第8話

 俺は理奈さんを部屋に上げて、パソコンから黒い布を取って、スリープモードを解除した。

「そこのコタツに入ってていいよ」

「はい、お心遣いありがとうございます。ここで弘樹さんの作品が生まれていったんですね」

「そんな大げさな、どこにでもいる普通の高校生の部屋だよ」

 たぶん普通、と心の中で思いつつ、パソコンにUSBを指してテキストファイルといくつかのキャラが描かれた3面図などの仕様書を軽く見た。

「これは後で読んでおくね。冷蔵庫にウーロン茶が入ってるけど、飲むかい?」

 さすがに喫茶店で食べたばかりで、また飲ませるのも不味い気がしたが、何も出さないわけにもいかないので形だけでも飲み物を出すことにした。

「ありがとうございます。あ、スカイプのアドレス今打ち込んでおきますね」

 そういって理奈さんは俺に代って、椅子に座りパソコンでスカイプのアドレスを入力してコンタクト申請をした。

 コンタクト申請とはいわゆるフレンド登録の様なもので相手が承認してくれれば、そのままチャットも通話も出来るようにもなる。承認しなくても出来るが、相手が今オンラインかオフラインかが解らないので、承認はできればした方が良い。

「これで大丈夫ですよ、それじゃあ飲み物いただきますね」

 そういって理奈さんが立ち上がり、俺の横を歩いた時に髪から良い匂いがした。

 何かの香水かな?日野さんが使ってるのとは違う匂いだった。

 胸も彰美や日野さんよりも大きな気がして、つい意識してしまった。

 異性を部屋に上げる意味が今更解った気がした。

 そう思いながら、少しだけドキッとした。

 あんまり彼女といると心臓に悪そうだし、飲んだら帰ってもらうことにした。

「渡されたデータの指定ページ数をみたけど、24ページでいいのかい?」

 紙コップに注がれたウーロン茶を一杯飲んだ後で、理奈さんはその質問に答えた。

「あくまでこちらの指定したページなので、コマの都合上どうしても増えそうでしたら2、3ページは増えても大丈夫です。その分の印刷費は私で持ちます」

「それはできないよ、印刷費は俺からも出すし、せめて半分は出して欲しい」

「弘樹さんがそういうのでしたらそうしますね。部数は300部出そうと思います」

 その部数は高校生にはかなり重い印刷費だった。

「心配しなくても前回の売り上げがあるので、そこから出せば大丈夫です」

 理奈さんのサークルはどうやら景気が良いようにも見える。

「私の知っている印刷所で良心的な価格の場所があります」

 そういって彼女は1枚の用紙を出した。

 地元の印刷所で300部を3万円で引き受けてくれる価格が書いてあった。

「わかった、事前に印刷費は渡しておくよ」

 そういって俺は彼女に1万5千円を財布から出して渡した。

「そ、そんなまだ早いですよ。まだ完成してもいないのに、イベントまでまだ1か月もあるんですよ?」

 俺には自信があった、原稿を間に合わせる自信が今までの経験からあった。

「必ず完成すると約束するよ。24ページなら1か月あれば十分だから」

「弘樹さん…」

 理奈さんは俺の渡したお金を貰って、立ち上がった。

「わかりました。私に出来ることならお手伝いしますから、連絡はこまめにお願いしますね」

 そういって帰ろうとしたときに理奈さんはバランスを崩した。

「危ない!」

 俺は彼女の体を押さえて転倒を防いだ。

「きゃあ!ちょ、ちょっと弘樹さん!」

 両手に柔らかい感触と髪から良い匂いがした。

「どこ触ってるんですか!もう立てますから離してください!」

 どうやら胸を触っていたようだ。

「あっ、すまない。すぐに離す、暴れないでくれ」

 そういって、結局俺を下敷きに理奈さんは倒れてしまった。

