200豚 荒野に佇む全属性⑤
アニメの中でも重要人物。
一国の勢力にも匹敵する冒険者ギルドのカリスマ相手に何やら幼い頃の俺は影響を与えていたようである。
だけど残念、俺は全く覚えていないんだなあこれが。
シャーロットが初めて笑った時のこととか、風の大精霊さんがうちで不気味なポルターガイスト現象を引き起こして遊んでたことはよく覚えてるんだけどさ。
ダンジョンの発生イコール祭りじゃ祭り~みたいな文化がデニング公爵領地にはある。多分、ギルドマスターが見たのはダンジョンで金稼ぎを目論んだ村人が農具片手にダンジョンに入って怪我したのを俺がヒールで癒してた場面だろう。
うちの村人はダンジョンを臨時収入ぐらいに捉えてるからさ、本当に怪我しまくりで困るんだよ。
「……ドラゴンスレイヤー、一つ確認したいことがあるのだが」
「
それよりも俺はムカムカとしてんだよ。
ギルドマスターの優しげな顔は血に汚れ、色気を増している。しかもそのバトルアックス何? すごくかっこいいんだけどずるくない? 主人公は俺の筈なんだけどどうみてもギルドマスターの方が主人公っぽいじゃん。
そういやこの人、アニメの中でも結構な人気者だったな。
自分の身を犠牲にしてユニバースを守った苦労人だから少しは納得出来るけどさ。
冒険者ギルドの中でも職員の間で人気あるみたいだし本当に許せない、ここぞとばかりに株を上げようとするのは止めてくれ! イケメン有罪というやつだ。ええい、俺のファンクラブはまだか!
「もしや君は知っていたのか。帝国三銃士の一人、
「知ってた」
即答である。
もっとも俺の思い描いていた流れとは遥かに異なる結果になったけどね。
「
今回の鍵は闇の大精霊さんすら信じていなかった古の魔王が眠る墓の存在だ。
俺の伝言を半信半疑でギルドマスターに伝えた闇の大精霊さんは冒険者ギルドが何らかのアクション。恐らく全冒険者を荒野のダンジョン地帯から呼び戻したのを見て、すぐさま俺の話が事実であると確信したことだろう。
そしてユニバースに送り込んでいた三銃士と共に古の魔王が眠るダンジョンに、一足先に潜っていた俺たちの後に続こうとしたんだろう。
ん? なんでそんなこと分かるのかって?
闇の大精霊さんの行動を予測するのは実はかなり簡単だ。
何しろ彼女は珍しい物に目がない廃人コレクター気質の女の子。古の魔王の墓があるとすれば何をおいても一番乗りして幻アイテムをゲットしようとするに違いない。
「何も言わないのか? 俺は大人しく隠れていた三銃士を表に誘い出し、ユニバースを戦いに巻き込んだ確信犯だぜ?」
けれど闇の大精霊さんを苛立たせる要因が一つ発生する。
冒険者ギルドもまた冒険者達をダンジョンに送り込もうとした筈だ。
「確かに巻き込まれたが……大方の予想はつく」
そんな冒険者ギルドの行動をあの唯我独尊、自分が一番偉いと思ってる闇の大精霊さんが見過ごすわけがない。
彼女は冒険者達を脅して、ユニバースから一人たりとも荒野に行かせないよう三銃士と共に妨害する筈だ。
「反逆ギルドの構成員が帝都にある闇の大精霊の自室から何かを盗み出し、このユニバースに持ち込んでいたことは周知の事実。さらに闇の大精霊が奪還のために息の掛かった者をユニバースに派遣していたことにも知っていた。だが、反逆ギルドと帝国の潰し合いに冒険者ギルドが関与することはありえない」
「
「もっとも、帝国からの刺客が三銃士程の大物だと知れば対応は異なっていただろうが―――」
俺の予想は大方当たっていたように思う、荒野には本来いるべき冒険者の姿が全く見当たらないからな。
「―――
けれど、そんな俺の読みが外れたのはシューヤの予想外の行動だ。
強き者と闇の大精霊さんを敵対視する火の大精霊さんの暴走が何よりも余計だった。
あいつがいなければ、三銃士と俺は無人の荒野で対面を果たし、ユニバースに与える被害も最小限に抑えられると思ってたんだ。
……おい、主人公パーティ! ほんとに余計なことをしてくれたな! お前らと関わるのはもっと後だって決めてたんだぞ!
「しかし、ユニバースに直接的な被害を出すことは避けられた。ドラゴンスレイヤー、君が古の魔王の所在を告げ荒野から全ての冒険者を追い出すよう仕向けたからだ」
「
「―――だがそれも、今のところはという条件付き。いつ
「へぇ、そこまで理解してるなら話は早いね。モンスターの矛先が都市に向かう前に俺はあっちに戻るよ。厄介な三銃士さんに出来るだけ早く北方に帰ってもらわないといけないからね」
「相手は三銃士の中でも自分の力すら制御できていない
その口ぶりからは多少の呆れと高揚がみてとれた。
「勝機があるのなら、いいや例え勝ち目が無くとも―――ドラゴンスレイヤー、君と共に行こう」
「え、ほんとに? 手伝ってくれんの?」
「ユニバースの存亡に関わる問題だ。当り前だろう」
ギルドマスターはえいやっとバトルアックスを持ち上げ、アリシアが水の魔法で虐めているモンスター達にその先端を向ける。
何とも頼りになる男である。
それにこの物分かりの良さ。チョロインと言ってもいいぐらいだ。人が良すぎていつかでっかい詐欺とかに合わないか心配になってくるぞ?
「じゃあここで元気が有り余ってるみたいの
「
「―――お守りよろしく」
俺の言葉の意味が分からなかったのか、バトルアックス片手に固まるギルドマスター。もしカメラがあれば、パシャりと一枚撮りたいぐらいのレア顔で、もっとこの勇気ある冒険者と喋りたくも思ったけれど―――時間切れだ。
「
楽しい雑談はこれでお終い。
夥しい闇の精霊があちら側の危機を伝えてくれる。ほんと感謝しなきゃな。闇の大精霊さんが奴らを抑えてくれなかったらシューヤをここまで運ぶことすら出来なかったんだから。
俺は無詠唱で荒ぶる風の結界を目の前に構築する。ギルドマスターですらその場を動くこと敵わぬ早さで世界はモンスター蠢くこちら側とあちら側に二分された。
「
「素直に嬉しいよギルドマスター。俺の考えをそこまで正確に読み取れたなんて、冒険者ギルドのトップに登り詰めたのも納得だ。だからその気持ちだけありがたく受け取っておく、
「ッ!」
結界の向こう側で、ギルドマスターは俺が作り上げた結界に向けてバトルアックスを力一杯振りかぶった。
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