朝
体をゆすられ俺は目を覚ました。
体を起こしベッド上に散乱した資料や本をぼーっと眺める。
車を見送ってから自室に戻り親父が残して行った資料を読んで時間を潰すつもりだったがそのまま寝てしまったようだ。
体をゆすった奴が声をかけてくる。
「おはようございます。マスター」
その声に俺は答える。
「朝食用意してくれ。あ、その前に今日の二人の予定」
「本日の予定は、マスターは学校です。マスターに訪問者はございません。学校の後はご自由に過ごしていただけます。私は午前中にお買いものを済ませ。マスターが帰宅するまで選択や掃除を行う予定です。マスターが帰宅後、マスターに奉仕いたします。御庭の手入れは行いますか?」
「いや、庭は手を付けなくていいよ」
「かしこまりました。では、朝食の準備に移ります」
廊下に出ようとするメイドに俺は言う。
「朝食作る前に服を着ろ」
「断ります。着せてくださるなら考えますがいかがなさいますか?」
「明日って粗大ゴミの日だっけ?」
「何か出すゴミがおありですか? あるのでしたら、メモに書いておいてください。私は服を着てまいります」
そう言って足早に部屋を出て行った。
俺はベッドから下りて洗面所に向かい顔を洗ってからリビングへ向かった。
ドアを開けるとそこは西洋被れしていないマンションの一室のような部屋。
入口から右手にソファーと小さなガラステーブル。その奥に42インチの液晶テレビ。入口から左手には4人掛けのテーブルと椅子二つその奥にカウンターテーブルとキッチンがある。
キッチンから鼻歌が聞こえるが、しゃがんで何か取り出しているのか姿は見えなかった。
テレビをつけソファーに腰掛ける。
ゆっくりと沈むソファーに身を任せ、そのまま横に寝転がった。
連日報道されている政権交代についてのニュースを話半分に聞いている。政権が変わりロボット反対運動が強まるのは当たり前の事だ。そんなことをニュースキャスターが語っている。十年前の事件から燻っていた思いがあるのだろう。ロボットの危険性について政権の数人が特別ゲストとして招かれていて熱弁を始めた。
十年前。ロボット反対派政権から賛成派政権に移った直後。二か月経たずに起きたロボット暴走事件。
ロボットが人間に危害をくわえた事件。
世界最高の知能を持ったAI。レッドアップル。通称RAが人間管理する事により人間の永久生存を可能とするために起きた事件。
ロボットの命令を無視した人間を見せしめとしてロボットが惨殺した。
始めに死んだのは死刑囚だったが、そのことはあまり報道されていない。
その後もさまざまな所で人が死んだ。
RA事件のAIを開発したのが俺の親父らしい。破壊したのも親父らしいが詳しい事を俺は知らない。
事件時全てのロボットが暴走した訳ではないがロボットに助けられた人間は少ない。
俺はその数少ない人間の一人ではあるが、体のいくつかを失った。
事件後RAを開発した親父は世間から姿を消すため、俺の母さんと姉、妹を連れて家を去った。
俺が残った理由はいくつかあるらしいが今のところ説明されているのは、叔父さんの元に入院していた事と、現在住んでいる家の地下室のまたその奥にある秘密の部屋を警察の手が入らないようにする為だと聞いている。
実際研究室の奥に部屋があるのかは確かめられなかった。扉すら見つかっていない.
ちなみに、親父は未だに政府から見張られているらしいが、政府が使用しているロボットが親父の作品の為中々見つけられないそうだ。
家はわかっているが、警察もそう何回も訪問しないそうだ。
俺の家に警察が来ることは減った。メイドが付いてからというもの、警察が訪れる理由を子供一人でこの家に住むのは大変だとか言う名目上来ていたので無理もないだろう。
事件直後政権がすぐに変わると思えたが、政府の代表や市民の意見や未来への希望。今後のロボットへの信頼などが少なからずあったため変わらなかったと、この前までは報道されているが事実はロボットがなくなると経済や生活が回らなくなる事が目に見えたからだろう。
しかし、そのおかげでロボット技術は進歩に進歩を重ね、発展を遂げた。事件後二年後くらいで、ロボットに信頼を置きやすくするため人間と見た目が変わらないアンドロイドが発明された。
家にいる全裸メイドしかり学校の教師。店員など。孤児の親や、子供のできない方たちの子供まで今では人と変わらないどこでも存在する事となった。
良い事なのか悪い事なのか俺にはわからないが。
「朝食ができました」
俺はソファーからテーブルの椅子に座りメモ帳に二文字書いて食事を並べ終えたメイドに渡す。
「お前。とは、何でしょうマスター?」
首をかしげるメイドに言う。
「それは服じゃない。エプロンだ」
「御気に召しませんか?」
「朝食食べたら粗大ゴミの準備だな」
「ごめんなさい。マジすいません」
と、その場に土下座し始めるメイドを見てこめかみに手を当てため息をついた。
メイド服に着替えてくるのを待ってから朝食を食べ自室に戻った。
携帯にメール来ていたので確認する。知恵からのメールで内容は、今日部室に来て欲しい。というものだった。
返信のメールをせず鞄に携帯をしまい、内線でメイドに連絡をとる。
受話器からピーピーという音の後にガチャリと聞こえメイドが出た。
「何でしょう? ダーリン」
「今日部活あるから帰りは少し遅くなると思う」
「スルーですか……夕食は如何なさいますか?」
「まだわからないけど、喫茶店寄るだろうから軽めのメニュー考えといてくれ」
「かしこまりました。デザートに私などいか」
メイドが言い切る前に受話器を元の位置に戻した。
着替えを済ませてサンルームで紅茶を飲みながら二十分程本を読んでいると鞄を持ってメイドがやってきた。
「登校の御時間です」
「やっと服を着たのか」
無言でお辞儀し、玄関に向かうメイド。
玄関を出たところで鞄を受け取った。
ここまで鞄を持ちたいそうなのでやらせている。
前にサンルームで受け取ろうとしたら絶対に渡さないと言われた。なぜかはわからないがメイドとしてのプライドなのだろう。変な所で律儀に働く。常時変でもあるが。
「お前が言った通りバイクに自動操縦機能付けといて正解だったな。置いて帰ってきても勝手に戻ってくるし」
「お怪我をなされないのが一番です。昨日も足を修理していましたね。何かあったのですか?」
「大した事は何もない」
バイクからジェットヘルメットを取り出し鞄をしまう。
バイクに跨りグローブをはめてからヘルメットを被り横についているボタンを押すとガシャッと音ともにフルフェイス型に変わる。この操作を結構気に入ってい居たりする。
ハンドル中央にある電卓のような機械に暗唱番号を入れ腕時計をかざす。
腕時計にマイクロチップがありそれを読み込んでからエンジンが始動した。
この御時勢に少ないギア付きのバイクだ。燃料はガソリンではなく電気だが、空気を取り込み燃焼させる事で速度を出せるようになっているため、ガソリン車に比べると静かだが、しっかり排気音はなる。
「んじゃ。行ってくるわ。林檎」
「お早いお帰りをお待ちしております。御気を付けて行ってらっしゃいませ」
そういって深く頭を下げるメイドに、エンジンを二度空ぶかししてから発進し片手を上げて手を振る。
景色を楽しむ事無く、舗装された路面にタイヤが吸い付きながら転がるのを確認し、さらに速度を上げて車体を倒してカーブを曲がる。峠道を楽しみながら下きった。
山の上にある家は下からは見えない。
町に残った数少ない自然の塊から抜け出し学校に向かう。
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