「あ、大丈夫ですか?あ!」

 2人で転んでしまって、体勢が体勢だけに顔が近かった。

 このまま口づけになりそうな距離で吐息が口に入るほどだった。

「ごめん、動けそうにないから、起き上がってくれるかな?」

「は、はいっ!」

 体を離して、2人ともしゃがみ込んだまま顔をそらしていた。

「そろそろ帰った方が良いよ。夕方だから電車まだ空いてるし」

 この空気が気まずいので俺は帰るようにそれとなく言った。

「そ、そうですね。それじゃあ、私帰りますね」

 ドアを開けて見送るつもりが、早足で彼女はドアを開けて帰っていった。

 開いたままのドアから彰美が入ってきた。

「弘樹、今の人誰なの?顔赤くしてたけど、どういうことか、ちょっと説明してよ」

 彰美はなんだか機嫌が悪そうだった。

 俺はどう説明するよりも、胸がドキドキしていて少し疲れが出た。

「寒いからとりあえずドア締めてくれ、彰美。事情はちゃんと話す」

 最近色々なことがありすぎて、俺は本当に疲れるなと思った。


 ※


 俺は再びウーロン茶を紙コップに注いで、下の本屋で赤本を買ってついでに俺の家に寄った彰美に渡した。

 そして今日起きたことをアクシデントのことは省いて、説明した。

「ふ~~~~ん」

 彰美はなんだが納得がいかない顔だった。

「それだけであんな恥ずかしそうな顔するんだ?何か隠してるでしょ?」

「何も隠してないよ?」

「なんで疑問形なのよ?あんたがそういう時は隠しごとしてるんだからね!」

 俺は話題を変えることにした。

「それより模試とか受験勉強はどうなんだよ?そっちの方が忙しいんだし、俺の事は気にしなくてもいいじゃないか」

「あれなら結果出たわよ、A判定だったわ。それよりも理奈さんだっけ?あの人が言ってたイベントの日っていつなの?」

 彰美がA判定なのはさすがとしても、何でイベントの日まで聞きたがるのか?

「まさか行くのか?」

「あたりまえよ、あんたとどういう関係か聞きだすからね」

「別に彰美が思っているような関係じゃないよ。ただの創作仲間だよ」

「いいからイベントの日を教えなさいよ、あと場所ね。言っとくけど今後もあの人と会うなら私にも連絡入れなさいよ、いいわね?」

 なんで彰美に連絡を、と思いながら理由を聞くことにする。

 彰美は小声で何かをぼそぼそと言って聞き取れなかった。

「だって、昔から、あんたが…だからに…ってるでしょ」

 聞き取なかったのでもう1度聞くことにしたが、彰美はそれを頑なに断る感じで、結局理由が聞けずじまいだった。

 とりあえずコミケに行くなら、客は客でもあるので、日時と場所を教えることにした。

「それと理奈さんは今後も家に来る訳でもないし、他の日とかたぶん来ないと思うぞ」

「それでも来た時はいる間に電話しなさい、いいわね?」

 なんだか面倒なことになった。

「俺のことより、今日買った赤本はやっとけよ。大学の事が重要なんだからさ」

「あんただって今そのことで悩んでるでしょ?」

 言われたくないことを彰美に言われた。

「あの人の言うとおりにして、それが良いと思うの?美大を蹴ることになるかもしれないんだよ?そんなのあり得ないよ?あんたらしくないもの」

 俺らしくないってなんなんだろう?

「でも、将来どうなるか解らないじゃないか?選択肢は多い方が良いし、漫画にだってまだ可能性があると思うんだ」

 彰美は静かになり、間をおいて心配そうこう言った。

「たった一つの間違いで人生って悪い方に大きく変わっちゃうんだよ。そうなるかもしれないのが漫画なのになんでわからないの?あんたには絵が似合ってるし、大成するんだから、美術の大学の先生達を信じて進めばいいじゃない」

