520豚 <<ハメス・ロッソの進軍>>
彼らは立派な馬にまたがり、森の中を駆け抜けていく。馬は美しい栗毛で、力強い足取りで地面を蹴った。その体躯は鍛えられ、精悍な姿勢で彼らを背負っていた。馬の首には、細工された革のハーネスが装着されており、彼らの指示に従ってしなやかに曲がる。
森の中では、木々がそよ風に揺れ、鳥たちがさえずりながら飛び交っている。太陽の光が透明な葉っぱを通して降り注ぎ、神秘的な光景を演出していた。彼の目の前には、細い道が広がっており、馬の蹄が土の上を踏みしめる音が響いている。
「急ぐのだ――」
先頭のハメス・ロッソは、装い鮮やかな鎧に身を包んでいた。木々の頭上から届く鮮度のある光が彼が着込む鎧の表面を照らし、その輝きはまるで月明かりのように澄んでいた。ロッソ公の鎧は細部まで緻密に作られ、美しさと堅固さが融合したような印象を与えている。
彼の名前はハメス・ロッソ――大陸南方において大国と呼ばれるサーキスタが誇る四つの名家――
「皆、言いたいことがあろうが……何も言わず私についてこいッ!」
ロッソ公は彼の後ろに続く数十騎の騎士に声をかけ、ひたすらに駆け続けた。
脇目も振らず、彼らは駆け続けた。
「ロッソ様、ついてこれない者が数騎ッ! しばしの休息を!」
後ろに続く者たちから、続々と声が続く。それは余りに異常な進軍速度であったからだ。
ロッソ公は手早く馬を走らせ、サーキスタの中心へ向かっていた。いつの間にか雨が降り出し、ロッソ公が引き連れた騎士たちの身体を冷たく打っている。
既に
だがロッソ公の顔は――輝いていた。サーキスタが極めて危機的な状況にありながら、ロッソ公は長年探し求めていた一つの答えを得たからだ。
「歯を食いしばれと伝えろ! お前たちも現在の都がどのような状況にあるか、知っているだろう! 膨れ上がった暴動のうねりは、何をきっかけに破裂するか分からない!」
タイソンとロッソを除いた
「皆のもの! 我々の役目は、何よりも重要であると知れ! 国難が迫っておる!」
「それは……逆賊タイソン公の捕縛よりも価値があるのですかッ!」
ハメス・ロッソの頭上には、獣の角を模した黒い鋼の兜があった。兜の上部には、翼を広げた鷲の飾りが施され、風に揺れるたびに羽毛の模様が踊る様子が美しい。その兜は彼の顔を包み込むようにフィットし、彼の視界を広げながらも、戦場での保護を確保していた。
「今はただ……このハメスを信じ、付いてこい!」
ロッソ公の手には、丈夫な騎士用の剣が握られていた。剣身は銀色で、刃は光沢を持っており、太陽の光を反射してまばゆく輝いている。彼の手首からは、豪奢な装飾が施された金色の手袋が延び、剣をしっかりと握ることを可能にしていた。
「タイソン公への対処はリオットに任せている! リオットには地下に囚われていた高位冒険者を解放させ、ロッソの騎士さえ託したのだ! さらに、あのガガーリンを攻略した者もついている! ヒュージャックへ進軍するには、十分な戦力と言えよう!」
リオット・タイソンは、あの地下の暗い部屋の中で、ハメス・ロッソとスロウ・デニングの前で、ガガーリンの魔法によって息を吹き返した。あの時の光景を思い出すだけで、ロッソ公の胸は痛む。
リオット・タイソンは――ファナ・ドストルと守れなかったと涙を流し、自分が誰に殺されかけたのか、ファナ・ドストル警護の任に当たっていた彼らの間で何が起きていたのかを詳細に語った。リオットは真実に近づきすぎた。
だからファナ・ドストル警護の任に就いていた者たちはリオットを除いて――殺された。
そして今、ハメス・ロッソはサーキスタ王都へ力の限り急いでいた。
リオットはロッソ公に必ずタイソン公を捕まえると約束した。そしてリオットは、
タイソン公としての役割を果たすために、ライアー・タイソンを連れ戻すと訴えたのだ。
「――急ぐのだ! 私は、リオットの言葉をエデン王に伝えねばならい!」
本当の敵は、ドストル帝国から降ってきたあの少女ではなかった。
あの少女はただ北方から追い立てられた帝位継承権を持つドストル国王の子であり、サーキスタに対して敵対する気など、いや、そもそも関心があるのかさえ怪しい。
敵は――敵の本隊は、都にいたのだ。ガガーリンではなかった。
「未曾有の事態がやってくる。常に反目し合っていた
――――――――――――――――――――
スロウと指揮官リオット・タイソン、そしてアニメ版シューヤの師匠格、
スロウにとっては珍しい強力な仲間、この四人を中心とする激戦のヒュージャック跡地攻略戦がそろそろ始まります。
次から新章「ヒュージャック跡地、攻略戦」。
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