90豚 風の神童と皇国のお姫様⑩
「何をおっしゃっているのですか! 今日は朝から王都に行くと伝えたではありませんか! 何故、ここにいるのです! ああまたお菓子をパクパクと食べて!」
「知らんよ。そんなん知らんよ、ぶっひっひー」
俺は変わった。
端的に言うと、とても嫌な奴になった。
「アリシア姫が泣いて帰られたと言うではありませんか! 一体何をされたのですか!」
「一晩中怖い話を聞かせ続けてやったぜ」
平民の子供なら、反抗期といって可愛がられるものかもしれない。
けれど、俺は貴族だ。
「どれだけ食べるのですが、また領民に太ったと笑われますよ!」
「そういやこの前、3歳ぐらいのチビッ子にぶたこうしゃくって言われたな。ぶひぃ、ぶひぃ。まったく失礼なやつだ」
それもダリスの大貴族デニング公爵家の者だ。
三男でありながら次期デニング公爵確定とまで噂され、その事実を裏付けるかのようにサーキスタの王女との婚約もされている。
とんでもないハイスペックだった俺の変貌は次第に他国にまでその噂を轟かせていった。
「おい、お菓子持って来いよ。あと今日も食っちゃ寝するから誰も入ってくんなよ? ……あ、シャーロット。久しぶり」
「スロウ様。どうされたんですか? 最近のスロウ様はちょっと可笑しいって皆言ってますよ!」
そんなことを続けて太陽が何十回上った時だろうか。
ある夜、シャーロットが訪ねてきた。
デニング家の家臣による、地獄の
けど、パジャマだった。
クールに決めているみたいだけど、可愛らしいピンク色のパジャマだった。
俺としては昔の泣き虫シャーロットのほうが可愛いと思っていたのだけど、これはこれで可愛いと思うのでいいのだ。
結局はシャーロットであればそれでいいのだった。
そして当然。
俺の気持ちなんて気付かないシャーロットは、俺の変貌にとても困惑しているようだった。
「何言ってんのシャーロット。俺は昔から変わっていないよ。悪党だって言っただろう?」
「……そんなのって嘘です。可笑しいです……私にも言えないことなんですか?」
「可笑しく何てないよ。これが俺の素なのさ」
肩をしょんぼりと落とし、部屋から去ろうとするシャーロットへ―――。
「―――ちょっと待ってくれシャーロット、じゃあヒントをあげるよ」
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