第28話 〝副大統領の副大統領″

【副大統領の副大統領】


世界副大統領:『あなたが、不思議な話をする聖者か?

なるほど、見た目から、仙人という風貌だな。

その姿であれば、普通の話をしても、それらしく聞こえるものだ。


ところで、そんなあなたが、私に話をしたいそうだな。


特別に時間を作ったのだから、面白い話をしてくれよ。』


不思議なおじさん:『本当にお主が、世界副大統領かね?』


世界副大統領:『なんだと?』


不思議なおじさん:『いや…ところで、わたしはこの時代が2度目なのじゃが…どうもおかしいな。』


世界副大統領:『何を言ってるんだ?何が2度目なのだ?』


不思議なおじさん:『お主は、双子じゃな?

兄がおる。』


世界副大統領:『ハハハハ!そんなこと、世界中の誰もが知っていることだ。

兄が世界大統領、弟である私が、世界副大統領だ。


だから、なんなんだ?』


不思議なおじさん:『今、世界で双子の新生児が、生まれた直後に姿を消してしまう現象が起こっていることを知っておるかね?』


世界副大統領:『もちろんだ。

このあとの、兄への報告会議があり、この報告もする予定だ。

これも、最近、ニュースでも取り上げられており、誰もが知ることができることだ。

ちなみに、あなたは、本当に聖者なのか?』


不思議なおじさん:『わたしは、聖者ではない。

この世界の流浪者じゃ。


そう。流浪者じゃ。

あることを知りたくて、探し続けて、彷徨い続けている。

それが、こだわりとなり、いつしかその流れから抜け出せなくなったのだ。』


世界副大統領:『…?

何の話をしているのだ?

あなたの目的は何なのだ?

私に話をしたいのではないのか?』


不思議なおじさん:『そうだ。


ところで、お主は何にこだわっておるのかね?』


【こだわりのこだわり】


不思議なおじさん:『お主は、何にこだわっておるのかね?』


世界副大統領:『何にこだわっているだと?

世界大統領になることだ。

それが、私の生きる上でのこだわりだ!』


不思議なおじさん:『しかしな、質問があるのじゃが、なぜ世界大統領にこだわるのじゃ?

世界大統領にこだわるということは、それ以外の経験、可能性を自ら遮断するだけではないか。


なぜこだわるのか?』


世界副大統領:『わ…私は、双子の兄がいるために、いつも、いつも、2番手であり続けて来たんだ。


常にだ!


兄を見返すためには、兄を超えるものでなければならない。

この世界の世界大統領というものを知ってから、私はこの世界の1番になることで兄を超えたかった…

そして、またしても2番手…副大統領となってしまっている…』


不思議なおじさん:『なるほどな。

そりゃそうなるわい。

それは、お主が、兄を大統領なるようにしているだけじゃからな。


お主の想い通りになっているだけじゃ。』


世界副大統領:『な?なんだって!

何を言ってるんだ!

人の話を聞いているのか?

私は2番手など求めていない!

私の想いとは、相反しているのだ!』


不思議なおじさん:『違うな。

お主の想い通りだ。

おそらく、兄の大統領は、自分でも不思議な人生を生きてきたと感じておるじゃろうて。


すべてお主のチカラのおかげじゃからな。』


世界副大統領:『何を言っているんだ?』


不思議なおじさん:『…なるほど

…そういうことか。


心の法則を知らずに生きてきたのが、私との出会いで知ることになったためか…


私が見た未来では、お主が大統領になっておったのだがな。』


世界副大統領:『未来?

心の法則?

何なんだ?何を言ってるんだ!』


【法則の法則】


不思議なおじさん:『この世界の法則を知らないのであれば、理解できなくて当然じゃからな。


お主は、常に兄を超えたいと願ってきたのだ。』


世界副大統領:『そうだ。

願ってきた。

だからどうしたというのだ。』


不思議なおじさん:『この世界の法則を教えよう。


この世界では、願うと決して叶わない仕組みになっておるのじゃ。

お主は、生まれてから、常に兄を超えたいと想い続けてきた。

そして、超えることは、一度も実現していない。

すでに法則の絶対性を自ら証明してきたようなものだ。


叶えたいことは、決して願い続けてはいけないのじゃ。


これは、絶対なる法則なのじゃ。


だから、兄は常にお主の先を行く人生が実現してきたのだ。


兄は強運の持ち主で、お主は運が悪い人生だと想っていないかね?』


世界副大統領:『まさしく、兄はとてつもない強運の持ち主なのだ。

私との実力差というものはないはずなのに、なぜか兄が一歩先を行くのだ。』


不思議なおじさん:『お主の想いのチカラの通りにな。

お主の強烈な想いのチカラで、お主が兄を超えたいと願うがために、お主が兄を超える現実には決してならないのだよ。


だから、不思議と兄は強運ともいえる結果を得てきたのだ。


お主の強烈な想いのチカラの影響なのだ。』


世界副大統領:『そ、そんな…馬鹿なことがあるのか?

ただ、そんなことのために私は2番手であり続けて来たというのか!』


不思議なおじさん:『そんなことのためにか…。

いつの時代であっても、どんな姿、かたちであっても、お主たちはあまりにもこの法則を軽視してしまう。


逆に不思議でしかたがない。


なぜじゃ?


