126豚 火焔の戦い【VS A級冒険者】①

 オークの里に辿り着いたゼロメガブータはブヒータに伝えた。

 友達とオークの里を抜け出して森の中の泉を見に行ったら、可笑しな人間がいて自分以外の友達が捕まったと。

 そしてその人間から、友達を解放して欲しかったらオークキングだけを泉に連れてくるように言われたと。


「…………」


 ブヒータは誰にも気付かれないようにオークの里を抜け、森の中を全速力で駆け抜け泉までやってきた。

 スローブが言っていたように、飲み水として使っていた泉は大分綺麗になっていた。

 やっぱりスローブはすごい。

 こんなにでっかい泉を浄化出来るなんて只者じゃない。


「ぶひィ。あの人間が……」


 緑に囲まれた湖畔のほとりに人間がいた。

 ぼさぼさ髪の半裸の大男が大剣を左肩にかけて、こちらを見ていた。

 どこか野性味のある男の姿を見てブヒータは固まった。

 左手首に付けられた腕輪の色、そして身に着けている指輪の数々やイヤリングに釘付けになった。

 あれは魔道具マジックアイテムだ。

 それもとっても力のある魔道具マジックアイテムだ。

 ダリスを旅している最中、野営をする冒険者達の話をこっそりと聞いて「なるほどぶひ~」と唸っていたブヒータは知っていだ。

 魔道具マジックアイテムはとっても高価、よっぽど凄腕の冒険者じゃないと手に入れられない貴重品なのだ。 


 あの冒険者はぼんやりと輝く装飾品マジックアイテムを5つも身につけていた。


「…………」


 半裸の冒険者は子供オーク達を解放し、ブヒータに最後の別れの時間をあげるわよ~と告げた。

 そして鍛え抜かれた肩に大剣を担いだまま、オークキングの行動をつぶさに観察していた。時には欠伸もしていた。

 余裕の現れだった。

 そしてもう、ブヒータは理解した。

 ……ああ、おいらはきっと勝てないぶひィ、って。

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