033_どんな許可だかは聞かないでおくさ
「礼はいらないぞ」
ベッドの上で悶え苦しむガマガエルを放置し、4人の女を重力魔法で回収すると、そのままバルドの元へ戻る。
そこには拘束具で縛られたまま、先程の4人と同じ様に健を切られたリディアと、そこに寄り添う女が居た。
部屋の隅には股間から血を流し悶えている男が2人。
そちらは約束通りとなっていた。
「ご、ごめんなさい私のせいで、ごめんなさい、ごめんなさい」
「別にいいわよ。ほら私こんなんだし、がさつでしょ。
私みたいな女なら初めてじゃなくても当然って感じだし、ロロットが無事でよかったよ」
「そんなことない! そんなことないよ!」
「そういう事にしておいてよ。
そうじゃないと私もちょっと辛い……から」
「リディア……リディア……」
リディアはなかなか良い女だな。
性格じゃなくスタイルだけど。
息子が元気になるくらいには欲情を掻き立てる良い体をしていた。
とは言え、流石に今の状態はない。
体が動かなくては奉仕して貰えないじゃないか。
「ロロット邪魔だ、どけ」
「カズト様!?」
「悪趣味で好みじゃない」
俺はリディアの横にガマガエルから奪った4人の女を並べ、全員まとめて『再生』魔法を使う。
5人は手足に自由が戻ったことで、壊れたからくり人形のような様子から、血の通った人間らしい動きに代わり、裸と言うこともあってなかなか刺激的な光景だ。
リディアはともかく、他の女たちは長く手足を動かしていなかった為か、うまく動けないようだが、その様子が艶めかしくもあった。
「リディア!」
ロロットがリディアに抱きつき、それを慰めるようにリディアがロロットの頭を撫でる。
なかなか百合らしい光景で、大変結構だ。
出来れば本物の百合であって欲しい。
「カズト様、お手数おかけしました。
ありがとうございます……」
「別にいいさ。
裏で工作している奴がいるとわかっただけでも価値はある。
よく耐えたな、しばらく休め」
「今回は大きなミスをしましたが、今後はこのようなことがないように精進します」
「期待している」
状況が色々とエロすぎて、素人童貞には余裕を持って受け答えすることが出来ないであります。
多少つっけんどんな物言いになってしまったが許してもらおう。
「バルド、館の資産をかき集めろ。
主には許可をとってある」
「どんな許可だかは聞かないでおくさ」
バルドが4人の仲間とともにこの場を離れると、圧倒的女密度となった。
しかも半分以上が裸の上に、なにやら俺の股間を目指して這い寄ってくる。
もはや人として壊れているな。
「死んだほうがマシか」
「待ってくださいカズト様。
少しだけ時間をください、わ、私が面倒を見ますので、時間を」
リディアだった。
自分が同じ境遇に置かれそうになったことで同情したか。
「お前にはお前の仕事があるだろ」
「ですが――」
「とは言え、さっき休めと言ったのも確かだ。
好きにしろ。その女に掛かる金は全部ここから奪った金を使え」
「あなたに直せないの?」
ちっぱい魔術師の言葉に、俺は『鑑定』の魔法を使う。
何かしらの状態異常に掛かっているなら、これでわかるはずだ。
そしてわかったのは、俺はさっき壊れていると思ったが、壊れているのではなく変わっただけだった。
自身が壊れるのを防ぐ為に自身が変わった。
全てを受け入れる代わりに自分を消したのだ。
病気でもなければ怪我でもない。
この状態を治す方法は知識の中にもなかった。
「無理だな。肉体的な怪我なら直せるが、精神的なものは難しい」
「そう……最悪よね」
「何が最悪かわからないさ。
彼女たちは自分を守る為に今の状態になった。
意外と幸せの中にいるとも言えるかもしれない」
「正気に戻ったら耐えられない?」
「その可能性もあるな。
自分の身に起こったことが受け入れられなくて今の状態になったんだ」
「こんなことをした奴は殺したの?」
「いや、同じ目に合わせて生かしておいた。
殺すのは慈悲深すぎるだろう」
ちっぱい魔術師はそれ以上何も言わなかった。
右目に巻いた包帯からは血が滲んでいる。
ロロットの魔法では完治しなかったか。
痛みだって結構あるはずだ。
意地を張らずに「お願い、何でもするから怪我を治して」とお願いして来るなら、腕を取り返す努力もするのに。
それを待つとか、俺もなかなか悪趣味じゃないか。
まぁ、戦力を下手に低下させない為にも、間接的になるが、後でロロットには優しく甘美に満ちた、夢のような時間を教えてやろう。
ロロットもきっと満足し、終わった後は俺に熱い視線を向けてくるに違いない。
回復魔法を受けるのは気持ちが良いからな。
覚えるには実際に受けるのが一番だ。
バルドたちが財宝を入れた箱を抱え戻ってきたところで退却する。
男どもは洞窟に、女どもはビルモの街に間借りしている家に。
「リディア。約束だ、しばらく休みをやる。金はこれを使え」
「ありがとうございます、カズト様」
「リディア、私も――」
「ロロット、あなたは私の分までカズト様の為にみんなと戦って」
「……わかった」
リディア、ロロット、ちっぱい魔術師。
3人共タルシスとビルモ間の戦いで捕虜となり、俺の奴隷となった。
その後、強制的にダンジョンに送り込まれ生き残った3人だ。
だから俺に恨みはあれ、俺の為にと思うような気持ちが生まれるのは理解できない。
女の気持ちが理解できないから俺は素人童貞なのかと考えれば、悔しいが納得できる。
本当に悔しい。
俺の初めてを奪ったツバサちゃんに会いたい。
しかしその前にお片付けしておかないとな。
◇
俺はバルドをはじめとする奴隷を巣穴に戻し、一息つくと、次いでドルトスを『索敵』で探す。
俺の知覚範囲で7人が引っかかった。
さて、どいつが正解か……
ガマガエルは、ドルトスのことを領主の使いっ走りだと言っていた。
だが、領主が策を任せるだけの人物だ、それ以上と考えておいた方が良い。
いずれにせよ、領主の近くにいる奴がもっとも可能性が高いか……該当する奴がいるな。
館の場所と規模からして領主邸で間違いないだろう。
その男が俺の探すドルトスとは限らないが、ガマガエルの反応からして確率は高い。
タキシスの町の流通を潰すかのように、盗賊を放ち続けた理由は何か。
攻めてきたビルモの町のアセドラが強気だったのは、後ろ盾があるからだと思ったが、それはドルトスあるいはその雇い主、つまり領主ではないか。
ガマガエルもアセドラの後ろ盾には不足だろう。
やはり領主の線が濃厚か。
そもそもタキシスの町の井戸が汚染されたのはなぜだ。
ドルトスからすれば、隣の領の辺境にある田舎町でしかないタキシスを中心として、事が起こり続けているのは不自然にも思えた。
もしタキシスに地下資源があるとか、戦略上重要な地点だというなら話もわかる。
しかし、前に『探知』魔法を使った限り地下資源と思わしきものは無かったし、領地戦が起こるというならともかく、そんな気配もない中で重要地点とも思えない。
重要地点だとしても、タキシスより隣のビルモの方が余程価値があるだろう。
待てよ、俺が重要と思っていないだけで重要な物があるのかもしれない。
俺は今一度『探知』魔法を使い、金銀銅鉄といった鉱石以外に注目していく……あった!?
タキシスの町の西に連なる山脈には、ミスリル鉱が埋蔵されていた。
ファンタジー鉱石の存在が抜けていたのか。
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