なぜ、いつも、いつの時も、同じように願い続けて、苦しもうとするのだ?


わたしは、お主らが、あえて苦しもうとしているようにしか見えないのだ。』


【矛盾の矛盾】


世界副大統領:『…なんということだ。

願い続けてしまっては、叶うことは決してないのか…

ただそれだけだったのか…


しかし…

では、叶えるためにはどうしたら良いのだ?

願わずに、どうやってなりたい自分になれるというのだ?

教えてくれ!』


不思議なおじさん:『そう焦るな。

この世界の法則を理解することが大切なのじゃ。

そうすれば、どうすればいいのか、自然にお主のなかで、答えが沁み渡ってくる。


まず、願いは、必要なものだ。

願いとは、新たな自分を描くことであり、それがなければ変化は始まらない。


だから、必要なことだ。


ただ、願い続けてしまうことがいけない。


すべては、お主の心で想っていることが、この世界で現実になるようになっておる。』


世界副大統領:『そうしたら、なぜ!

世界大統領になりたいと想っているのに、それが現実にならないのだ!


矛盾しているではないか!』


不思議なおじさん:『いいや、何も矛盾などしてはおらぬ。


よく聞き、理解を深めなさい。


お主が世界大統領になりたいと想っている。


これでは、何年たとうが何百年たとうが、世界大統領になるお主は、誕生しない。


なぜなのか?


よく考えることじゃ。


世界大統領になりたいと想うということは、お主は、〝今″ 自分は世界大統領ではないと想っていることになる。』


世界副大統領:『何を言ってるんだ!

当たり前じゃないか!

〝今″世界大統領ではないから、なりたいと想うんじゃないか!』


不思議なおじさん:『当たり前か…もう一度云うぞ。


この世界では、お主が想っておることが現実になる。


お主は、世界大統領になりたいと想っておる=〝今″ 自分は世界大統領ではないと想っている。


そう想った瞬間、世界大統領になりたがっているお主が誕生している。


世界大統領になりたいと願えば願い続けるほど、世界大統領になりたがっているお主が誕生し続けるのだ。』


世界副大統領:『な、なんだと?

そ…そんな馬鹿な…』


【証明の証明】


不思議なおじさん:『この世界の法則を聞いて、まだ矛盾していると云うのかね?


お主は、今までの人生で、この法則の絶対性を証明し続けてきたのだよ。


自ら証明してきたのだ。


それでも矛盾していると断言できるのかね?』


世界副大統領:『い…いや…。

まさしく、法則の通りだ…

なんということなのだ…

私の人生は、私の想ってきた通り、兄を超えたがっている私であり続けて来た…


なんだったんだ…


私は、今まで、自分でそのようにしてきたというのか…


…しかし、では、どうすれば願いは叶うのだろう?

どうすればいいのか、教えてくれ。』


不思議なおじさん:『よく考えることじゃ。

世界大統領になりたければ、なりたいと願っていてはなれない。


どう想えばなれるのか。


お主の中に答えがあるのだよ。


すでに、実行してきたではないか。


自分は、運が悪いと想っていれば、運が悪い自分になっておる。


自分が、なぜか兄を超えることが出来ないと想っていれば、なぜか兄を超えることが出来ない自分になっておる。


まだ、わからないかね?』


世界副大統領:『…あぁ…なんということだ。


私が、世界大統領だと想っていれば、世界大統領になるというのか?


私がただ、そう想うだけでなれるというのか?


信じられない!


そんなこと…信じられない!』


【流浪者の流浪者】


不思議なおじさん:『よく考えることじゃ。

伝えるべき、この世界の法則を教えたのだ。

あとは、自分で考えなさい。

どうしてきたから、今のお主なのか。

どうすれば、お主が望むお主になれるのか。


よく考えることじゃ。』


世界副大統領:『ま、待ってくれ!

あと一つ教えてくれ!

あなたは、未来を知っていると言った。

どういうことか教えてくれ!』


不思議なおじさん:『知っているとは言わなかった、見てきた未来だと云ったのだ。

まぁ、知っているととらえても仕方が無いな。


わたしはな、この世界を進み続けている流浪者なのだ。


そして、進み続けて来たあげく、この世界を一周してしまったのだ。


これは、さらにわたしを悩ませている。


とすれば、わたしはどこに向かえば良いのか?


しかし、進み続けて来て、得られたものもたくさんある。


その一つが心の法則もいうものだ。


しかし、すべての人に教えているわけではない。


教えるべくして、教えるべくタイミングで出会うものに限るのだ。


お主もそうじゃ。


あとでわかるじゃろう。


とにかく、わたしの話を良く自分で考えることじゃ。


そうすれば、お主は、お主のなりたいお主になることができるのだ。


あと、双子の消失事件は、かなり厄介なことになっておる。


また、何かが変わり始めているのだ。

気をつけなさい。

お主も、双子じゃからな。


それでは、失礼するぞ。』


………


世界副大統領:『どうすれば、私の想い通りになれるか、わかったぞ!

私は今から変わる!

私が世界大統領なのだ!』


ガチャ


『世界副大統領。

お時間です。』


『よし、わかった。すぐ行く。』


※【双子の双子】に続く





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