384豚 大精霊の活用方法
俺の問いかけをミントちゃんはあっさりと認めた。もうちょっと溜めてくれよとか思わないでもないけど、変な騙し合いがなかったのはありがたい。
「す、スロウ様! どうしてミントさんが公爵様直属の部下だって気付いたんですか!?」
落ち着いてソファに寝ころぶ俺とは対照的なのは、シャーロットだ。
机をバンバンと叩きながら、まだ信じられないって感じだ。
「強いて言うなら……勘かな」
「勘って……」
「シャーロット、身内以外は分からないかもしれないけど、俺の父上はそういう人なんだよ。ミントちゃんみたいな直属の部下をそこら中に潜ませている。まさかデニング公爵と繋がっているなんて考えもしない外見、風貌、地位の人間、あの人はそういう手駒を何人も持っている」
ミントちゃんは、はっきりと言った。
自分が公爵の意向を受けて動いていると言い、サンサらには黙っておくようにというと、すたすたと俺の部屋から出て行った。
どうしてあっさりと認めたのか、そう聞くと彼女は去り際に教えてくれた。
俺とシャーロットの姿を見ていて、気が変わったんだと。詳しいことは何も教えてくれなかったけど、明日からはまた俺の従者候補として振る舞うらしい。
だから俺たちも、変に自分に気を遣わないでほしいと言っていた。サンサにまで自分の正体がばれることを、ミントちゃんは避けたいらしい。
「でもスロウ様、何のためにですか? 公爵様の直属って言ったら、知る人ぞ知るすっごいエリートじゃないですか!?」
「さあ、父上の直属に選ばれる人間だ。その思考回路は俺にも分からないよ。俺もまさかミントちゃんが、自分は公爵様の影だと認めるとは思わなかったし」
父上の直属、それは公爵の考えを遂行するための戦士だ。
嘗ては俺の傍にいた、クラウドやシルバに当たる類のものだ。でも、あの年齢で父上から全幅の信頼を受けるなんて大したもんだよ。
潜在能力じゃクラウドやシルバよりも上なんじゃない?
あいつらは自分のほうが上だって主張するだろうけど。
「確かなのは、ミントちゃんの正体はサンサも知らないってことだ」
「……公爵様は何を考えているんでしょうね」
「さあ。そればっかりは誰も分からない。デニング公爵は、女王陛下や枢機卿に並んでこの国を動かしている天上人だから」
俺がミントちゃんの違和感に気付いた理由。
それは余りにも優秀過ぎたこと。
あれだけの能力を持つ人間が俺の耳に入っていないことは可笑しい。
これでも真っ黒豚公爵時代から、情報収集には余念が無かった。何が起こるか分からない未来、頼れるのは自分だけだったからさ。
「人は見かけによらないって言いますけど……あれは詐欺だと思います。」
「詐欺だよなあ。あの子相当に強いよ。もしかしたら俺以上かも」
「スロウ様よりもですか!?」
「あの子が得意とする領域だったら、って条件だけど。何となく分かるんだ」
「やっぱり詐欺じゃないですか……」
自分よりも小さな子供が、名高いデニング公爵の直属だった事実。
シャーロットはまだその事実が呑み込めないみたいだ。でも、この世はそんなもんだったりする。生まれや育ちをいとも簡単に凌駕する天才っていうのは、いつの時代も存在する。そういう天才をどうやって、手早く自分の陣営に抱え込むかが鍵だ。
そう考えると、今の俺には役に立つ仲間ってのは余りいなかったりするなあ。
「シャーロット。早いけど、こっちも切り札を使おう」
ソファから起き上がり、腰を落ち着ける。
椅子に座って、思案顔のシャーロットがこちらを見た。机の上には、水が並々と注がれたグラス。ミントちゃん、結局一口も飲まなかったな。
そういうところだよ、ミントちゃん。君が父上の関係者だと思った理由は。
「切り札……ですか? そんなの、ありましたっけ」
「何言ってるんだよ、シャーロット。俺たちには、あいつがいる。人は見かけによらないっていうなら、あれが最たるものだろう」
まだピンときていないみたいだけど。
「
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