60豚 はしるーはしるー俺達ー。あっ、貴方はっ!

「ヒールヒールヒール!! がんばれー!」

「ひひひひーん!」


 ヨーレムの町はまだかー!

 もうどんだけ走ったか分からないぞー!

 何せ視界に映る景色がさっきから一向に変わらないのだ。

 学園がどうなってるかも分からないし、俺の魔力がいつまでもつのかも分からない。

 全く分からないことばかりである。


「おわっ!」


 岩石で出来たゴーレムが森の中から街道にいきなり躍り出た。

 や、やめてくれ! ビックリするじゃないか! ちょっとだけ人間に近いフォルムだからでかい人間かと思ったぞ!

 ゴーレムの巨体を風で浮かび上がらせて、街道からどけるのはちょっと難しそうだ。


「凍れー―――」


 別に倒す必要は無い。

 白馬さんの走りを邪魔しなければそれでいいのだ。

 だから水の魔法を用いてゴーレムを瞬時に凍らせようとした。

 その時だった。


「だあああああああああ!!!!!! 大地よ奴を捻り飛ばせッ、泥泥手マッドハンドッォォォォ!!!」


 泥状の土が大きな手となり、ゴーレムの身体を飲み込むようにして掴み上げた。

 そして、勢いよく森の中へとゴーレムをぶん投げる。

 まるでゴーレムに苛立ちをぶつけているかのような力技だ。

 そんな魔法を使った何者かが俺が進む街道の前方に躍り出た。

 それはもう立派なアフロ、さすがに見間違えようが無かった。



   ●   ●   ●



 俺は学園の事情をロコモコ先生に簡潔に説明すると再び白馬を走らせた。

 ロコモコ先生は傭兵に魔法で眠らされ、起きた時には空の上だったらしい。

 でかい鳥に両肩を捕まれ、じたばたともがいたらそのまま森の中に捨てられ頭を打って気絶していらしい。絶対にいつか傭兵に復讐してやるとロコモコ先生は笑っていた。恐ろしい顔だったよほんと。

 

「悪いな、お前には無理をさせてばっかりだ。ヒールヒールヒールッ!」

「ひぃひぃ……ひ、ひひひひーんっ!」


 しかしロコモコ先生は俺のことを最初は誰だか分からなかったと言っていた。スロウ・デニングだと名乗ると滅茶苦茶驚いてて、げっそりしてるぞとか何とか色々言われた。

 街道超えのためにずっと魔法を使い続けているのだ、げっそりしているのも当然だろう。

 でもロコモコ先生は何故か納得していない様子だった。

 俺の顔に何かついていたのかな? 鳥の糞とか。

 そんなことを考えていると、遂に見つけた。


「あ……ッ!!」


 諦めなければ、絶対に追いつけると確信していた。

 だから、その姿―――。

 ―――遠くの空で飛翔方モンスターから攻撃を受けている傭兵ナタリアを見つけた時、すぐに攻撃体制に入れたのだ。

 

「さあ第二ラウンドの始まりだぜッ傭兵さんよッ!」


 幾百もの風の弾丸が頭上に生み出し射出する。

 空気が歪み、見るものに恐怖心を抱かせるような圧巻の物量。

 空を行く傭兵に向かって、俺は情け容赦の無い攻撃を行った。

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