264豚 まるで盗人のように
「ぶひっー、ぶっひひっひ!」
肩を揺らしてぶっひぶっひー!
ドタドタと慌ただしい足音がピカピカに磨かれた王城内に鳴り響く。
壮大なスケールで建造され、どこにいても圧倒的な迫力で迫ってくる石の城。南方四大拠点の一つ、光のダリス王室が住まう名高いダリスの不落城。
しっかし、あーくそっ! どんだけ広いんだよこの城は!
俺は連日の稽古で全身筋肉痛! ヒールも筋肉痛には効かず、自分の部屋まで行くのも一苦労だってのに!
「まあっ、噂のデニング卿じゃない。あんなに急いでどうしたのかしらっ」
「ぶひぶひぶひぶひーーーーっ!」
「きゃあ!」
どけどけー! こっちは急いでるんだよ!
品位や振る舞いがどーたら言われてもそんなん知らねーぞ!
王城の中では走る奴なんて滅多にいないので眉を潜める者が多数。それでも、俺には急がなければならない理由があった。
あいつは――たった一人で、この国に残ったのだから。
『ならば褒美をやろう、スロウ・デニング。お前が望むあの平民は本日――この王城に帰還した』
王都に到着してからあいつの音沙汰を全く聞かない。誰に聞いても首を振るばかりで、あのカリーナ姫ですらあいつの行方を知らなかった。
それは明かな情報統制。
女王陛下から王室騎士の打診を受けた直後、あいつが地下牢に閉じ込められているとの不穏な噂を耳にする。しかし、夜中忍び込めば地下牢には誰もいなかった。
あれだけ民を騒がした
「デニング卿?」
「扉を開けろ――!」
「ハ!」
王城に私室があるだけでも異常な待遇なのに、さらに王室の方々と近い場所に給仕付きの一室が与えられた。
王都に帰還したばかりだというのに、明らかな特別扱い。
公爵家の
けれど、構わない。
これぐらいで、あいつが助かるなら安いものだ!
「おい、無事か! ――シルバっ!」
アニメの中で女王陛下はシューヤを救世主に仕立て上げた。
あの方は必要であるならば、平民の命ぐらい容易く葬る残酷な人。例えあいつが強くとも――この国にはあいつよりも強大な存在が何人もいる。
守護騎士ルドルフ・ドルフルーイ、そして光の大精霊なんてその筆頭だ!
奴らが本気になれば――あいつでも抗いきれない。
だから俺は女王陛下の望み通り、王室騎士となる道を選択したんだ。
「――ご飯も与えられなくてガリガリになってないかアああああ!」
白いマントをなびかせて。
優雅さのかけらもなく、俺は給仕が開いてくれた扉の先に飛び込んだ。
煌びやかだけど生活感のないリビング。寝室とは別に客室も存在し、魔法学園での部屋よりも格式高い。そして厳重に施錠されていた筈の室内にはドルフルーイ卿が言う通り、懐かしい誰かの後ろ姿。
だけど、可笑しい。クルッシュ魔法学園を共に救った時のあいつって確か……限界を超えて今にも倒れそうな感じだったのに。
「坊ちゃん――すげーっすね! こんな良い部屋が与えられるなんて! 俺も今日からここに住んで……って、そんなに慌てて何かあったんすか?」
「――あったんだよ、バカ野郎」
俺の想像とは打ってかわり。
クッソ健康そうな
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