 確かにリスクはあるのかもしれないが、まだ俺は他の可能性に、自分の将来を決める選択肢を増やすために足掻いてみたかった。

「悪いけど、それでも俺は残されたものが絵以外にあるなら、それを信じてその可能性に賭けてみたい」

「本気なの?絶対に無駄な時間だと思うわ」

「解ってるだろ?昔から俺の性格のこういうところはさ」

 彰美はため息をついて、立ち上がった。

「そうだね、こういう変に頑固というか意地っ張りなところあったわね。最近大人しめだからうっかり忘れてたわ。あんたのそういうガキっぽいところ」

「ガキで悪かったな。でも、俺はやるだけやるからな。さ、帰ってくれ、原稿やらなくちゃいけないからな」

 そういって俺は彰美を家から追い出して、ドアを閉めて作業をすることにした。

 パソコンのスリープモードを解除して、俺は理奈さんに渡されたUSBのデータをコピーして、デスクトップの中で内容を確認した。

 まず話はラブコメのジャンルでそれぞれのキャラの感情や表情の指定まで細かく書かれていて、構成もしっかりとまとまっているし、伏線や盛り上がり所もちゃんとあった。

 なによりも高く評価出来る点は、これが24ページという短い話なのにも関わらず、内容が面白い事だ。

 俺はこの話を漫画にしたいと思えるようになってきたし、早速絵描きソフトのクリスタを起動して、原稿を描くことにした。

 絶対に締め切りまでには描き上げる。

 そういう気持ちだけが強く残っていて、集中しては休憩を挟みつつ、作業を続けた。

 確かに彰美の言う通りかもしれない、だけど漫画は描きたかった。

 たとえそれがこの世に何の影響もなく、何1つ変えることのない作品だったとしても、太陽が昇っては沈み、犯罪も後を絶たず、高齢化社会は続いても、俺は今漫画を描きたい気持ちで溢れていた。

 彼女、林原理奈の作った話と俺の創作意欲をかき立てる彼女の言葉によって、俺は昔の初コミケの原稿を描いていたころのように新鮮な気持ちで創作作業をしていた。


 ※


 冬休みが終わり、残り2か月で卒業する高校生活が始まった。

 あれから2日間ほどしか経っていないが、原稿は事前に話を考えているためか、思ったより楽に進んだ。

 打ち込むあまり睡眠時間を削ってしまい、ガイダンス中は内容もあまり聞き取れず、下校の時間になり、家に着いたらうっかり寝てしまい、スケジュール管理がこの日だけズレた。

 しばらくは家に帰っては漫画を描き、スカイプで理奈さんに進行状況を説明する日々が続いていた。

 ある日のことだった。

 朝に学校で大西たちと一緒に帰る約束をすることになった。

「青井さー、最近付き合い悪いじゃん。俺らの事嫌いなわけ?」

 大西がそんな事を言ったので、仕方なしに付き合うことにした。 

 林田と唐沢に神山も一緒で、この日は学校が終わったらゲームセンターにいくことになっていたが、ゲームセンターにいけば大西たちのことだ、遅くまで遊ぶだろう。

 それでは原稿の進行に遅れがでるし、何より理奈さんを裏切る気もした。

 そんなことを思いながら、冬休み明けの授業を受けて、昼休みになった。

 学食で食べるかと思い、教室を出ようとすると大西たちが近づき、少し話さないかとそのまま俺を含めて5人で学食へ行った。

「お前って冬休み始まってから、ずっと家にまっすぐ帰ってるよな。他の奴と同じで受験勉強してるわけでもないだろ?俺ら4人とも推薦で受かってるんだしさ」

 林田がそんなことを言って、大西もその通りだと便乗する。

 神山も林田と大西の後にこう言った。

「何かあるなら僕たちに言ってもいいんじゃないかな?付き合うよ」

 唐沢は黙ったままだ。

 俺は4人に納得するには、どう説明するべきか悩んでいた。

 この4人には俺が昔から絵を描いていて、漫画を描いていることも知らないし、教えてもいない。

 中学時代の同級生はほとんどが別の高校に行き。先輩や後輩はここの高校に通ってこそいるが、俺の事は今まで話題にもされなかったし、俺自身学校では大人しくしていたせいもあり、絵や漫画の事は先生しか知らない状況だった。

