公爵家の闇
398豚 真っ黒豚公爵の遺産
デニング公爵家ってのはやばい一族だ。
もし俺がこの国の一般人だったら積極的に関わろうとは思わない。力こそ全ての考え方で有能なら平民、貴族に関わらず取り立てて騎士にする。
力のある人間には惜しみなく報酬を与え、用済みになったら放り出す。戦時中に大きな存在感を発揮する大貴族で、残念ながらこの大陸は長年、ずっと戦時中だ。
「閉店ですよお。表の立て札の文字が読めないんですかあ。文字が読めないなら、うちで買える商品はありませんよお」
「……」
俺は真っ黒豚公爵時代に怪しげな奴等と交友関係を結んでいた。ヨーレムの町の路地裏にひっそりと商いを営むこの店もそうだった。もう深夜遅く、閉店の立て札が掲げられているけれど、この店にとっては夜からが本当の営業時間だ。
ガチャっと扉を開けると、扉は開いた。鍵なんて掛かっていなかった。
「おおー! これはこれは! デニングの若様じゃありませんか!」
店内、カウンターの奥には分厚い金貨を数えていた脂ぎった男がいた。胡散臭そうで、有能にも思えないけど、真っ黒豚公爵はこういう男と好んで友好関係を結んでいた。
「お久しぶりでございますねえ、最近はうんと有名になってしまって、もううちには顔を出してくれないのかと思っていましたよお」
店主はランプの炎を灯して、真っ暗な部屋に光が満ちた。
店の中には所狭しと武具が壁に立てかけられている。多種多様な金属で出来た鎧、剣、斧、盾と種類は様々。冒険者を相手にした商売のようだけど、ここはヨーレムの町だ。大金を持っている冒険者が頻繁に訪れるような町でもない。
じゃあ、どうやって金を稼いでいるのかと言うと。
「それで若様。本日は何をお求めで?」
「今、俺の父上がクルッシュ魔法学園に滞在していることは知っているな?」
「勿論でありますよお。公爵様が直属の部隊を連れてクルッシュ魔法学園へやってきた。学生をこのヨーレムの町へ追い出して、名高いサンサ・デニング様まではヨーレムの町に滞在しているのです。この小さな町では、あの公爵様が何を始めるのかと噂で持ち切りですからねえ」
そこまで知っているなら話が早い。
俺は店主が用意してくれた椅子に座ると、偉そうに足を組んだ。一応、俺も公爵家の人間。こういう相手には、強気な態度で出ることも必要だろう。
「……」
舐められたり、安く見られたら終わりだ。
シルバやクラウドも独自の情報網を持っているのだろう。シルバは平民としての強みを生かして、クラウドなら人当りの良さを生かして。あいつらにはあいつらなりの強みがある。
「……」
真っ暗豚公爵はこういう後ろ暗い過去を持っている人間に多くの貸しを作っていた。腐ってもスロウ・デニングって名前には価値があった。公爵家の直系なんだ。貴族や平民が大金を出して求める情報は幾らでも知っていた。
全てはシャーロットを守るため。
「ラッド。お前は、俺が一から百まで説明しないといけない程の無能なのか? だったら付き合う相手を見直さないといけないな」
「若様。相変わらずの手厳しさですねえ。今日はあのサンサ様も当店にいらっしゃいましたが、やはり物が違う。それで当店に何をお探しに? ご存知の通り、当店が扱う情報は高いですよ」
これから俺は真っ暗豚公爵時代の遺産を大活用して、父上に関する情報を探るつもりなんだ。
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