237豚 英雄の帰還 前編④
結局、ニュケルン男爵領の隣に位置するグレイトロード子爵領領主の一人息子はあの声を無視する事に決めたのだった。
気の緩みもない、まだ手はしっかりと繋がっている。
「貴様は前しか見ておらん。逃亡者としては浅慮の極みじゃ」
少年が
例え集団の中にいた老人がもう一つの未来。アニメの中で際立つ敵キャラであったとしても
故に
一人の少年を覗いて、
だが今、逃亡者と化した少年は戦闘訓練など魔法学園の授業のみで、
軍属ですらない生徒にその
「しかしカリーナ・リトル・ダリスを城から連れ出してくれた功績に一度だけ
「――――――――え?」
建物の間に生まれた暗い裏路地に数歩入り込んだ時、少年は不吉な言葉に思わず振り帰った。
この国の王女の名、なぜ一般市民がその名をここで自分に伝えるのだ。
振り向った先、人混みの中に一人の老人の姿が見えた。
学園長……?
いや一瞬母校の学園長と見間違えたが、よく見れば違う。別人だ。モロゾフ学園長はあんなに背が高くない。
その姿はまるで隠遁者。世捨て人のような恰好をした老人の姿。手には大樹の幹からそのまま削り出したようなささくれだった長杖が握られている。機能性を排除した、最近ではうんと見られなくなった
人混みの中でも一際浮いているが、誰もその異質な存在に気付いていない。
「急に立ち止まって、どうしたの? この先に貴方が働いているっていうお店があるんしょう?」
「いや、あの」
「これが
そしてビジョンはお姫様の手を握ったまま、老人に言われるがまま空を見上げた。
晴天なのに雲……? それに妙な立体感がある。
だが次の瞬間。少年は雲の中心で煌めく光を見た。
まさに天から落ちる一筋の光。迸る光が真っ逆さまに落ちてくる。
「ねぇ、どうしたの?」
「儂はこれを
「殿下」
まずい。命に関わりそうな雷光が落ちてくる。杖で結界を張る? ダメだ間に合わない。何も思いつかない。少年はもう全てが遅いことを理解した。
やはり、僕は貴方のようにはなれやしない。貴方みたいになりたいと憧れた。堕ちた風の神童、貴方に僕は小さい頃からずっと憧れていた。分かっていたことだけど、この身は貴方の足元にも届かないようだ。
それに慕う
少年は
「お逃げを」
こればかりは仕方がない。運命だ……それに僕には責任がある。
若き
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