第七刀 事案収束

俺がばぁちゃんから教えこまれた礼儀作法の理念は国王様に理解してもらえたようで良かった。

国王様はこほんと一つ咳をすると中断していた話を続けた。


「ここからは儂が話そう、先ずはいきなり拉致同然でこの国に呼び出してしまい本当に申し訳ない。許されることではないのは分かっておる。一生をかけて勇者殿達に償いの意を込めて色々なサポートに当たらせてもらおう」


国王様は謝罪を述べた後、そのまま話を続けた。


「勇者殿達がそなたたちが呼ばれた理由については先に説明されておるであろうから省くが、今回謁見の場を設けたのは、勇者としての能力を確認し、それをどのようにして伸ばしていくか、その使い道は?と言うものを考える材料にするためじゃ。それではアレをここに」


事前に準備でもしていたのだろうか。声を掛けると直ぐに奥の方から甲冑を着込んだ騎士達が俺達五人の前へ大きな透明な玉を運んできた。


「それは解析の魔眼と言う道具で、生物が手に当たる部分を触れさせるとその生き物の情報が見られるのじゃ。本人が見せたくないと望む情報は言ってくれればこちらで配慮させてもらうぞ」


そう言うと国王様が目で解析の魔眼を触れるように促してくる。

俺達は国王様に許しをもらい立ち上がると女性三人、いや男女合わせて四人は解析の魔眼のそばにいる騎士に何事かを伝えて、恐る恐るソレに手を触れた。

すると玉から一斉に光が溢れ光の中に文字が浮かんで来た。


最上 颯汰

称号:『天才』『少年料理人』『異世界人』『美食神の加護』

スキル:【十色の刀】【料理】【熱耐性】【特殊調理技能】


俺の目にはこう写った、まぁ、色々と変な物も付いてるがこんなものなのかもな。

向こうである程度経験した物はスキルとして反映されるようだ、まぁ当然か。

スキルって技って意味だったからそういう事なんだろうな。

まぁ、称号は何か思い当たる事があることが反映されてるな。

向こうじゃ、一時期天才やら神の加護が宿ってるやら天才少年料理人やらと言われてたからね…。

ここでもかよ。

俺の事はいいや、それよりほかの奴はどうなってるのか知りたいが隣の奴のしか見えなかった。


光輝=アリスベール・一子

称号:『美少女』『有名シェフの一人娘』『異世界人』『ストーカー』

スキル:【剛運】【調理】【特殊ストーキング技能】


色々見てはいけないものを見てしまった気がする。

俺が覗いていることに気がついたのかこちらを向き微笑んできた 光輝=アリスベール・一子、長いからアリスベールさんでいいや、アリスベールさんはこちらを向いたまま元に戻ろうとしない。

瞬き一つせずにこちらを見ている。

傍から見ると俺達が見つめ合う光景は恋人かなにかに見えるかもしれないが、俺の心中はそんな平和な物じゃない。

リアルホラーきたと大声で叫びたい気持ちだ。

だがこんな静かな場所でいきなり叫ぶのはすこし、いやかなり頭のおかしい人にしか見えない。

心臓がバクバクする音が部屋の静けさ故に聞こえる中その静寂を切り裂くように現れた声が。

そう国王様である。


「勇者は出ない者が二人いる?どういう事だ?まさか、儂の魔法陣が不具合を起こしたのか、そんなはずは無い、勇者となる人間の周りの人間を巻き込まぬ様にかなり細かい所まで設定を施したというのに」

「お父様、考え込むのは後にしてくださいませ、先ずは巻き込まれた方の事を考えねば」

「あぁ、済まない、ソータ殿、アリスベール殿、で良いか?そなたたちには謝罪を送らせてもらいたい。本当ならば召喚用に構築した特別性の魔法陣の設定で勇者以外の人間は魔法陣の光の上にいたとしてもこちらに来ることは無いのだがどうやら不具合が発生してしまったようだ。本当にすまなんだ」

「私からも謝罪を致しますすいませんでした、ソータ様、アリスベール様」


そう言う国王様とアミアリア様は腰を深く折り頭を下げた。

王族である2人が拉致同然でこちらにそれも巻き込まれているとはいえ一個人に頭を下げるのは大問題ではなかろうか。

先程は5人に向けての謝罪であったが、腰までは折っていなかった。

それは周りに示しがつかないので仕方ない事だと分かるには分かる。

それをアリスベールさんも察したのか一緒になって2人を説得しにかかる。


「国王様、アミアリア様、私たちは先ほどの謝罪で十分だと思っております。ですから顔をお上げください」

「お願いします、私達は大丈夫ですよ」

「しかし…」


それでも渋る国王様たちに俺はある提案をし、その場を収めた。

その提案のお陰で後の話をスムーズに終える事が出来た。

その提案とは何か、それは…



「おい、飯はまだかよ!!」

「はい!!お待ち道様です!!順番に持ってってくださいね!!」


え?あれからどうしたのかって?

俺は国王様に「この城の食堂で働かせてくれれば今回の事を許します」と言ったのだ。

案の定色々言われたがそこは無理矢理押し切らせてもらった。

元々、この国の料理には興味があったのでここで働かせてもらうことになった。


配膳係に。









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