131豚 火焔の戦い【VS A級冒険者】⑥

 オークの里に訪れるモンスターは日を追うごとに増え、彼らは一様にして己を目を疑うのだった。

 種族の異なるモンスターが一箇所に固まり生活を共にするなどありえない。

 北方、南方の区別に関わらず、モンスターの村というものは等しく同種族のモンスターで構成されていることが当たり前なのだ。

 しかし、皇国に誕生したオークの里に居ついたのはオークだけではなかった。


「ぶ”ひ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”””!!!」

「アハハハハッ! 良いわよ、とってもいい感じよオークキングッ! 火照ってくるわッ! 私の命と貴方の命が混ざり合うッ!! 久しぶりに生きているって感じがするわッ!! さあそれで終わりじゃないでしょうッ!? 加速するわよッ! 死にたくなくば私の踊りに着いてきなさいオークキングッッッ!?」


 E級モンスターであるゴブリンも、C級モンスターであるゴーレムも、最近ではB級モンスターの雪女やワイバーン、さらにはA級モンスターである逸れ者のデュラハンまでもがオークの里に居つくようになっていた。

 北方の環境より遥かに安全であるために生まれた奇跡だった。 

 オークの里で毎日繰り広げられるどんちゃん騒ぎは北方には無い楽しさに満ち溢れていた。

 生きる楽しさを彼らは知ったのだ。


「ぶ”っっひ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”””!!!」


 冗談偽り無く、皇国に生まれたオークの里は奇跡以外の何物でもなかった。


「どちらが倒れるまで終わらないッ! 天秤の上に己が命を乗せ、踊り合うッ!! 私が生み出すは焔の舞台ッ! さあ、まだまだ行くわよオークキングッッッ!! 天秤の上で勝者と敗者が生まれるのは当たり前ッ! そして私はこれまで勝ち続けてきたからここにいるのよッ! 理解したかしらオークキングッ!! 勝たねば生き残れないッ! これ程単純な話があるかしら! アハハハハッッ! モンスターにとっての真理でしょッッッ!?」


 炎猛る舞台の上で。

 火の粉舞い散る世界の中で、一人の人間と一体のモンスターが戦っていた。

 だが、一方的な戦いだった。

 勝ち目のある筈も無い戦いだった。

 特A級に迫ろうかというA級冒険者セカンドランナー、彼は単騎で幾多のA級に指定されるモンスターを屠ってきた猛者である。

 対するのはB級に指定されるモンスター、オークキング。

 勝ち目などあるはずも無かった。


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