377豚 衝撃の未来
学園を救った英雄が帰ってきたと言うのに、サンサとの扱いの差はなんだろ。
人徳? それとも評判の違い?
「納得いかないなぁ。なんでサンサがあんな早くに人気者になってるんだよ」
授業中に突然、勝負を挑んできたサンサを圧倒した。
自信満々だったサンサは俺に負けた後、自信が粉々に砕け散って情けない姿になってたのに、どうしてサンサの株が下がらないんだ?
むしろ親近感が涌いたわとか言ってる奴の姿も見たぞ!
サンサは今頃、数十人の生徒に囲まれて楽しいホームパーティをしているらしい。
ぐぬぬ、サンサの奴。魔法学園の生活に興味津々だったから色々聞いてるんだろうな。もしかしたら俺の学園生活に対する噂とかも聞いてるかもしれない。
……なんだか家族に直接知られるって思ったら恥ずかしくなってしまう。それに俺、パーティに招かれるとか記憶にないぞ!?
「あ! スロウ様、零してますから!」
「え? うわ! やっちゃった! メイドさーん、何か拭く物ちょうだい!」
閑散とした夜の食堂でシャーロットとの二人夜ご飯。
だけど俺が食べ物をこぼすなんて、何年振りだ? 急いで二人で机を拭き拭き。使った布はメイドさんに即座に返却。
「スロウ様。サンサ様相手に大人げ無いことしたって聞きましたけど本当ですか?」
「う……それは……」
シャーロットと二人、ご飯を食べるのも随分久しぶりな気が。
2人で他愛もない話をしていると自然と話題は今日、俺がサンサと戦った話に。
シャーロットの耳にあの事件はばっちりと届いていたようだ。
「違うってシャーロット、サンサから俺に喧嘩売ってきたんだよ! 魔法演習の授業で本当はロコモコ先生が相手だったんだけど……あいつが急に俺の相手になるとか言い出して……」
ていうかサンサの魂胆は分かっているよ。
どうせ生徒の前で良い所を見せたかったんだろ?
サンサは完璧な軍人とか、聡明とかのイメージが強いけど、家族である俺はよく知っている。あれは仮面だ。
元々のサンサは
「シャーロットもサンサがどれだけ負けず嫌い知ってるだろ? 今まで俺に勝てなかったから、いい機会だと思ったんだろうさ」
「そりゃあサンサ様の負けず嫌いさは公爵家の中で有名ですから…………」
「あれが出たんだよ。どんな勝算があったのか知らないけどさ、サンサは自分で自爆したってわけ。あ、これうま……俺のほうはそれぐらいだけどのシャーロットは今日、何してたの? あの子と一緒にいたんでしょ?」
俺がサンサと遊んでる間にシャーロットが何をしていたかと言うと、まさかまさかのミントちゃんに、このクルッシュ魔法学園のことを教えていたらしい。
「ミントちゃん、飲み込みは早い方だと思います。今までしたことが無かったって聞きましたけど、掃除とか洗濯のやり方をすぐに理解してくれたので!」
「早くても困るんだけどなあ……」
本当にもう! 敵に塩を送るなんて何を考えているんだ。
いや、シャーロットにとっては敵だよな? ミントちゃんが俺の従者になって困るのは俺だけじゃなくて、シャーロットもだし。え、いや、困るよな?
でもシャーロットは新しい友達が出来て何だか嬉しそうだし。
楽しそうだし、ま、いいか。
夜。
男子寮4階にある俺の部屋はシャーロットが片付けてくれたおかげですっかり奇麗に。慣れ親しんだ我が家、ベッドの中でちょっとだけ考えをめぐらせる。
「サンサの奴。どうやってミントちゃんがシャーロットより俺の従者に相応しいか白黒つけるんだろうな」
一応、明日サンサから直接、説明を受ける予定になっていた。
授業の前に、学園の中心にある噴水の周りに顔を出せって言われているんだ。
サンサはは公爵家の人間として理想に近い生き方をしているから、公爵家の人間に仕える専属従者としての在り方を持っているんだろうけど……それを俺たちに押し付けるのはやめて欲しいところだなあ。
それに他にも一つ気になっていることがある。
俺の従者になるってのがミントちゃんの意思なのかどうかだ。
今日一日、ミントちゃんの姿を学園で何度か見たよ。あの子はもう公爵家の関係者ってことが知られているから、生徒に余所余所しい目で見られていた。
どこか居心地の悪そうなミントちゃんに俺は心が痛んだよ。
これってもしかしてあれじゃない?
サンサからは俺の従者候補なんて言われていたけれど、当の本人は納得していないんじゃないか?
公爵家の専属従者なんてブラックも良い所だからな。
だって、まず長生き出来ない。俺の父上の専属従者なんてもう何人目だ?
今日、シャーロットがミントちゃんから話を聞きだしたところ。
『この国を支える公爵家にお使いできるなんて夢のような話です! 私は全身全霊で若様をお手伝いする限りですから!』
って、お見本のようなような言葉を言っていたらしい。
明日ミントちゃんに会ったらそれとなく真意を確かめてみるか?
……ふわぁ。眠くなってきた寝よう。
朝。サンサに言われた通り、早起きして噴水に向かう。
他の学生に聞かれても困るってことでまだ太陽が上ったばっかりの時刻。サンサの奴、こんな早くに起こすなよ……俺は朝は苦手なんだよ……。
早朝だってのに完璧なメイクをしたサンサが俺を待っていた。そして、簡単にこれからこの学園で何を行うつもりなのか教えてくれた。
「さ、サンサ。今、何て言った?」
……ぼんやりしていた寝起きの頭が覚醒する。
「父上も来る? ここに? はは、あり得ない」
はいはい夢だろ、これ。
だって、この騎士国家で最も忙しい人間と言われている俺の父親。
「シャーロットがお前の従者に相応しいか、相応しくないか。最終的に御父上に判断を下して頂く。私の役目は、御父上が判断するための材料を提供することだ」
夢であって欲しい。頼む、お願いだ。
俺は夢から覚めるために、自分の頬を割と強めに引っ張った。
だけど残念ながら、普通に痛くて涙が出た。
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