カリス・イン・ポストワールド
維嶋津
序文―第六回現代綜合藝術品評会開催に際して
奪われたのか。それとも、自ら手放したのか。
ともかく、藝術が人類のものではなくなったあの日から、二十年の歳月が経ちました。
壁画の時代から始まった大いなる奔流の、唐突で……しかし完璧な断絶。
しかし今や多くの人々がそれを受け入れ、愚かにも歓迎すらしています。「人類の新たな進化だ」と。「知性は物質世界のみならず、精神世界をも掌握したのだ」と。
受け入れてはならない。
断じて、受け入れてはならない。
かの冷たき、そして残酷な知性どもの祝宴に、我々は甘んじてはならない。
なぜならそれは、人類の精神、魂そのものの敗北であるからだ――
そう信じた我々は、戦う決意を固めました。
狂人と蔑まれ、反乱分子と疎まれ、懐古趣味と嘲られ……。
そして今なお彼らの手先は、我々の活動を潰えさせんと目を光らせ続けています。
平坦な道ではありませんでした。数多くの苦難が行く手に立ち塞がりました。
しかしそれでも、我々はいま、この場所に立っています。
かの日の思いを、胸に灯し続けて。
そう。
我々は、抗わなければならない。
我々は、声を上げねばならない。
我々は、否定しなければならない。
彼らを打ち倒し――そして今一度、人類の手に藝術を取り戻すために。
当協会は才気ある藝術家に惜しみない支援を続けてきました。その感性が結晶するこの定期品評会が、今回で第六回を迎えたことに、主催者としては感慨の念を禁じ得ません。
今回もまた各人が情熱を尽くし、新時代を切り拓く素晴らしい作品を生み出すことを期待します。
二○六五年六月三十日
現代綜合藝術品評会代表
クマソコンツェルン亜細亜第七支部長
熊襲出彦
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