242豚 英雄の帰還 後編②
シャーロットと呑気な会話を交わしながらも、脳内では現状を正しく認識するために頭をフル回転。
俺の武器。
未来予測とも言うべきアニメ知識を思い出しながら、何故この状況が起きたのか思考する。
まず、
アニメの中ではシューヤの敵として描かれていたキャラクターだ。
そんな二人が何故示し合わせているかのようにこの場にいるのかは正直、分からない。
だけど、推測することは出来る。
今もちらちらと
猟犬は雇われている側で雷魔法は雇用主。さらに猟犬はどちらかといえば一人で戦うタイプじゃない。
「……豚のスロウ、あの子は」
「あぁ、分かってるよ」
店の奥、外からは見えないよう置かれた俺たちのテーブル。
でっかい豚の丸焼きが置かれた間抜けな絵面だろう一席に座っていたアリシアがようやく硬直状態から抜け出して、小さな言葉を口にした。
それにしてもまだ外から聞こえる騒ぎ声……まだ何かの戦闘が続いてんのか。
猟犬のあの表情。信じられない、やり切ったって顔を見るに……外の戦闘は、彼女を捕らえるための戦いの余波か。
「私は、悪いけど」
「それも分かってる。同盟国とはいえ、他国の王族であるお前が動いて何かことになれば面倒。これはこの国の問題だ」
「……貴方もよく考えて動きなさい。どうせすぐに
「だろうな」
今もまだ雷魔法はしっかりと彼女の肩を掴み、興奮した様子で何かを喚いている。
カリーナ姫は嫌悪感を剥き出しにしてその手を振り払おうともがくが、びくともしない。まさに囚われの姫と言う言葉がぴったりって状況だ。
「あの……それってどういう意味」
「シャーロット、そういえばさっきあの女の子を高貴だと言っていたね」
光の精霊が騒いでいる。
この状況は彼らにしても予想外なことらしい。
だけど、まだだ。
まだ状況理解が足りない、直情的には動けない。何故なら囚われの姫はこの国のお姫様。
……この状況を作ったのは恐らく光の大精霊。
精霊の言葉を使って俺を店内に留めさせるなんて、あいつにしか出来ない芸当だ。俺と彼女を劇的に再会させる大精霊さんの企み――目的は何となくだけど想像がつく。
「あの子はカリーナ・リトル・ダリスだ」
それ以上の説明はいらなかった。
シャーロットが息を呑み、アリシアがゆっくりと頷いた。
アリシアの顔にはもう、首尾よく俺を王室に突き出して懸賞金を頂こうなんて俗さは浮かんでいない。
「豚のスロウ……分かってると思いますけど、これ、とんでもなく悪い状況よ。中途半端に動いて、あの子に何かあれば――」
「それも分かっ……」
その時。
クルッシュ魔法学園で出来た、初めての友達。
猟犬に床に押し倒され、汚い言葉で喚いていた貧乏っちゃまが――こちらを見た。
男子寮の一階に引っ越したあいつの身体は、金縛りに合ったかのように強張り。
口の動きが、ゆっくり ”シャーロット、さん……?” と動いたことだけ、俺は理解出来た。
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