第7話 〝博士″
パビ:「赤色にしか育たない?」
マビ:「そうなのよ!
その現場をみてきたのよ!」
パビ:「いや…でも、見てごらんよ。
あの木の葉は、ちゃんと緑色だし、ほら!部屋の中のこの子たちも、全ていつも通りじゃないか!」
マビ:「違うのよ!
これを見てみるとわかるから!
ほらっ!」
パビ:「なんだよ?
…ん?真っ赤…
絨毯?」
マビ:「違うわ!
雑草!
ただの雑草なのよ!
今まで緑色だったものが、新しく生まれてくるもの全て、赤色にしか育たなくなっているの。
この写真もみて!」
パビ:「な…なんだ?これ?
気色悪いよ。」
マビ:「これ、わらびよ。」
パビ:「うへ?わ!わらび?」
マビ:「わたしも初めはそんな反応しかできなかったわ。
今も、植物学の研究者たちが必死に調べてるの。
彼らもこの事態をのみこめていないわ。
世界政府にも報告して、本格的な調査が始まったばっかり。」
パビ:「だけど、それが本当だとしたら…
大変なことになるんじゃないか?
それって…」
マビ:「大変なことよ!
世界中の緑色の植物が真っ赤っかになるんだもん。
一年中紅葉だと、四季を感じられなくなるんだから。
秋を感じることが出来なくなるわ!
私、結構、秋の季節特有なところが好きなのよ。」
パビ:「バカ!
そんなどころじゃないんだって!
地球上の生き物全てが、絶滅するかもしれないんだぞ!」
マビ:「ぜ?絶滅?!
どうしてよ!」
パビ:「葉緑素がなくなるってことは、酸素が生成されなくなるってことじゃないのか?!
この地球から酸素がなくなるんだよ!」
マビ:「ちょっと!
それって…ヤバイじゃないの!」
パビ:「だからだよ!
だから、みんな必死に調べてるんだって!
この地球に何が起ころうとしてるんだよ…
すぐに、博士に報告してくる!」
マビ:「待ってよ!私も行くわ!」
パビ:「あっ!しまった!
ダメだ!研究室は…
でも、大事な事だしな…」
マビ:「何よ?
早く行かなきゃ!」
パビ:「いや…まずいな。
研究室は…えらい目にあうかもしれないから…」
マビ:「何言ってるのよ!
地球の一大事な事なんだから、それ以上にえらい目なんてないわよ!
ほら!
考えてる場合じゃないんだから!
すぐに行こうよ!」
パビ:「知らないぞ…
本当に知らないからな…」
マビ:「バカ!
行くわよ!」
・・・地下12階・・・
マビ:「ねぇ、博士は何でこんな地下に研究室つくっちゃったのよ。
いちいちめんどくさいのよね。
携帯電話で呼び出しちゃえばよかったんじゃないの?」
パビ:「博士は、携帯電話なんて持ってないんだ。
言っとくけど…
すごく驚くと思うよ。
電子通信機器は、一切置いてないし使わないんだ。」
マビ:「えっ?
いまどきそんな人いるの?
でも、世界の管理システム上、あり得ないことでしょ?
博士もみんなと同じように管理されてるはずだし。」
パビ:「まぁね…
でも…
ま、会ってみたらわかるよ。
僕の言いたいことがさ。」
マビ:「なんなのよ?
さっきから、意味深な言い回しばっかり。
まぁいいわ!
久しぶりに博士に会うんだから、ちょっとくらいの変化はあって当然よ。」
トントン
マビ:「博士ー!
こんばんわー!」
トントン!
マビ:「おーい!
博士ー!」
ストッ…
マビ:「何?これ?
紙が出てきたわ?」
マビ:「ん?
何これ?
《声を出して読んではいけない。
適当な会話をしながら、パビの指示に従いなさい。
本当にしたい会話は、紙に書いてすること。》」
パビ:「こんなの日常茶飯事だよ。
いちいち気にしてたら時間がもったいない。《あとで説明する 話を合わせてくれ》」
マビ:「ん?
博士流のおもてなしってやつね。
なんといったって、変わりもんだもん。《でもどうしたらいいの?》
パビ:「えっと…紙にはなんて書いてあるのかな?」
マビ:「んっ?ちょっとまって…
何かありきたりね。
〝合言葉を言え″だって…」
パビ:「合言葉か…やっぱりね…
じゃあ、僕の後に続けて言ってくれ。
だから、研究室は避けたかったんだ…」
マビ:「え?どういうこと?」
パビ:「すぐわかるよ!いくよ。」
マビ:「わかったわ。」
パビ:「…。ふぅ…。
🎶おーしりペンペン、オシッコもらした🎶おーならププププおならぷう。」
マビ:「何よそれ!
いやよ!
何言わせるのよ!
しかも歌っぽいじゃない!」
パビ:「だから言っただろ!
言わないと、博士に会えないよ!
いいの?」
マビ:「…
わかったわ…
でも、後で、絶対!博士に仕返ししてやるわ!」
パビ:「いくよ。
僕も何度も言いたくないんだ…
せーの。
🎶おーしりペンペン、オシッコもらした🎶おーならププププおならぷう。」
マビ:「ねぇ。
合言葉だったら、一人で言えばいいんじゃないの?」
パビ:「なんだよ!
言えよ!
ダメなんだよ、入るひと全員でいわないと。
しかも、メチャメチャ大声で歌わないと入れてもらえないんだ。」
マビ:「なんの意味があるのよ!」
パビ:「だから言ったじゃないか。
研究室は、やめた方がいいって。
今度は絶対言えよ!
わかった?!」
マビ:「わかったわよ!」
パビ:「せーの。
『🎶おーしりペンペン、オシッコもらした🎶おーならププププおならぷう。』
ガチャ
マビ:「あっ!
開いたわ!」
パビ:「すごくアナログで不可思議な方式なんだけど、糸電話の進化版みたいなものと連動させてあるんだ。
だから、この場にいる人数と、合言葉を言っている異なる種類の波長の数が一致しないと開かない。
それも、あの合言葉でしかね。」
マビ:「趣味悪いわよ!
だから、結婚出来ないのよ。」
ガチャ。
マビ:「開いたわ。
博士!ちょっと趣味悪いわよ!
あの合言葉は!
ちょ……
うぎゃー!」
パビ:「は?博士?」
博士:「ん?おー!
パビ、マビ。
二人そろうのは珍しいじゃないか。
特にマビは、久しぶりだね。」
マビ:「ちょっと!何よ!その姿は!
全身が骨だけになってるじゃない!
どうなってるっていうのよ?」
博士:「このジャスミン茶を飲んでる時が、一番幸せなんだよ。
うん…いい香りだ。」
マビ:「何言ってんのよ!
飲んでるつもりかもしれないけど!
アゴから漏れて、ビシャビシャになってるわよ!
わけわかんない!」
博士:「骨には骨の味わい方があるんだよ。
うーん…ホッコリするなぁ…。」
パビ:「博士…もうお遊びはやめて下さいよ。
なんか、最近こもって熱中されていたと思ってたら、なにやってんですか?」
マビ:「そうよ!
何なのそれ?
こんなものに熱中してたの?」
博士:「こんなものとは、失礼だよ。
思いのほか凄い能力を持ってるんだ。」
マビ:「な…なんなのよ?
どういうこと?
なんでこんな姿になってるの???」
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