182豚 アニメ版主人公の大きな秘密

 ダンジョンの上層と下層の分け目。 

 半球状にぽっかりと開かれた空間の中心地で、一人の少年が上を見つめていた。

 左手で強力無比な小さな結界を維持しながら、地上にいるだろう者達を見つめていた。

 それでは、徐々に衆目に晒していこう。

 アニメ版主人公であるシューヤ・ニュケルンの大きな秘密を解き明かすことで、少年の始まりの旅は終わりに向かう。

 

「なぁシューヤ。今、お前は不思議に思ってるんだろうな」


 風の神童は帰還する。

 彼の旅は、傷ついた二人と共にダリスへの帰還を遂げることで終わりを迎える。

 だがシューヤ・ニュケルンが覚醒を遂げたことで、少しばかり困った事態になってしまった。


「何故、自分が死なないか。どうして自分があり得ないぐらい打たれ強いか。例え火の大精霊さんがお前を操っていると言ったってその打たれ強さは異常だよ。というかただの学生が三銃士とやり合ってまだ生きてるとかあり得ないって」


 できる事ならば今すぐにシューヤ・ニュケルンを強引にでもダリスに連れ帰らないといけなかった。アニメの中で自分の過去を思い出したシューヤ・ニュケルンが何をしたか、彼はよく知っていた。


「でも―――気付いちまったら仕方ない」


 閉ざされた空に向かい伸ばされた右腕から一筋の血が滴り落ち、消失する。

 何が起きているのか、彼だけは事態を正確に把握していた。


「戦闘狂である火の大精霊さんが何の見返りも無くただの人間を使徒にするか? 答えはノーだ。従順な戦闘人形を求める火の大精霊さんが使徒に何を求めるのか? そんなの歴史が証明している。さてと―――」 

 

 最速の世界平和は未だ達成せず、けれど終わりに相応しい相手がそこにいる。

 シューヤ・ニュケルンを敵と認めた三銃士を少なくとも打ち倒さなければ、彼らを助けることすら出来やしない。

 ここは荒野の地下、暗いダンジョンの道中なりて。


「―――捉えたぜ、火の大精霊エルドレッド

 

 大量の血を精霊に吸わせている全属性の魔法使いに気付く者は未だ一人もおらず。

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