【シューヤ視点】389豚シューヤ・マリオネット①
大陸南方と呼ばれる地帯にて、北西側を支配する歴史深き大国。
名を騎士国家ダリスと呼ばれている。
厳かな城壁に囲まれた王都ダリス、中心部に聳え立つ塔の最上階に彼はいた。
――すげえ、すげえ、すげえ! こんなことになるなんて――!
シューヤ・ニュケルンは片膝をつき、壇上に座る彼女を見つめる。
騎士国家を統べる女王、名をエレノア・ダリス。
女王の両隣には二人の男。国を支える枢機卿ヨハネ・マルディーニ、そして守護騎士ルドルフ・ドルフルーイの姿も見えた。
――
シューヤ・ニュケルンは、サーキスタ大迷宮で起きたことをスロウ・デニングと前もって打ち合わせをした通りに、陛下に聞かせてみせた。
如何に自分がサーキスタ大迷宮で活躍したか、火の大精霊の力が凄まじいか、そして自分という存在が騎士国家にとってどれだけ有益か。
シューヤ・ニュケルンの話を聞き終えた女王陛下は、満足げに頷いた。
「セピス・ペンドラゴンを、呼べ。奴の相棒とさせる」
「陛下、本気で彼を
王室騎士団長としても名を馳せるヨハネ・マルディーニが目を瞬いた。
予想していなかったわけではない。女王陛下の性格は熟知している。面白い、その考えだけで時折、突飛な行動を起こすことを。嘗て、エレノア・ダリスは、王女時代に、当時は一介の騎士であった現守護騎士と数か月も国を飛び出したことがある。
彼女の考えは、幼少期からエレノアを知る枢機卿であっても読み切れない。
当然、この場にいる3人は全てを知っている。
シューヤ・ニュケルンの中に何がいるのか。
「火の大精霊を身体に宿す者を、身に飼うなど――私は、反対です」
「見事、試練を達成したんだ。固いことを言うな、ヨハネ」
「……しかし」
「結果が全てだ。どんな形であってもな」
今、女王陛下の手の中にあるそれ。
見事、シューヤ・ニュケルンは
「ということだ。シューヤ・ニュケルン。覚悟はいいな?」
エレノア・ダリスは妖美に微笑みながら、忠実な臣下となる少年を見つめ――。
――
「
ここに、誓いが成立。
騎士国家ダリスに、特異な
――ああああああああああああ! 何故、何故だ!
王族関係者しか立ち入りを許されない月下の塔に呼ばれた男。
氷の彫像のように冷たい微笑を張り付かせた優しい一人の王室騎士。町ですれ違えば誰もが振り返る美形、そして騎士国家でも珍しい水色の髪を持つ騎士が、エレノア・ダリスから弟分としてシューヤ・ニュケルンの面倒を見るように勅命を受けた。
セピスは陛下との謁見の場では何も言わなかったが、塔から退出すると同時に、後ろを歩く騎士団長に向かって声を荒げた。
「ということだ、セピス。奴の世話はお前に一任する。一人前に、育て上げろ」
「マルディーニ団長! 何故、私なのですか! 私以外にも適任がいる筈では!」
「王室騎士団の中でもお前が最もシューヤ・ニュケルンと年齢が近い。それに陛下の指名だ。一年以内に奴を一人前に育て上げろ。何だ、その顔は。不満でもあるのか」
「……ありません」
裏切りの王室騎士として、アニメの中で知られた男。
アニメの中で帝国に鞍替えし、カリーナ姫を誘拐しようとした裏切りの王室騎士、セピス・ペンドラゴンは心の中で絶叫した。
――なぜ、私なのか。貧乏くじにも程があるッ! やはり、地位か! 私がペンドラゴン侯爵家の忌み子であるために、このような仕打ちを受けるのか……ッ!
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たまにシューヤ側の話も混ぜていきます。(大半は豚メインとなりそうですが)
※書籍の豚2巻に登場したセピスをどこかで出したかったので満足です。
次から普通に豚視点。
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