125豚 さあ燃える舞台の幕を上げよう④
「サキュバスなんて皆嫌味な奴だと思ってたのにシャーロットは全然違うのよ。もうね、びっくりだわ。スローブ、貴方シャーロット以外のサキュバスに出会ったことはあるかしら? え? ない? まあ仕方ないわね。サキュバスは北方にいるモンスターだから……。ええと、それでね。サキュバスってのは本当に嫌なモンスターなのよ。どれぐらい嫌な奴等かって言うと」
エアリスの口から語られる内容は怒涛のサキュバス下げだった。
「あいつらは可憐なピクシーを目の敵にしてるのよ。だから私が住んでた
淀みの無い口ぶりでサキュバスをディスる。
ああ、そういえばピクシーはお喋りが好きってモンスター大全にも書いてあったな。
つまりエアリスは、シャーロットがサキュバスなのに嫌味じゃなくて良い子なのはあり得ない! 一体、どういうことなのよ! って言いたいらしい。
ごめんなさい!
シャーロットは人間です!
「―――あいつらはほんとに―――それにとんでもない服を着てるのよ。……服じゃないわ。あれは紐よ紐。スローブ、聞いてる? あいつらは紐が服なのよ―――それでね―――」
サキュバスとピクシーは滅茶苦茶仲が悪いのが当たり前。
だけど突然現れたサキュバスはそんなピクシーの常識を覆してしまった。
なるほど。
どうやらエアリスは話の分かるシャーロットのことがお気に入りになってしまったらしい。
「シャーロットは本当に私の愚痴を聞いてくれるのよ。あんまり真剣に聞いてくれるからつい他のモンスターには言えないような悩みを言ったこともあるわ。で、最近思いだしちゃったのよ。シャーロットと言えば皇国の
いやまあ、
そしてエアリスが気に入ってしまったサキュバスちゃんがその
けれど、そのことは秘密だ。
シャーロットもデスボイスキャットもリアルオークの俺もその事実が明らかになることを望まない。
だから俺はお口をチャックして、エアリスが語るサキュバスディスりをひたすら聞き続けた。
それにしてもエアリスとシャーロットはほんとに仲がよくなったんだなー。エアリスの口から語られるシャーロットとのほっこりエピソードの数々に何だか俺もほっこりしてしまったぞ。
「スローブ~~、またヒールを掛けて欲しいんじゃぶひ~。孫が作った泥団子あげるから掛けて欲しいんじゃぶひ~」
「グォオオォオオオオオオオオオオ。ヒールはよぉぉぉぉグォオオオオ」
俺を見つけてゾンビのようにわらわらと集まってくるオークの爺さん達。
最近は大したことがなくてもオークの爺さん達はヒールを求めてくるようになったのだ。
ったく、ヒールは高いんだぞ?
人間世界では質の悪いヒールでも一回一万ヱンぐらいするんだぞ?
「あら。やっぱりスローブはオークの里のお医者さんなのね。……それにしてもブヒータは帰ってくるのが遅いわね、どこに行ったのかしら。そんなに遠くには行ってないでしょうから私が呼んでくるわ―――」
● ● ●
舞台は整い、賽は投げられた。
さあ、燃える舞台の幕を上げよう。
相手は魔法使いじゃないけれど、火の大精霊が力が篭めし魔剣を所有するアニメ版主人公の頼れる味方だ。
アニメの中では
火の魔人となりて救世主へと至るシューヤ程の激情は無いけれど、それでも彼は世界を救ったパーティの一員だ。
さあ、炎波が吹き抜ける舞台に向かって歩き出そう。
火傷しそうな熱を前にして思わず水を掛けたくなるけれど、
そんなものでは届かない。
恐らく自由連邦で戦うことになるだろう帝国の最高戦力。
たった一人で南方の大国、自由連邦が誇るダンジョン都市を壊滅させた
英雄を打ち倒すには、理を超えた力が必要だ。
故に火には火を持って打ち倒す。
それでは、涼しい顔を気取りながらも握る拳に力を入れて会いに行こう。
火の大精霊が力籠められし
相手にとって不足は無い。
むしろ一つの属性に特化した相手は彼が望む戦いの前哨戦に最適だ。
ついでに、重要な二人の観客に己が力を見せつけてあげよう。
すぐそこまで迫っている
二人の心に、刻み込む一撃を。
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