第27話 正体不明
何か分かるかもしれない、そんな期待を持って村に来てはみたものの……。
「何か分かったか? ルージュ」
「分からんのう」
と、腕を組みながら、ルージュは眉根を寄せた。
「ブラは何か分からないか?」
「私を下着みたいに呼ばないで」
何、この世界はブラジャーが通じるのか!?
「私も色々と病気については教わったけど、分からないわ」
一応ネネネにも視線を向けてみたが、案の定、彼女の首は横に振られた。
俺には聞くまでもないことだろう、異世界どころかもといた世界でだって病気の判断なんてできない。
ゲイルの言うとおり町の人々は端から端まで、正体不明の病気で寝込んでいた。
病状は皆同じ。
ごくごく軽度の発熱と、何かにうなされるようなうめき声を上げている。
ただ全員、苦しいと言うよりはどこか気持ちよさげなのだ。
とにかくどれだけ見ても、治し方はおろか、病名さえも分からない。
と言うことは、これは新種の病気なのだろうかか。
それともただ分からないだけ?
それとも理由なんてない?
この世界の医学レベルが分からないだけに、見当が付かない。
「アスタとラヴリンの衝突で、色々影響が出とるんかもしれんのう。ワシが目覚めたみたいに」
なるほど、一応もっともらしい理由はあるわけだ。
「どうすればいいんだ……」
「病気を納める方法はないではないぞ、アスタよ」
「おいおい誰が収納しろって言った」
「こんな病原体さっさと片付けてしまった方がよいじゃろ? ワシがチューッと血を吸ってそれで終わりじゃ」
そのチューッと突き出された唇に、俺がチューッとしたかったのはここだけの秘密だ。
「ダメだ。治す方法を教えてくれ」
「方法はワシも知らん、じゃがそれを知ってる奴なら知っている。それは……」
「それは……?」
ルージュは色気たっぷりの笑みで、鋭い牙を舌でなぞる。
「エルフじゃ」
またか。
「あ奴らなら、いい感じにいい感じな薬草を調合してくれるじゃろう」
「また探すのかよ……医者とかいないの?」
「石屋?」
「いや石材には困ってない」
「遺書?」
「もしかして墓石を購入しようと!?」
「一緒?」
「死ぬときは一緒にってか?」
「一生?」
「ああ、一生一緒にいるよ」
「一所?」
「うん、君と子供のために一所懸命働くよ」
「一子?」
「いや、二人は欲しい」
「あぁはいはい、医者じゃな医者、やっと分かったわい」
「何だよそれ、もうええわ」
「「どうも、ありがとうございました」」
伝説のコンビ久しぶりの営業だった……。
「医者など信じられんわい、エルフの方が確実じゃ」
「いや、でもそのエルフを見つけられなきゃ意味ないじゃん」
九十度茸のときみたいになったらどうするんだよ。
あの時は命に別状のない毒だったからまだしも、今回はどうなるか。
「大丈夫じゃ妖精に聞けばよい」
少しうとうとしていたネネネだったが、ルージュのその言葉に飛び上がり、なにやら落ち着かない様子。
「またネネネに頼るのか?」
……それこそあのときの二の舞になるぞ。
「違うわい、あんな年増の悪魔にはもう頼らん」
そう言われネネネは怒ることを忘れて胸をそっとなでおろした。
「あの青い髪の妖精のことじゃよ」
ああ、そういえば出会ったな、髪の毛の青い妖精ティア。
元気にしてるだろうか。
「でも、妖精の方が見つけにくいとか言ってなかったっけ?」
「大丈夫じゃ、妖精は一度見てしまえば見つけるに難くない」
ほお、そうなんだ。
「アンタ達いつ妖精なんかに出会ったのよ」
「ああ、ラヴが寝込んでるときにちょっとね」
「そう」
ラヴはあのときのことを思い出したくないらしい……。
「今回は性の者である、ラヴリンもおるしの」
「誰がラヴリンよ! 誰が性の者よ! 聖の者よ!」
「あんなにアンアンと大きな声で喘いどったくせに」
「ちょ、ちょっとそれは言わない約束でしょ!?」
「じゃあ
「盛りついてないわよ! 仕方ないじゃないあれは毒のせいなんだから」
ラヴの顔は怒ってるせいか、恥ずかしいせいか、どんどん赤くなっていく。
「まあまあ二人とも、そこら辺にして早く森に行こう」
暗くなられちゃどうしようもなくなるからな。
「そうじゃな、ん」
「ん?」
ルージュはなにやら俺を見上げ両手を差し出している。
「疲れた、抱っこ」
「うっ……」
あはははは~かぁわいぃなぁ。
このまま抱きしめてギューッとしてすりすりして、一生離さずにいたいところだけど、そんなことをすれば俺がロリコンの変態みたいじゃないか。
だから……。
「や、やれやれしょうがないな」
っとでも言っておこう!
「まおーさま、ネネネも抱いて欲しいですの」
「お前が言うと違う意味にしか聞こえないよ!」
「ま、魔王、アタシも疲れたから――」
「しないよ!?」
と、いうことで、俺達は今度こそエルフに出会うべく、ひとまず妖精に出会いに森へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます