17豚 A.ない
「お代わり!」
「持ってくるの遅いよ! 何やってるぶひぃ! もっかいお代わり!」
「遅い遅いよ! 二皿一気に持ってきてーっ! 追加のお代わりぃ!」
ぶひい! うますぎい!!
俺がお代わりと叫ぶ度にウェーブが沸き起こっている。
会場の実況を担っているらしき黒い正装の男性、彼は俺がお代わりを頼む度に「トップ、お代わり入りましたぁぁぁぁああ」と一緒に叫んでくれていた。盛り上げ上手のいい司会っぷりだ。
「すごい勢いで食べています! 参加番号3、クルッシュ魔法学園より参加の登録名、豚公爵チームさん! ええ、豚公爵チーム!? おおっと他を圧倒する彼の本名は、まさかまさかのスロウ・デニングッ!? かの公爵家が生んだ異端児デスッ! おおっと、すみません! え……構わないって? なら、叫びましょう! 彼こそがデニング公爵家が生んだ異端児、豚公爵様だあああああ!!!」
会場はぐわあっと熱狂に包まれる。
俺は右手を上げてガッツポーズ。呼応するように歓声が上がった。
良い気分だ! 盛り上げていこうぜ!
「余裕です! やはり余裕! 豚公爵様の噂は真実であることが今、証明されました! しかし、豚公爵様、とても美味しそうに庶民の味を食べておりますっ! 以外と庶民派なのかもしれませんッ!! このまま一気に突き放すのかッ! 二番手はこれまたクルッシュ魔法学園より参加のチームッ美白! ……確かに可愛らしいお嬢様ですね! チーム美白も赤髪の彼が頑張っていますが……差は広がる一方です!」
大食いにおいて俺が負けるわけがないだろ!
他の参加者はやっぱりカップルが多いようだな、おっ中高年の夫婦チームなんかは胸やけしてるみたいだ。一皿でも結構ボリュームあるからな。
隣ではシャーロットがはむはむと勢いは遅いが確実に食べている! いいよシャーロット! ガンガン食べていこう!
隣のテーブルの様子を伺うと……うーん、アリシアも結構な勢いで食べてるなあ。あ、こっち見てる。俺と目が合うとやっぱり睨まれた。まあ俺が優勝したら美容薬ゲット出来ないもんな。心配するなアリシア、途中で調整してチーム豚公爵は二位を狙うから。
あー、アリシアお前ちょっと服が汚れてるぞ。相変わらず仕方が無いやつだなあ。
「巷で話題の豚公爵様、さすが圧倒的です! おおっと、様々なソースを試してどれが一番美味しいか比べる余裕もあるみたいだ! さすがデニング公爵家の異端児! 噂通りのようです!」
全く、平民の間では俺はどんな風に思われているんだか。
うん、うまい!
観衆がざわめく。
「さすが豚公爵!」「すごい食べっぷりだ!」 ありがとよ!
「お代わりぶぃ!」
「豚のスロウ! 負けないですの!」
アリシアの焦りが伝わってくる。
他のテーブルでは早々にもう食えないとギブアップしてる人達もいるな。おいおい、軟弱すぎい! どんな胃の鍛え方してるんだよ! 限界の先のちょい先に挑戦しないと力は上がらないよ!
「シューヤ! もっと食べなさいですわ! 豚のスロウに負けてますわ!」
アリシアがばんばんとシューヤの背中を叩いていた。
おい、止めてやれよ。さすがに可哀想だぞ、あいつ死にそうじゃんか……あ、このソースいけるな。
「う、うぐぐ! 無理だ、無理だ、これ以上は食べれない……。けれど、水晶はオレがもっと食べれるはずだと言っている! ああ、オレはもっと食べれる! ここでもっと食べないと未来が無いってのは
「ぶひいっ! うまいっ! お代わり!」
「ぶひっ! 次持ってきて次!!」
「ソース無くなったよソース! お代わり!」
シューヤが目が飛び出さんばかりの「まじですか!? 化け物ですか!?」と言いたげな表情で俺を見つめていた。
がくりと肩を落とし、絶望しているようだ。おいおい半泣きじゃないか。泣くなよ。まだ時間はあるんだし、確実に消化していけばいいさ。お前は大食い道に入ったばっかりじゃないか。
「あ……アリシア。許してくれ……、もう、無理……水晶も俺は頑張ったって言っている。大食い大会では豚公爵に勝てないって今、
さーて今どれぐらい時間立ったかな。
残りの時間はランキング調整に使うとしよう。追い上げてくるチームにギリギリで負けるようにして痩せ薬をゲットするのだ。暖まっている会場を冷めないように、急に腹一杯になった演技をするぞ。
「残り五分です! おおっと、豚公爵様。突然、苦しそうな顔になり、飲物に手を伸ばしました! 顔をしかめています。食べ過ぎでしょうか!?」
周りを見渡して、えーと二位になりそうなグループを探す。
「シャーロット、もういいよ。あ、水飲む?」
「……もらいます」
俺が17皿でシャーロットが3皿。
うん、合計で20皿! 二位を狙うには充分だろう!
「もう食べられません」
シャーロットは水を飲んでほうっと一息ついていた。
えーと、チーム美白はシューヤが8皿でアリシアが4皿。おお、アリシアも身体がそれ程大きくないのに結構食べてるな。負けず嫌いのあいつのことだから俺みたいに朝も昼も抜いたのかもしれないな。
「シューヤ! こらシューヤ! 豚のスロウに負けてますわ! 美容薬が手に入らないと、このままずっとアタシの召使ですわよ!」
「もう無理……だけど、お代わりしないと俺はアリシアから解放されない……うおおおおお!! 水晶もとりあえずお代わりいってみよう? って言っている!! お代わり!!!」
観客もそんなシューヤの頑張りに拍手を送っている。
……おい、アリシア。ちょっと無理させすぎじゃないか。シューヤ泣いてるじゃん。
さーて、他のチームはっと。どこが一位になりそうかな?
「おめでとうございます! それではカニバサミ商会が企画した大食い大会! 優勝者は参加番号3、チーム豚公爵ですッ! こちらが優勝賞品の美容薬4本セットになります!」
「……ぶひぃ」
結論から言うとチーム豚公爵はぶっちぎりで優勝した。二位のチームは途中で食べることを止めた俺たちに追いつくことは無かった。
手作り感満載の壇上で美容薬が詰められた木箱を手渡され、俺たちは大きな拍手を受けた。
「……あれ?」
二位はまさかのチーム美白だった。
シューヤが11皿でアリシアが5皿。シューヤは瀕死だ。アリシアの恐喝で最後はズタボロになりながら、口に押し込んでいたからな。
「ぶ、豚のスロウ。ゆ、優勝おめでとうですわ……美容薬はアナタのものですわ……でも、話がありますわ……。ちょっとあちらで、……話しましょう……うっ」
食べ過ぎのせいか、胸を押さえているアリシアが声を掛けてくる。
その指の先には、会場の外で柱にもたれ掛かって意識を失っている様子のシューヤがいた。
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