蟹を食べた日

@meganekids

第1話

「はじめて蟹を食べた日のことを覚えている?」


唐突に彼女が切り出した。

彼女は僕の答えを待つように、アイスコーヒーをゆっくりと飲んだ。

「さあ、いつだったかな。子供の頃に食べたんだろうけど、正確にはわからないな」と僕は曖昧に答えた。「でもカニカマをはじめて食べたときのことならよく覚えているよ」


「カニカマ」のところで、彼女のハサミがぴくっと動いたのを僕は見逃さなかった。

「カニカマ、ね」彼女は挟んでいたコップをテーブルの左端に置いた。「カニカマは蟹じゃないよ」口からはコーヒー色の細かい泡が出ていた。

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