「いや特に何かあったわけじゃないけどさ」

 そう言って俺は言葉を濁した。

「だけどよ、青井ー。学校始まって1週間も経つのに俺らとは学校以外付き合い無しは正直寂しいぜ」

 大西がそんな事を言った時に、唐沢が初めて口を開いた。

「大西きっとアレだよ、内緒で出来たんだよ」

 神山がそれに反応する。

「えっ?まさか、でも青井君そういう話とか特にないよ。それにみんなも一応受験中なんだしさ」

 林田も何故か納得して続けてこう言った。

「なーるほど、内緒でコソコソそながら受験のシーズンまでバレなかったが、あと2か月もないから最後の思い出を作ろうとそういう事か」

 大西もそれを聞いて、納得していた。

 4人とも俺が解らないまま、勝手に納得している。

 アレとはなんだろう?しかし、さっきまであった問い詰めや少し気まずい雰囲気も和らいだので、俺は大人しく学食のカレーライスを食べた。

「そういうことなら青井には悪いけど、俺らの出る幕はないよな。何言われるかわかったもんじゃないし」

 林田がそう言いながら、大西をみる。

「まあ、林田の言うとおりに今日は青井抜きで遊ぶことにすっか。俺としてもめでたい話ではあるしな」

 大西にとって何がめでたいのかわからなかったが、納得はしてくれたようだ。

 神山が俺に質問した。

「青井君よければ相手を教えてくれないかな?内緒にするしさ」

 唐沢も続けて言う。

「そうだな、もし俺らがその相手に想いを伝える時にお前が先にしてたんじゃ笑い話だしな」

「おっ、お前もいるのか?そういう話ってそういや今までしたことねーなー」

 大西がそんな事をいった。

「言ってもいいと思うぞ。俺らと3年近く付き合ってるんだし、いいじゃねえか、なぁ?」

 何の話か分からないが、誤解をうけていることは確かだった。

「もしかして彼女じゃないかな?ほら、幼馴染みだし、隣のクラスにいるけど家は近いとかって話もあったしさ」

 神山がみんなにそう言って、3人はそれを聞いて勝手に盛り上がった。

「あー、確かに人気はそれなりにあるよな、美島ってさ」

 林田が彰美の名前を出してきた。

 俺がそこで言葉を出す。

「なんであいつの名前が出るんだ?それに何の話をしてるんだよ、言っとくけどお前ら勘違いしてるからな」

 そういって、食べ終わったカレーライスの食器をカウンターの食器置き場に置いて食堂を出た。

「放課後に聞くからな。お前と付き合ってる彼女のこと」

 大西がそう言って、4人は俺の事を忘れつつも食堂で話を続けていた。

「案外隣の女子高のことかじゃね?あそこの女子ってレベル高いって話だしさ」

 林田のそんな言葉を最後に声は遠くなり、俺は教室に行く階段を上った。

 午後の授業を真面目に受けて、放課後のホームルームに桃香先生に呼ばれた。

 大西たちには桃香先生に呼ばれたし、また今度なっと言って先に帰らせた。

 進路相談室に行くように言われ、俺はそこで先生と対面した状態でいくつかの話をした。

 それは昨日の美大の話が受験だったことと、合格したこと、そして今俺が迷っているという事への先生の意見ともいうべき話だった。

「あんたなんで迷っているの?言っとくけど学費も免除されるし、寮生活もできるし画家としてやっていけると芸術大学の川上先生も言っているのよ?」

 桃香先生はそういうことを真剣な表情で言った。

 俺は迷う理由を言うべきかどうか悩んでいたが、桃香先生は続けてこう言った。

「確かに地元にある普通の大学も合格しているけど、そこには画家という選択肢ははっきり言って今後薄い可能性どころかほぼ無いと言ってもいいのよ?あなたは画家を諦めて他のやりたいことを4年間で見つけられるの?私はそこが心配よ」

