第五刀 魔神紀伝
【魔神】、この世界ではそう呼ばれる物が魔神の森と言う深い深い森に封印されているらしい。
この魔神は1000年前にあった『神の狂乱』と呼ばれるランクルスの大陸全てを巻き込んだ大災害を引き起こした悪神らしい。
その悪神は魔獣を次々と生み出し全世界の当時の国々へ送り込んだそうだ。
悪神は魔獣を生み出した後は自分の根城に閉じこもり魔獣がありとあらゆる生物を蹂躙していく様を見物して楽しんでいた。
それを見かねたランクルスの女神は勇気ある異世界の若者に聖なる力を与えこの言葉とともに魔神を打ち倒すように言い、この世界に降り立たせたという。
【勇気ある若者達よ、この災害を止めたくばすべての元凶を滅ぼすほかありません。生きとし生きる尊い命を守るためにどうか立ち上がって欲しい】と。
その言葉を受けた若者は授かった力で魔獣をなぎ倒し人々を救う旅に出る。
それぞれの場所で戦い続け力をつけた彼らはいつしか勇者と呼ばれるようになった。
勇者たちは魔神の根城に集い魔神に戦いを挑んだ。
その結果は勇者達が力を合わせてかろうじて魔神を瀕死に持っていき魔法の力に長けた勇者が命を対価にした強力な封印を施し魔神を封印しその件の魔神は小さな黒い宝石となりその力を完全に封印した。
魔神を、封印した勇者達はこの封印が解けることのないように深い深い森の中にある聖なる祭壇に数千にも及ぶ大小様々な封印とともに魔神を封じた黒い宝石を安置した。
それ以来大陸を覆っていた闇の力は消え去りこの世に平和が戻った。
あえて一つだけ問題を上げるなら魔獣は、魔神を倒しても消滅するようなことは無かった。
魔神が生み出したとされていた魔獣は消滅したが操られていた魔獣は消えることなく残ってしまった。
今でも当時の生き残りの魔獣がどこかに生息しているとのことだが確証はない。
これで伝聞は一応の終わりらしい。
ここまでの話を聞くとファンタジーの絵本みたいな話だけど、姫様が真剣な表情で話すのを見て、嘘だとは思えない、というか思わない。
異世界に召喚されてんだからもう何でも信じれる。
「ここまでが魔神についての話です。正直これでも魔神のことは話しきれていないんですが、細かく話していると時間がなくなってしまうので端を折らせて説明させていただきました」
「そのことについては気にしてません、その、魔神の森ですか?今はどんな状態なんです?」
「今の所、魔神の森は何も問題はありませんが、森の動物達が凶暴化する現象が多発しているとの報告が上がっています」
「それが何か魔神の復活について関係があるということですか?」
「はい、森の動物は聖なるオーラを微弱ながらも纏っています。それと関係して魔神の力は聖なるオーラに反応して襲うという性質があると言われており動物が凶暴化する理由には魔神の力の瘴気による要因もあると私たちは睨んでいます。」
「つまり瘴気が出ていればそれは魔神の力であるから復活の時が近いということ」
「そういう事になりますね、ですがこのような事態に対処するために勇者様をお呼びしたのです。」
「伝承の通りここにやって来たのが私達、でも私達は向こうの世界では普通の一般人ですよ?ましてや戦いなんてケンカくらいしか経験した事が無い子供だし…こんな私達に何が出来るんです?」
俺達はここに来たばかり、戦闘技術なんて持っているはずがない、俺も女神様には戦闘技術の類は一切貰ってはいないし、それに俺は料理を作る人間、つまり奉仕者であって戦う者の補佐をするのが本来の役目だからなぁ。
「私がさきほど話した伝承の他にも勇者様を題材にした伝承も残されておりまして、こちらの記述によりますと、降り立った方々つまり異世界から召喚された方々は特別な力を持っていたと言われています」
ごめんなさい、俺は特別な力なんて微塵も持っていないんです。
そんな期待のこもった目で見られてもないものは無いんですよ王女様…。
「それを確認するにはどうしたらいいんですか?」
「まずは私達の王に謁見をしてもらいます、その時に確認を致しますのでこちらへ付いてきてください」
王女様はそう言うと鉄扉に手を掛け開け放つと、長い長い廊下がその姿を表した。
床には赤いカーペットが惹かれ、明かりはランタンのようなものが等間隔で奥へと続きまだ夜ではないのでその火は灯っていない。
俺達は先に進む王女様の背中を見ながら王様が待っているという謁見の間へと歩を進めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます