528豚 <<ロッソの軍勢。王都よりの使者>>
「――ロッソ公の命により、戦える者は馬に乗り、ついてこい!」
道中の村や街で、ロッソ公は権威を振りかざし、仲間を募る。
「わっかんねえ! 何がなんだか、分からねえよ! だけど、先頭に立つお方はあのロッソ公だ!
「ロッソ公は十分な見返りもあると言ってんだ! 約束を反故にするお方でもねえ! それに武勲を取り立てたものは、ロッソ公が騎士にさえ取り立てると言ってるんだ!」
街の守備兵士さえも引き連れて、ロッソ公の軍勢は膨れ上がっていた。道路の両側には、人々が集まって見送りの声を送り、手を振っていた。
戦える若い男たちがロッソ公の軍勢に加わり街道を行進する光景はどこまで続いている。
既に規模は数千にまで膨れ上がっている。行進を続ける男たちの服装はバラバラだ。鎧を纏うものもいれば、安物で革鎧を全身を覆うものもいた。
若者たちは一歩ずつ、背筋を伸ばし誇らしげな表情を浮かべ前進を行う。理由がわからずとも、ロッソ公の軍勢に加わるなど、サーキスタの民にとっては計り知れない名誉だ。
その目には未来への希望と決意が宿っており、戦う使命を果たす覚悟が感じられていた。
「すすめ、進めえ!」
ロッソ公の尋常ならざる様子は噂を呼び、王都にどこかの国が攻めてきたのではないか等、様々な話が飛び交っていた。
「――ロッソ公! ……ロッソ公! ハメス様! さすがに休息を取りましょう! このままでは身体が持ちません! 貴方に倒れられては――元もこうもない!」
側近の声にロッソ公は首を振った。
「馬鹿者が!
ロッソ公の旗を全面に立てて、向かう先は王都サーキスタ。
国土の末端に大領地を構えるタイソン領地から王都へは、通常一週間程度の道中を求められる。しかし、それでは時間が掛かりすぎるのだ。
奴らの狙いは――あくまで、サーキスタそのものが本命だっだ。
タイソン公によりヒュージャック侵攻はあくまで優先度の低い確認作業。ヒュージャックが、未だ全容が解明されない
――死ぬな、タイソン公。死なないでください。
ロッソ公の内心は、嘆きと後悔に満ちていた。
――もしや、タイソン公。貴方は知っていたのですか。
――ヒュージャック奥地に
だが、もはや確かめようはない。タイソン公は出陣し、ガガーリンによって偽りの死から蘇生したリオット・タイソンさえもヒュージャックへ向かった。
有事には、
それにハメス・ロッソは、知っている。
ロッソの軍勢の中で唯一、ガガーリンの言葉を直接に聞いている。
――水の大精霊を、殺せる程の人間が、王都に送り込まれている。
奴らの最大の狙いは、
帝位継承権を持つファナ・ドストル殺害も、ヒュージャック侵攻も、成功すれば御の字だが、あくまでついでだ。
帝国の最大の狙いは、
優先度の高い順に、アリシア王女、
長年、帝国を闇の大精霊に牛耳られていた災いからか、現在の帝位継承権をもつ王族たちは大精霊という超常の存在を強く憎んでいるのだとガガーリンは吐いた。
「――ろ、ロッソ公! 王都よりの使者が、街道の先から参られました! 急を要するとのことで!」
「連れてこい!」
「いえ、それが……余程、急いでいたのか要件だけ伝えると、気を失い――」
「冷や水でもぶっかけてやれ! それで要件とは、なんだ!」
ロッソに使者よりの伝言を伝えようとする若きロッソ軍閥の兵士は、息も絶え絶えな様子で。
「王都に、魔物とも人間とも判別つかぬバケモノを中心とする敵対勢力が多数、出現! 現在、
ロッソは、天を仰いだ。
「ロッソ様! 何が! 何が起こっているのですか! 王都が、陥落!? 分かりません! わかりません! なぜ、なぜだ! 我々は、なぜ襲われているのですか!」
――ロッソも叫び出したい気分だった。
誰か、誰か、王都で何が起きているのか教えてくれ!
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