部活動
「ロボットの彼氏がいいわ」
授業をすべて終えて部室で作業をしていると唐突にパソコンから目を離さずに部長が言った。
「部長の家ロボット居るじゃん」
学園祭で発表するロボットのメンテナンスを行いながら真は言った。
「いや、もっと格好良くて最近の良く喋るアンドロイドがいいのよ」
いつもの妄想が始まったのか、にやけ面だ。
ちなみに部長の家にあるロボットは旧式もいいところでマニアにはたまらないお宝だ。お父さんとお母さんがマニアでその繋がりで結婚したらしい。
しかし、娘は新しい物好きで久保君みたいなアンドロイドが欲しいのだろう。
ロボット研究部部長でありながら生徒会長で成績優秀品行法制で通っている渡瀬弘美。
その実態は傍若無人極まりない暴れん坊だ。
真や俺をこき使い、何かしらで手に入れたコネを使って教師を脅し。部費を巻き上げている。生徒会長になった理由は学校の全体を見渡すためと自ら宣言しているし、見事その手のひらに学園を治めたと言っても過言ではない人物だ。
何故そこまで出来たのかと言えば間違いなく部長の魅力があってこそと言える。
見た目は誰に聞いても美人と答える容姿。猫を被らせれば右に出るものはいない、完璧な百面相。相手に合わせその場にあった自分を作り上げることが出来る頭脳。
良くも悪くも完璧に男を落とせるのだろう。
「子供作れないじゃないですか」
なんと的外れな事を言うのか真。
「そういう問題じゃないわよ。これだから思春期の男は駄目なのよ」
部長は哀れみの目を真に向けたが真は気がつかずに俺に話しを振る。
「晶はどう思うよ?」
「思春期真っ盛りなら、子供できないほうがいいんじゃないか?」
適当に流すつもりで言ったが反応する奴がいた。
「先輩ってそんなふうに考えているんですか、もっとまともな事を言うと思ったんですが」
一年の小林千恵だ。
小柄でツインテール。スレンダーを突き詰めた凹凸の全く無い体。中学一年生と言われても頷ける久保君より幼く見えるが頼れる後輩だ。
真曰く、妹にしたいランキング上位に食い込むらしいが、もう少し性格がいいと一位だそうだ。
確かにもう少し優しい性格でいいと俺も思う。
だが、これで良いと言うのが真の見解だ。真曰くツンデレ妹最強らしい。知恵は一人っ子らしいが、それは置いておこう。
ちなみに俺も真も知恵がデレたところを見た事はない。
「晶がまともとかありえねーだろ。異常だろ」
言いたい事を言える仲ではあるがオブラートに包む事を真もそろそろ覚えるべきだろう。
「異常系ロボットか、それもいいわね」
部長がつぶやきながら、にやけて作業を続けている何を妄想しているんだか。
「俺は異常じゃないぞ」
「部長は先輩がロボットだったら付き合うんですか?」
「そうね。付き合ってあげてもいいわよ」
何故上から目線で言われているのか分からない。
「おれっちはロボットとは付き合いたくねーな。ロボットに愛情とか持てねーわ」
真の主張だ。
「真って、ペット飼ってったっけ?」
「飼ってねーよ。あ、お前とももと三人でお祭り行った時の金魚はまだ生きてるぞ」
去年のお祭りで俺の叔父さんが出した屋台の金魚か懐かしいな。
「あの金魚か。まぁ、いいか。金魚好きか?」
「LOVEじゃなくてLIKEの方でな。そんなに好きでもねーけど」
「真が家に帰ってきた時に、金魚がおかえりなさい。とか、ご飯作ってくれたりしたら、うれしいか?」
「何言ってんだお前。頭打ったのか?」
こっちに哀れみの目を向けるんじゃない。
「たとえ話だよ。どうだ?」
「うーん。ありえねー想像できん」
目をつぶって考えている真。
「ありえないかもしれないけど頑張って想像してくれ」
真には悪いが俺も想像したら確かにありえない絵図らだった。
「やっぱりおかしいだろ」
うん。俺も無理だったすまん。
「じゃあ、それが女の子だったらどうする? 真好みのすごいかわいい子だったら」
「押し倒すな」
即答するく真。
「思春期というより発情期ですね」
知恵が言ったが俺も同じ意見だ。
「その子がロアンドロイドだったらどうするんだよ」
「特に何もしねーな」
「挨拶も?」
「会話しないだろう。ロボットだぜ?」
「金魚だったら?」
「俺っちを金魚愛好家だと思ってないか?お前」
別に思ってねえよ。
「毎日声を掛けてくるかわいいアンドロイドが、送り迎えしてくれて、料理までするんだぞ?返事くらいするようになるだろ」
「無意識にするかもしれねーけど情はうつらねーよ」
「返事してる時点で少しは移ったんじゃないか? 久保君とは普通に話してるだろ?」
「あいつは、女じゃねーだろ」
「女じゃないな。アンドロイドだけどな」
眉間に皺を寄せてこちらを見る真。少し意地悪すぎたかな。
「何の話?」
補習で遅れてきたももが部室に入ってきた。
すかさず部室の空気を変えるためか知恵が。
「アンドロイドと恋愛できるかって話しです。もも先輩はできますか?」
「できるんじゃないの?」
「できるわ!」
部長が声高らかに立ち上がって叫ぶ。
「俺っちは無理」
「千恵ちゃんは?」
ももに聞かれて少し考える素振りをみせる知恵。
「ロボットですか。出来ないこともないと思いますけど。いろいろ楽だと思うし。でも、できれば人間がいいですね。先輩はどうですか?」
「楽しければそれでいいんじゃないかな」
俺もできれば人間の方がいいけど。
「一応出来るんだ」
何に納得したのか頷いているもも。
「子供はできねーだろ」
そんなに子供が欲しいのか真。
「え? そんな話し?」
頭に?マークを浮かべて顔を赤くするもも。
「子供は作ればいいのよ」
部長は拳を握り力説する。
目が血走ってるよ。
「え? え?」
ももは更に赤面し、顔を手で覆いながらも指先から周りを伺っている。
ももの反応を楽しみつつ俺もいう。
「そうですね。作れば問題ないな」
「部長、作れるんですか?」
知恵が部長に質問をする。
「二日掛ければ作れるわ」
部長、目が真っ赤だ。
「ふ、二日も続けて……」
茹蛸みたいなももは手を下ろして放心状態になっている。
妄想から我に返ったのか部長が言う。
「ももちゃん、何想像してんのよ。顔真っ赤よ? ロボットの子供なんだからパーツあれば組めるって事よ」
先ほどまで妄想してたくせに、人の事を言える立場ではないだろう。
「もも、俺っちより発情してんじゃねーの?」
こういう事を言わなければ真はもっとモテると思うんだが、言ってしまうのが真だ。
「女性に向かってその発言最低です」
言わんこっちゃない。いや、注意してないけどさ。知恵がドン引きしている。
「最低よね」
部長に同意を求められたので答えておこう。
「最低だな」
「おれっちだけ悪者かよー」
「うぅ……」
恥ずかしいのか俯いてももは唸っている。
「よし、喫茶店行きましょう」
皆作業が終わっていることに気がついたのか、ももを思いやってか、部長が宣言すると各自身支度を始め、俺と知恵はそそくさと下駄箱に向かった。
部室の戸締りをした三人が下駄箱に着いた頃には、ももはいつも通りに戻っていて、五人そろって学校を出た。
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