃ! わざわざ倒されに来たのか?

 この間の件で懲りたと思っておったがな」


「タナキアちゃんが、こっちになにか怪しい気配がするからって偵察に来たのよ!」


「飛んで火にるなんとやらとはこのことじゃの!

 喰らえ! 炎の竜巻ファイアー・トルネード!!」


「おっと、あたしに火の魔法は効かないわよ!

 これでも四悪柱の一人、妖艶の業火の異名を持つエンキーネ様を舐めるんじゃないわよ」


 エンキーネは右腕を上げ炎の竜巻を軽く打ち払う……。

 炎は確かにエンキーネに弾かれたのだが……。


「熱っちぃ!」


「効いてんじゃねーかよ!」


「馬鹿言ってんじゃないわよ!

 効かないなんて言ってないわよ!

 致命傷には程遠いって言ってんの!」


 タツロウに突っ込まれてエンキーネはぶんぶんと手を振って即座に弁明する。


「じゃが、それは確かじゃろうな。

 あやつの属性も火であれば、儂の火魔法では相性が悪い」


「なら、俺が剣で叩斬ってやろうか?

 あいつ弱いんだろ?」


「おっと、その手は喰わないわよ!」


 エンキーネは颯爽と宙へと舞い上がる。


「今度はこっちからお見舞いしてあげるわ!

 邪悪なるイヴィル……フレイム!」


 エンキーネから生じた炎の塊がアズマ達を襲う。


「おっと! そうはさせないぜ!」


 その炎塊に向って行ったのはヒノジロー。


 炎にそのまま体をぶつけると、炎は急速にしぼんで消えてしまった。


「あいつあのままの姿では戦えないってことじゃなかったのか?」


「ふん、大精霊を舐めるなだぜ! 盾になることぐらいはできるんだぜ!

 こっちは熱がりの露出狂と違ってどんな炎だって完全無効化できるんだぜ」


 タツロウはアズマに問うたのであるが答えたのはヒノジロー本人であった。


「露出狂ってなによ! ネコのくせに!

 って、大精霊ってもっと大きなライオンみたいな奴じゃなかった!?」


「父ちゃん……ヒノの息子のヒノジローなんだぜ!」


「なるほど……、タナキアちゃんが言ってた魔脈の乱れってそういうことなのね。

 聖剣だけが弱体化しているのかと思ったら、火の大精霊まで弱体化しているなんて。

 これって、まさか格好のチャンスじゃないの!」


「弱体化しているのはお主たちもじゃろうが!

 ミリア、あやつを魔法で仕留めてやってくれ!」


「いいの? 使っちゃって。多分一発で打ち止めだわよ?」


「大丈夫じゃ。

 あ奴さえおらなんだら後は儂の火魔法でなんとかなる。

 厄介なのは同属性であるあいつだけじゃ」


『だけど、いまエンキーネは邪悪なる炎イヴィル・フレイム使ったよね?

 邪悪なる火イヴィル・ファイアじゃなくって』


『そういえばそうじゃのう』


『ひょっとして前のエンキーネとは違うかも』


 ほーちゃんが気付いたように、エンキーネには多少魔力が戻っている。

 さすがに邪悪なる炎イヴィル・フレイムを連発できるほどではないが。

 そしてそれは実は本人は気付いていないのであった。

 いつもの習慣で使い慣れた魔法を放ち、前と違って発動したのであるがあまりにも自然な流れ過ぎて、己に何が起こっているのかを気付いていなかったのである。


『どうすんの? 撃つの? 撃たないの』


『構わん、やってくれ』


「じゃあ遠慮なく……」


「待つのじゃ!」


 とそこへ横槍が入る。


「久しぶりじゃのう、アズマよ。エンキーネから聞いておったが変わり果てた姿になりよって。

 そして、そっちは変わりなくじゃな。ミリア・エル・レイアット」


「誰よ! もしかして……」


「今はこんな姿になっておるが、魔王である。タナキアじゃ!

