37豚 転生したから
学園の中央、生徒達が祈りを捧げる大聖堂の前は芝生が生えた皆の憩いの場となっている。
俺たちの目の前では沢山の生徒達がそれぞれの時間を過ごしていた。
シャーロットと俺は共にベンチに座ってお昼ご飯を食べていた。
あんまり外に出ないでほしいってお願いをしてから、シャーロットは従者としての仕事を終えると前にもまして部屋に籠っているらしい。
引きこもり系
まあ俺のせいなんだけどね。
「スロウ様。どうされたんですか?」
そんなシャーロットの傍には過保護な風の大精霊さんが珍しくいない。
実はアルル先生の行動を逐一観察するよう昨夜からお願いしたのだ
俺からの協力要請に最初は渋っていた風の大精霊さんだが、新鮮な魚の提供といつか面白い場所に連れていくという約束を交わしたことで納得してくれた。
今朝の報告ではアルル先生に怪しい行動はなかったらしいけど、いつか必ず出てくるはずだ。
「今朝、皆の魔法の練習を見てたんだ。中には従者の人もいてさ、これが結構面白い奴でさ―――」
俺は彼との話をシャーロットに伝えた。
シャーロットは興味深そうに何度も頷きながら聞いていた。
「彼は貴族の女の子の従者で小さい頃から一緒に育ったんだってさ―――」
格の高い貴族程、選りすぐられた中から選ばれた従者との付き合いは生涯のものになる。
従者である彼らは雑用からちょっとした用事まで、それこそお昼に焼きそばパン買って来てのレベルで何でもしてくれる。
そして疑り深い貴族であっても自分の従者のいうことなら信じるといった人が大勢いる。
「―――時には言い合いもするって聞いてびっくりしたんだ」
俺はシャーロットを見た。
ずうっと小さい頃から一緒に育ってきた女の子。
肩まで伸びた銀色の髪とスレンダーな身体。。
姿勢良く俺の隣に座り、凛とした雰囲気を持ちながらも高貴さを醸し出している。
物静かなだけど芯が強い女の子。
そんなシャーロットは何故か不安そうに、ちらちらと横目で俺を伺っていた。
「……」
俺たちも小さい頃から一緒に育ってきた。
仲は良かったと思うけれど、やっぱりそこには壁があった。
「ちゃんと伝えるべきことは伝えないといけないって思ったんだ」
胸の鼓動が早くなる。
周りの景色が見えなくなる。
伝えないといけない。
俺は君の秘密を知っている、君がお姫様であることを出会ったあの時から知っている。
顔から血の気が引いていく。
黒い豚公爵がずっと言えなかった言葉。
真っ白マシュマロ豚公爵となってからも、心の中で避け続けた言葉。
シャーロット、実は俺はね―――。
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