第八刀 不穏料理
あれー?おかしいなと思いつつも作られた物から順番に渡していく。
こんな作業が一週間続いたのでもう慣れてしまったのだが。
そんな日の夜、俺は城の中のあてがわれた自室の中で一人考え込んでいた。
確かに俺は食堂で働かせて欲しいとは言ったが『配膳係』と言う意味で言ったはずではない。
上手く行き過ぎて失念していたが、伝え方が不味かったらしい。
まあ、結構あやふやに言っちゃった感も否めないのだが、配膳係はなぁ…。
まぁ、そこの所は置いておこう。
待遇が悪いわけでも、まぁ無いし。
因みに一子は俺と同じく配膳係になった。
俺の提案に自然と乗っかってきた形であれよあれよと同じ職場に。
一週間も同じ職場で長い時間を過ごしていると、嫌でも会話せざるを得なくなる訳で…遂には名前で呼び合う程の仲になった。
まぁそれで終われば良かったんだけどね。
突然コンコンと扉をノックする音がする。
「はい、どうぞ」
「来ちゃった」
一子が来た。
最近一子が俺の部屋に来るようになった。
ほんとにココ最近だが、それに何故かボディータッチも増えてきた。
あざとい仕草で来ちゃったと可愛く言う一子はトテトテと小走りに俺の腰掛けるベッドに来ると俺の真横に腰掛けた。
その距離なんとゼロcm驚きの近さである。
「いつも思うけど、近くない?」
「んー、そうかな。これくらい普通だと思うけどな友達なら」
「友達でも、こんな近くでしかも密着して座らないぞ」
「いーじゃないか、それとも僕と一緒に座るの嫌?」
「うっ!?」
あざとい、実にあざといですよ一子さん。
そんな潤んだ目で上目遣い、しかも服の裾ちょこんと摘む三連コンボなんて断れないじゃないですかやだー。
仕方なく、本当に仕方なくだが許してあげることにする。
「い、嫌じゃないようん」
「やったぁ!!うふふそーたぁっ!!」
「へ?」
突然視界がぐるんと上向きになる。
一子がガバッと抱きついて来た、俺はそれに反応できずに押し倒されてしまう。
俺はマウントを取られ一子に腕をロックされた。
「あ、あの…一子さん?何故このような事をされるので?」
「何でって、いつもやってるじゃん」
「いや、さ流石に今日はご勘弁願いたいかなー、なんて」
「ダ・メ♡」
「ウムッ!?」
「はむ…ちゅぺろ…」
「ムー!?ンムー!?」
キスされた、それも深い方。
何故こんなことになるのか、それにいつもとは何なのか、まぁあれだよ男女の関係的な奴。
そう、俺と一子は召喚されてから3日目の夜に彼氏彼女の関係になってしまったのである。
イキナリで戸惑うこともあると思うが、冷静に聞いて欲しい。
今俺は強引にキスをされている、がこれは別に襲われている訳では無い。
いや、襲われてんだけどさ、それはいいとして。
一子は寂しくなると俺の部屋にやって来ては、物理的な関係を求めてくる。
それは、見知らぬ世界へとやって来た事からの不安故か、それとも純粋な好意からか。
いつも最後までしてしまうのは、やはり俺が一子に惚れているからだと思う。
まぁ、悪い気はしないしいいかなってちょっと思ってる。
その日は結局最後までいたしてしまった。
次の日の朝、猛烈に後悔したのを覚えている。
「飯はまだか!!配膳係!!」
「早くしろよ!!こちとら疲れてんだ早くしろ!!」
「ハイお待ち!!順番にとって行ってください!!」
今日も食堂に、午前の訓練を終えた騎士や、魔術師の喧騒が聞こえる。
城の食堂は俺と一子が働いているここだけなので、昼になると大勢の人が行き交う。
何も食堂に全員が全員来なくてもと思うが、城から城下まで結構な距離があるそうで、少ない昼休みの時間では行きたくても行けないそうだ。
それに、城で働く人なら誰でも利用出来るし、早いし量も多いからという理由もあると一子から聞いた。
そんな食堂の欠点を上げれば、毎日決められたメニューしか出ないのと、美味しくないの二つが挙げられる。
俺も1回食べては見たものの、腹が膨れるだけで満足感は全然なかった。
因みに今日の昼メニューは石かと思う程の硬い黒パンに薄すぎる野菜スープのみ。
正直これで足りるかと言われれば首を傾げる他ないだろう。
まぁ、お代わりは何回でも出来るので気が済むまで食べることは出来る。
作る方は何故か立ち入り禁止を勤務初日に食堂の料理長をしているバズという人に言い渡された。
俺はそれに反対したのだが、もの凄い剣幕でこう怒鳴られた。
「料理もした事がないような小僧が厨房に立ちいるのは断固として拒否する!!」
正直コイツ馬鹿か、と思った。
何を根拠に料理をした事がないと言い切れるのか。
そう反論したところ黙っていた料理人達が大声を上げながら笑い出した。
「アッハッハ!何を根拠にってお前本気で言ってんのかよ」
「本当に何も知らないのな!!」
なぜ笑われるのか解らない、なのでバズに素直に聞いてみたところ
「フンッ自分で考えな、魔法が使えないお前には一生理解出来ないさ」
そう言ってバズと料理人たちは俺に嘲笑を浴びせながら厨房へと潜っていった。
こんな事があった為、俺は何故ここまで満足出来ない料理を作るのかと考えていた。
こちらの世界の料理を学びたいと思い食堂に来たのに、厨房にすら入れないとはこれ以下に。
それに、こちらに来てからというものの全く包丁やらを握っていない。
いい加減禁断症状が出そうで怖い。
なので俺はその日の夜に厨房へと忍び込んでみた。
するとそこには想像もしていなかった自体が起こっていた。
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