 俺はただ黙って聞いていたが、桃香先生は1枚のチケットを見せた。

「先生これは?」

「埼玉の近くで美術展があってね。あなたに渡そうかと思って、先生が調べてチケットを予約したの。東京芸術大学に行って画家を目指すならあげるわ」

 そういって、先生は机にチケットを置いた。

 その良心に心が痛んだ。

 先生に言うべきかどうか迷ったが、言うことにした。

「先生、言おうかどうか迷っていたんですが、実は俺他にもやりたいことがあって…」

「あんたが何年もやり続けた絵を捨てるほどのやりたいことって何?」

 俺は今までの事を話すことにした。

 話をすべて聞いた後の桃香先生は納得して、こう言った。

「それでどちらかに行っても後悔が無いとあんた自身が納得できるならそうしなさい。なんだかんだ言っても、選んで納得するのはあんた自身なんだからね」

 桃香先生はそれを言った後に、机の上に置いたチケットを鞄にしまった。

「そんな理由ならこの美術展に行くことはないかもしれないわね。1月28日から30日に行われるけど、あんたは原稿を描いているわけだからね」

「はい、せっかく予約までして買ったのにすいません」

「謝らなくていいわ。あんたがそのコミケとか漫画とかに真剣で、大学に行ってもそれを続けて、大学卒業までに自分の進むべき進路を見つけられると約束できるなら、こんなチケットなんて安い買い物よ」

「桃香先生…」

「惚れるなよ?これでも何人かの男に言い寄られる良い女なんだからな、私はさ」

 それまでの真剣な空気がその一言で緩んだ気がした。

「ただし、人生何が起こるかはわからない。大学に行って公務員になる奴もいるし、資格勉強もするかもしれない。もし漫画に行くんなら、そういう保険も考えて、勉強しろよ。思った以上に厳しい世界だし、絵の世界みたいにあんたを評価する人なんて今後現れないかもしれない厳しい道だよ?」

 桃香先生のいうことは事実だった。

 絵とは違って、そういう覚悟もしなければならない。

 もしかしたら、思っていたものと違う仕事に就くことだってあり得るのだ。

「怖くなったなら大人しくあたしみたいに公務員になるのも一つの人生だよ。案外この生活はこれで楽しい物なんだ。進路の一つとして大学に行った後で考えときな。4年資格勉強すりゃ、あんたもいつかそう遠くない日に、教育実習生としてあたしの学校に来ると思うと感慨深いけどさ」

「そういう進路も考えてはおきます。けれど今は漫画を第一に頑張ることにします」

 桃香先生は立ち上がり、ドアを開けた。

「それなら今日は帰りな。勉強も同じくらいしておきなさい。厳しい世界だと思うけど、公務員になっても漫画家になっても、もしくは他の仕事についても勉強ってのは必ず必要になってくるものだからね」

「失礼しました」

 そういって進路相談室を離れ、学校から家に向かって俺は帰った。

 帰り道の雪の残る歩道を歩いていると、目の前に白い粒のようなものが羽のように下へと降り注いだ。

 雪が降り始めていた。

 12月から初雪だが、1月になっても降っていることに、その白い雪の粒を見て俺は実感していた。

 まだ冬は終わっていないし、この雪が溶けて春が来た時に俺はどちらにいるのだろう?

 そんなことを考えていた。

 そして頭の中には林原理奈さんの姿が浮かんでいた。

 どうして理奈さんの顔が浮かんだのか解らなかったが、授業中もたまに思い浮かぶことがあった。

 今彼女は何をしているんだろう?

 授業を受けて、家に帰って、コミケの準備でもしているのだろうか?

 心のどこかで彼女のことが気になり出していた。

 日野さんと手を握った時よりも、理奈さんと居る時が胸が時々痛くなる時があった。

 この気持ちはなんなのだろうと思った。

 けれどこの気持ちを理奈さんに言うのは、やめようと思った。

 今のファンというか原作者と作画の関係が崩れる気もした。

 そんなことを考えながら曇り空の雪景色を見ながら、俺は帰路を歩く。

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