Prg-a Page.05
新宿区中野エリアにあるとある小さな公園は
入電午前4時48分。
その通報は管内の警察署各局にけたたましく鳴り響いた。
警察が到着した時には人影はなく、敷地のすぐ外で第一発見者となった通報者にいち早く交番の巡査部長が聞き取りを行っているだけだった。まずは
そこに、一台の覆面パトカー、セダン車が到着した。
「あ、中野署の皆さんだ」
降りてきた
「なんだって公安なんぞが出張るんだよ」
「そんな、目くじら立てないでくださいって」
「うるせぇ。またヤマかっさらってくのかよ?」
「いや仕方ないじゃないですか。こっちも上からの命令ですし。それに、聞きましたよ?大量の血痕だけで、凶器も遺体もないって。そうなったらこれ、M案件の可能性を検討せざるえないじゃないですか?」
「ったく…そうかお前、13課の
「どうも」
と、おどけながら答えて、警察手帳を開示する。
「こんな面倒そうなヤマ、こっちで引き受けますよ。申し訳ないんですが、引き続き大量失踪の方、よろしくお願いします」
「そっちも公安が出張り始めてんだよ。しかも陰気くせえやつらがな」
「あたー。それは、すみません」
「まあいい。なんかわかったら教えろ。もし本当にM案件なら俺らにゃどうしようもねぇしな。だが、そうでなかったらその時はこっちの領分だ」
「もちろん。承知しております」
けっ、と続けて一言だけ嫌味を吐き出して、担当の刑事は現場を出ていった。
「さって、と」
加えたシケモクを携帯灰皿に処理しつつ所轄を視線だけで見送って、支給された紺色のジャンパーの胸ポケットから携帯端末を取り出す。
「
受話を確認して一言告げてすぐに切ると、先ほど
「なんですか
「ははは、わりーわりー」
特に悪びれた様子もなく返す悠岐。
「軽口叩くのもほどほどにしてください!現場ですよ!」
「悪かったって、そう怒るな、
「まったく…」
「さて、
「了解です」
「お疲れ、
血痕があるあたりらしい、トイレと植え込みの陰になっている場所に鑑識が詰めていて、現場全体の写真を撮っているらしい人間に一声かける。
「あ、
「おっす。結局、初見通りに凶器も遺体もなしか」
「遺体は、ご覧の通りありません。ただ、ざっと見てみた感じでは、なくなったとか
「存在しなかった?」
話し込み始める
「ええ。今ドローンも使って一番可能性の高いそこの川を取り敢えず上空から探ってるんですが、多分凶器も遺体も出ないかと」
「それは…」
「この固まり方、やっぱり…」
「ええ。さすが、
「だろうな」
「
「この
「そう、か。でも遺体はない」
「はい。となると、
「これだけ流血して移動してるか。乾燥具合からみて、流血後どれくらいだ?
「そうですね…最低でも3時間前。もっと前かもしれませんが、5時間は経ってませんね」
「これだけ血流してたら嫌でも衣服に付着するよな。周囲の聞き込みはまずそっちからだな」
「とはいえ、13課は私と
「……チッ。あの文鎮め」
「…剥がれた床ごまかすために一番重い課長のデスクを乗っけたからって、文鎮…」
「ダメだ、笑えてきた」
肩を震わせ始める
声に出始めた
キョトンとする
「そのまんまだよ。現場にもでねーしな」
「ドンピシャすぎますって、
「絶対署でそう呼んじゃダメですからね」
賞賛とダメ出しが
「今聞き込みしてる所轄なんざいねーよな。こっちで引き取って帰っちゃったし」
「ええ。所轄はゼロですね」
「したくねーけど了解。
「また
「ご明察」
「鑑識としてはあまり気持ちいもんじゃないですが、仕方ないですね。おーい」
血液反応を採る作業をしていた鑑識のスタッフに
「複数の見地、ってのは、ここ最近身に染みてますし」
「さすが
「
「でも、時々参考にはなるだろう?」
「確かに、それは認めます。
「やっぱ鑑識以外ってのが気に食わんか」
「なんとなくですけどね。しかも大学の研究室って。
「
「その可能性は捨てきれませんけどね…」
すると、先ほど
「はいどうも。…どうぞ」
「はいどうも。
「あ、私はもうちょっと現場見ていきます。一応、ドローンの結果も待ちますので」
「そうか、了解。んじゃ
「戻るんですか?」
「いや、
「じゃあ、終わり次第ですけど、
「よろしく。あれ?お前らまだ付き合ってないんだっけ?」
「まだって何ですかそんなことは一生ありません」
「あー」
「そうか。
「は…いじゃない何でそうなるんですかっ」
ちんたらしてるとあっという間にババアになるぞ、と言いながら受け取ったサンプルを内ポケットに仕舞いこんで、片手をひらひらと
「…あの人のどこがいいの」
「うっさい黙れ仕事しろ」
「はい」
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