第26話 装備:アスタの剣
「おはようですのまおーさま」
そう言ってベッドから起き上がるネネネ。
「ん、おはよう」
「うぅ、おはようじゃアスタ」
そう言ってベッドの影からニュッと這い出すルージュ。
「おはよう」
今日も今日とて、いつもどおりの朝だ。
窓からは朝日が差し込み。
草木は風に揺れ。
空では
「っておい! お前たちはどうして当たり前のように俺の部屋から起床するんだ!」
「まおーさま、昨晩は激しゅうございました」
「誤解を招くような発言はよせ」
激しかったのはお前の寝言だ。
「五回も招いていただいて」
「一回たりともお前を招いた記憶はない!」
まったく、油断も隙もあったもんじゃない。
「ん、アスタ……リボンくくって」
目をコシコシと擦りながら黒いリボンを俺に手渡すルージュ。
「はいはい、その前に髪
「うい」
俺がそう言うとコクコクと頷く幼女。
「じゃないんだよ! 大体気になってたんだけど、ルージュって吸血鬼だろ?
普通に夜寝て朝起きるじゃねえか、日に当たって大丈夫なのかよ。
「Night WalkerというよりはKnight Walkerじゃの」
「どこの騎士だよ」
「あっちの岸じゃ」
大体何だよKnight Walkerって、ただの歩兵か?
「まおーさま、昨晩何やらキシキシうるさかったと、城の者から苦情が来てますの」
「来てねえよ」
大体城の者いないし。
「アッ、クッ、クルゥ~アァン」
「黙れ!」
朝からエロいんだよエロ過ぎるんだよ、エロ淫だよマジで。
「まぁまおーさま、そんなこと言って、まおーさまだって洞窟を探検する気満々ではないですの」
「何のことだ!?」
「本当じゃアスタ、そんなところに剣を装備してどこに行く気じゃ?」
「ケン?」
「ケンと言うかチンですの」
「――っ!?」
下半身を見ると、俺はいつの間にか男の剣を装備していた。
「なっ、朝だから仕方ないだろ!」
「仕方がわからないんですの?」
「もういいよ!」
「どうもあり――」
「やらないよ?」
「おはようラヴ」
朝食をとりに、ネネネとルージュと一緒に食事の間へ行くと、既にラヴが朝食を作り終えテーブルに並べ始めていた。
おいおいマジかよ、なんて出来た奴なんだ。
ふと気を抜くと『あれ? こいつ俺の妻じゃね?』なんて勘違いをしかねないぞ。
「あら、おはよう」
あれ、俺こいつと結婚してたっけ?
あぁそうだそうだ、そうだった。
あまりにも夢のようなことだったから、いまいち実感がわきにくいけど、こいつは俺の妻だ。
……って、危ない危ない。思わず気を抜いてしまった。
なんてったって金髪碧眼貧乳だがそこがいい美女が、起きたら俺のために朝食を作ってるんだ。誰だって勘違いしてしまうよ、うん。
「おはようですのお母様」
「おはようじゃママ」
「私はアンタ達の母親になった覚えはないわよ!」
「おい年増姉、やはりママのご飯はうまいのぉ」
「そうですわねババア妹。お母様のご飯は世界一ですわ。ねえまおーさま」
「ん? ああそうだな、確かにかなりうまい」
いや、マジで。
「あ、アンタ達が毎日毎日私に作らせるから、嫌でも上達するのよ!」
「ちょっとお待ちなさい! 愛ちゃんが母なら父はまおーさまですの!?」
どうしてそうなるんだ。
「つまり愛ちゃんとまおーさまが夫婦!?」
「ど、どうしてそうなるのよ!」
そうだ、言ってやれラヴ。
「こんな変態男と私が夫婦なんかになるわけないでしょ! 敵よ敵!」
と、ラヴは言ったが、ネネネはそんな言葉などまったく聞く気がない。
「それだけは許しませんの! だってまおーさまの妻はネネネですもの!」
「それこそどうしてそうなるんだ!」
「まあまおーさま、そんなこと言って、昨晩もあつ~い夜を過ごしたではありませんの」
「だから誤解を生むような発言をするな!」
全く熱い夜なんかじゃなかったよ、むしろ寒かったよ。
ネネネが俺の布団全部取っちゃうから!
「豪快でしたわぁ~ん」
「あ、アンタってやっぱり、最低最悪の変態ねっ!」
ラヴは持っていたフォークを俺に振りかぶる。
「ちょ、ちょっと落ち着けって、誤解だよ」
俺は慌てて両手広げ前に突き出し、待て待てとジェスチャーを送る。
「十回じゃない!」
「違う! これこそ誤解だ!」
「五十回!?」
「曲解だ~!!」
まあ朝からなんだかんだとありつつ、やっと朝ごはんを食べ始めたのだけど。
ようやくありつけたと思ったら、またややこしいのが城にやって来た。
「HEY魔王様YOU! COME ON!」
そう言って突然部屋に入ってきた男。
「誰じゃこいつ」
新キャラじゃない。
毎度お馴染みのアイツだ。
「朝早くからどうしたんだよゲイル」
四天王素早さ担当ゲイル・サンダークラップ(既婚)。
「村が大変なんDA・YO!」
今日はラップ調で登場。
「お前の頭も大変そうだな」
「俺は大丈BOO BO BOO!」
どこら辺がが大丈夫なんだろうか。
「で、村がどうしたって?」
「村に病気がMA・N・E・N! 俺の嫁もKA・N・SE・N!」
「病気? だからお前もそんなんなのか」
「俺は元気さYO! CHECK IT OUT! YO!」
確かに元気なのは認めるけどね、どう考えてもこいつが一番病気だろ。
「それで、俺達にどうしろと?」
「助けて欲しいのHERE WE GO!」
これが人に助けを求める奴の態度かよ……。
まあ、ゲイルの言うことをまとめると、村に病気が
「病気ぐらい村で対処できないのか?」
村の人たちの方がそういうことに詳しそうだけど。
「正体不明のDISEASE! 村人全員SICK IN BED!」
ふむ、村人全員に被害が及んでるのか……確かにそれは助けないといけないな。
「でもゲイルの言うように正体不明の病気なら、俺達が行ってもどうしようもなくないか?」
俺達医者でもなんでもない。
ただの魔王と勇者と夢魔と吸血鬼だ。
「まあいいじゃない、ひとまず行ってみましょうよ」
青い瞳でじっと俺を見るラヴ。
うーん、まあ行ってみれば何か分かるかもしれないしな。
ルージュが何か知ってるかもしれないし、ラヴだって一応勇者だし。
「……そうだな、とりあえずそうしよう」
何より最近少しずつ回復しつつある村人との関係を、更に進展させるいい機会だ。
「さすが勇者様マジRESPECT!」
「アスタ、そろそろこやつ殺ってしもうてもええかの?」
「ああ、ぜひよろしく頼むよ」
「GYAAAAAAAA~!!」
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