201豚 荒野に佇む全属性⑥
重い重い振り被り。
世界樹の種から生まれた英雄の一撃が俺の結界を軽々と引き裂いた。
しかし直後、大きな穴が開かれた結界はすぐさま修復される。再び閉じ込められたギルドマスターは背後にいるアリシアの方へすぐさま振り返った。
眩い光。アリシアの杖に埋め込まれた石が光を光っている。その意味をギルドマスターは即座に看破したようだった。
「この結界を構成する魔力はまさか」
「御察しの通り。この結界を維持している魔力はアリシアが持っている杖から引き出ている。あいつの杖に埋めた宝石に魔力を溜め込んだのは何を隠そうこの俺なんでね」
ギルドマスターはバトルアックスを握る手を弱める。
ふぅ、危ない危ない。まさかたった一撃でこの結界に大穴を開けるとは。うちが誇る最高級のマジックアイテムによって作られた結界だぞこれは。
「解せないな。そうまでして何故一人にくくる。本当にたった一人で勝機があると思っているのか、確かに僕は万全の体調とはいい難いが、それでもかなりの力になれる筈だ」
一理あるとごろか百理さえ感じる。
確かにこの英雄が共にきてくれればぐんと楽になるだろう。傷を負っている今でも実力でいえばロコモコ先生や王室騎士より一回り、いや二周りは上なのだから。
「―――彼女か。アリシア様がそこまで大切なのか」
「その言い方は止めてくれ。語弊がありすぎる。まじで」
「違わないさ。君は彼女を守るためにこの僕に重い足枷を縫い付けた。この結界を破壊すればアリシア様を守る壁が無くなると言いたいわけだろう」
「いいや違うね。そもそもS級冒険者であるアンタはアリシアの傍を離れられない筈だ。各国を自由に往来でき、時には王族並みの待遇が与えられるS級冒険者には相応の重荷が与えらえる。特に自由連邦に所属しているアンタには同盟国であるサーキスタの王族を守る義務がある」
アリシアを守るべき
俺は知っている。
シューヤの傍でおろおろとしているアリシアは、見てる限りはそんな素振りを一切見せないけれど弱い奴だ。
「帝国の三銃士。半人半魔のドライバック。ネメシスのギルドマスターともあろう者なら知ってる筈だ」
アニメ知識が俺の未来と進むべき道を照らしてくれる。
「
何万人もの視聴者が導き出した答えが俺の脳裏に詰まっている。
「人間でありながら、ダンジョンコアを埋め込まれた哀れな人型」
シューヤ・マリオネットはシューヤ・ニュケルンによる世界を救う救世の物語。けれど、見方を変えれば真っ黒豚公爵の悲哀の物語であるように。
「あいつはダンジョンマスターだ」
ドストル帝国三銃士の呪われた英雄として輝かしいリビングデッドの一生は、苦渋に満ちた救いの無い人生に色を変える。
だから、俺は思うんだ。
―――さあ、未来を変えよう。
―――もはやあいつの心は限界だ。
「俺だけが奴のダンジョンコアを破壊出来る。アンタにその
今この瞬間がターニングポイント。
「さて。都合のいいことに、冒険者ギルド南方本部はドラゴン討伐の栄誉を称え、俺を特A級冒険者に任命したんだってな。―――ならば、今ここで俺はネメシスからの贈り物を受け取るとしよう」
人として心、モンスターとしての心。
アニメの中で帝国に利用され続けた三銃士はモンスターとして生きることを選び、ダンジョン都市で暴れた後は人里から姿を消した。
「冒険者ギルドのシステムはよく知らないけれど、多分あれだろ? ギルドがクエストを冒険者に依頼し、冒険者は忠実にクエストを実行するってやつ」
悲哀はいらない。
悲劇もいらない。
強い覚悟を持って、未来に可能性を。
「だったら俺は
俺はモンスターとしての生しか選べなかった男に一つの選択肢を掲示する。
光の大精霊によって守られた騎士国家ダリスの救世主となったシューヤの人生を光とするならば、闇の大精霊によって愛された北方ドストル帝国の脅威であった魔人を駆逐し救世主となった奴の人生は闇一色。
俺がダリスを抜け出しこの地へやってきた理由は―――。
「―――
今―――この時のために。
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