 数十年前にお主らにうち滅ぼされたの!」


「あんなちっこい幼女が魔王……?」


 タツロウが困惑する。無理もない。邪悪の粋を極めた存在である魔王が、ちっこい幼女であり威厳のかけらもないのだ。


「儂も老いたが……、お主もなかなかの変わりようじゃな」


 アズマが半ば同情したようにタナキアを見つめる。


「うるさいわい! 復活を早めた影響なのじゃ!

 じゃが、その甲斐あって、さすがに聖剣の力は万全ではないようじゃの」


「それはお主だって同じことじゃろう!?

 ミリア、まとめて葬ってやれ!」


「わかったわ!」


 ミリアが魔法の詠唱に取りかかかる。


 が、。


「俺、タナキア、護る!」


「ちょっと! なんなの!」


 突然地中から生えた土緑色の太い腕にミリアの足が捕えられ、ミリアはバランスを崩す。

 腕はそのまま盛り上がり、土色の巨人が現れた。


「グアッドルフか!」


「タナキア、俺褒める!」


「ようやった。グアッドルフよ。

 そのままその女を拘束しておくのじゃ」


 グアッドルフはそのままミリアに覆いかぶさるようにして動きを封じてしまった。


「ちょっと、いや! 犯される!」


「犯すのか!」


 ミリアが悲鳴を上げ、タツロウが興味を持ってそちらへと目を向けた。


「そんなことはせんわい! じゃが、下手な動きをすれば……、グアッドルフとて紳士ではないからのう。

 何をするかはわからんぞえ」


「俺、紳士、ない、犯す……のか?」


 グアッドルフが首を捻る。


「とにかく、これで極光の魔法は封じたのじゃ!

 如何に我らが弱体化しているとはいえ、小娘一人の自由を奪えぬほどの四悪柱ではないからのう!」


「ならば!

 炎の壁フレイム・ウォール!!」


「だから、火魔法は効かないんだって!」


 アズマが放った炎の壁にエンキーネが突っ込む。


「熱っちぃ!」


「効いてるじゃねーか!」


「消化や!」


「タナキア様!」


 エンキーネによって勢いのがれた炎の壁をダイタルニアが水魔法でさらに減少させ、ボーネルドが、タナキアを庇いながらも風の魔法を放って、その方向を変える。


 四悪柱(グアッドルフを除く)の見事な連携プレイで、タナキアに炎が届くことを阻まれた。


「ダイタルニアに、ボーネルドか。

 四悪柱揃い踏みというわけじゃな」


「役者がそろったってことか」


「とにかく見てわかったじゃろう。

 火魔法では我らを相手することは叶わん」


「けっこうギリギリに見えたがな」


「そなたが、新たな勇者であるか」


「ああ、タツロウじゃ」


「もっとも聖剣の所有権は譲ってもらってないけどな」


「ちょっと、この土マッチョなんとかしてよ!」


「ああ、そうじゃった。

 のこのこ出てきたのはいいが、お主ら、聖剣はおろか、タツロウにすら敵わん力しかないのではないか?

 儂の火魔法が通用せんぐらいで、儂らを倒せるつもりか?」


「ふっふっふ。

 何の策も用意せずに来たと思うか?

 エンキーネ!」


「わかったわ、タナキアちゃん!

 でも、お風呂は忘れないでねっ!」


「わかっておる」


 上空に居るエンキーネが呪文を唱え始める。


「攻撃魔法か!?」


「いや、違うようじゃ」


『ほーちゃん!? わかるか!?』


『えっと……、なんとなく……。

 いややっぱり、思い出せそうで思い出せない……。

 なんか聞いたことある呪文みたいんだけど……』


「うが……、ううぅぅ……」


 突然ヒノジローが頭を抱えてうずくまる。


「どうした?」


「どうしたのじゃ!?」


『そうだ! 思い出した!

 あれは……魔脈融合……』


「魔脈融合……?」


「なんだそれは?」


 疑問を浮かべるアズマ、タツロウの姿を見て、タナキアが勝ち誇ったような笑みを浮かべた。


 

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