第24話 迷子の迷子の妖精ちゃん
「俺は、魔王アスタ」
ひとまず森を歩きながら、自己紹介をすることに。
「で、こっちのピンク色のおっきいのがネネネで、
俺が一通り紹介し終えると、手のひらで行儀よく正座をしていた妖精はさっと立ち上がる。
「私のことはティアとお呼びください、よろしくお願いします」
これまた行儀よくスカートの端をつまみ礼をする妖精ティア。
「おい年増、わかったかあれが妖精じゃ、お前みたいに
インイン、ランランって。
ネネネは心の中にパンダでも飼ってるのか?
まあパンダも猛獣らしいから、あながち間違いではないのかもしれないが。
「黙らっしゃい、ネネネはチンチンでもマンマ――」
「ケンカはよくないです、ぅわ~ん」
「あぁあぁもう、こら二人とも喧嘩するなよ」
それにしてもよく泣く子だな……しかも体にしてはやたらと声が大きい。
「ヒク、そ、それより魔王ってあのおバカさんのですか?」
「へ?」
何だ、どうして俺はこんな礼儀正しい子にバカ呼ばわりされているんだ……?
「お母さんが言ってました、魔王さんはバカだって」
ああ、なるほど。お母さん、娘にそんなこと教えるなよ。
いやぁでも、やっぱりこの魔王はバカだっただな、こんな風に陰口を叩かれるほどに。
「それよりティアとやら」
「はい?」
ルージュはグイッと俺の手を引っ張り、妖精を自分の目線に持っていく。
「この森はおぬしの等の庭みたいなもんじゃろ? どうしてこんな所で迷子になっとるんじゃ?」
「だって、だって、ティア、うわ~ぁぁぁぁん」
「ああもう、悪かった悪かった、もう聞かんわい」
「ご、ごめんなさい、うぇ~ん」
「おい、アスタ殺虫剤持っとらんか?」
「やめろ!」
さっきルージュが仲間の下に送ってやれば、エルフの居場所を教えてもらえるって言ったとき、別にこの子に聞けばいいんじゃないのかと疑問に思ったりしたけど……。
なるほど、自分の家の庭で迷子になってる人に、怖くて道なんて聞けやしない。
そうして妖精ティアに導かれ、森をさ迷うこと数時間。
俺達は完全に迷っていた。
一体どれだけ迷えば気が済むのか……。
森のことを全然知らない俺達が適当に歩くより、迷子でも少しは土地勘があるティアに案内を頼んだ方が幾分かましだと思ったのだけど、だめだこの子。
「あっちです」
はぁはぁ。
「あっちです!」
はぁはぁはぁはぁ。
「あっちです!!」
はぁはぁはぁはぁはぁはぁ。
「あっちです~」
「は~いちゃ~ん、ばぶばぶ」
「え、魔王さんどうしちゃったんですか? うわぁ~ん」
「ごめんごめん冗談だよ」
これじゃあいつまでたってもこの子を仲間の下へ帰せやしない。
「大丈夫だと言ったのはどこのババアですの? おばあちゃんの知恵袋も使い物になりませんわね」
「黙れ年増、ワシじゃってこんなことになるとは思っとらんかったわ」
「ヒ、ヒクッ、うぁ~おかぁ~さ~ん」
「はいはいどうしたんですの? お母さんはここですのよ」
返事をしたのはお母さんじゃない、ネネネだ。
「ネネネ、無理やり子供をつくろうとするな」
「まぁまおーさま、この子はネネネが産みましたのよ?」
確かにさっきそんなことも言ってたけど。
「
「何ですって!?
「うわ~ぁぁぁぁん、私のお母さんはこんなのじゃありませ~ん」
「こんなの……!?」
「ふんっほれみろ」
ああ、まじで収集がつかない……。
とにかくこの泣くのをどうにかしないとなぁ。
「ティ、ティア、君のお母さんはどんな人なんだい?」
「お、お母さんはきれいでっ」
「うん」
「やさしくてっ」
「うんうん」
「泉の中でモノを拾っています」
「え?」
「口癖は~ですか? ~ですか? です」
おいそれってあの斧の奴じゃないのか……。
『あなたが落としたのは金の斧ですか? 銀の斧ですか?』ってあれ。
でもあれって妖精じゃなくて女神様じゃなかったっけ?
まあでもここ異世界だしな、うん。
「おいアスタ」
「ん?」
なにやらそわそわと落ち着きのない様子のルージュ。
「そのお母さんとやら、妖精の女王じゃ」
え、まじで……!?
じゃあその子供ということは、ティアは妖精のお姫様?
どうやら俺達は、もののけのお姫様じゃなくて、妖精のお姫様に出会ったようだった。
「とにかくお母さんは湖にいるんだね?」
「はい」
まったく、どうしてそれを先に言っておいてくれないかな……。
それなら、この件は解決だ。
さっきからずっと視界に泉が入ってるんだから!!
アシ○カも言ってたよ『道案内しているのか、迷い込ませる気なのか』って。
この子は確実に後者だ……。
大体妖精って妖しいって書くじてんで、既にいいものか悪いものか分からないし。
せめて漢字を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます