第5話 〝REPTILIEN″

ペン:「どうなっているのでしょうか…REPTILIENメンバーが、急速に減ってきています。

しかも、この会を立ち上げたメンバーの方たちが相次いで亡くなられた…

すべて、自殺とのことですが…」


ワン:「世間では、新社会に順応出来ずにいる、元成功者の精神的病として、言われているようだが…」


ペン:「そうですね…

でも…世間には知られることもないのですが…

我々の会員ばかりに集中しているのではないでしょうか?


確かに世界的に自殺者が増えているとデータで確認はしましたが…これほど身近な所で相次いで亡くなられると…正直、不安になります…

我々は、本当に病気なのかと…」


ワン:「まぁ確かに、世間からすると一風変わった集団ではあるかもしれないな。

爬虫類が好きなんだから。

ただ、言えることは、皆、自殺するようなタイプではない。

逆に野心に満ちた、死んでも目的を達成するくらいの、常に前向きな連中ばかりだ。


確かに、爬虫類の愛好家という特殊で、新社会の中では、異端者の集まりではあるが、何も法を犯すことまではしていない。


ボランティアで、隔離された爬虫類たちの世話をしているだけだ。

そして、それぞれの世話作業で得た画像、動画を持ち寄って楽しんでいるだけなんだからね。


ただ、世間に対しては、皆、その素性を隠していることは事実だ。」


ペン:「元々私は、世間に隠す必要はないと思っています。

なぜダメなのでしょうか?

爬虫類を愛好することの何がいけないのでしょうか?


旧社会では、自然に共存してきたんです。


〝彼女″の判断によって、このような事態になったんですよ!


明確な理由は、開示されておらず…しかも、爬虫類たちのみですよ!

ロボットたちの世話が一切ない管理になっているのは!

あまりにも、可哀想すぎます…

だから、私たちが、その世話をしているんです…」


ワン:「そうだ…この扱い方は、旧社会ではあり得ない。

生き物、自然に対して、同じ生き物として尊重してきたんだ。

爬虫類だからと言ってこのような扱いを選ぶ理由がわからない。

世界政府は何を考えているのか理解できないな…」


ペン:「世界政府といったって、何の力もいまやないですよ。

見せかけだけの政府でしかない。

〝彼女″の言いなりというか、任せっきりで、なんの役にもたたない…

まだ、旧社会の境界線は残されたままなんですから…

結局、人類というのは、分かれたがるというのがわかりましたよ。

せっかく世界が一つになれる状況に変わっても、自国が優れているということを証明したがるんです。


噂では…

各国が、旧社会よりも軍事力を強化し続けているという話も聞いていますし…」


ワン:「いや…それよりも、〝彼″を自国に得ようと争奪戦が密かに繰り広げられているとも言われているんだ。


〝彼女″は、その動きに対しては、警告を出して、沈静化させたようだ。


すでに、製造工場は、全て〝彼女″の管理下にあるからな。


各国、もう兵器を増やす手段はもうないはずだからね。」


ペン:「〝彼″は、今どこにいるんでしょうか?


消息不明というニュースを見てから、その後の情報がないようですが…」


ワン:「知らないな…

元大国が、引き入れたという噂もあったが、ガセネタという話も聞いたことがある。


ただ…〝彼″は…世界最強。

〝彼″の力を得られれば、この世界を支配したも同然。


どの国も今の〝彼女″の管理下の中、身動きが取れない状況で、〝彼″という存在は唯一の光だからな。


そりゃどこも欲しがるだろう。」


ペン:「〝彼″と〝彼女″が同時期に現れたことで、世界が変わったのは事実です。

ただ、〝彼″は噂だけで、謎のままですからね。

それに…誰も見たものがいないという噂も聞きましたよ。


本当に存在しているのでしょうか?

それくらい謎に包まれています。」


ワン:「〝彼女″が情報も管理してから、この世界は本当のニュースを得ることが出来るようになったのに、いまだに噂をあてにする我々もどうかと思うがね。」


ペン:「そう言われるとお恥ずかしい限りです…

確かに旧社会のニュースの全貌が明らかになった瞬間は、今でも忘れられないくらい衝撃でしたからね。


実際目にした情報と、報道されるニュースとの違和感は、薄々感じることはありましたが、まさかあれ程操作されていたとは夢にも思いませんでしたよ。


我々日本でさえも…

あれは、本当に衝撃の一言です…」


ワン:「日本でさえ…か…

実は日本だから…だったんだがね。」


ペン:「えっ?」


ワン:「相当…我々日本人は恐れられていたということだ。」


ペン:「ど…どういうことですか?!

それは…初めて聞きましたよ。」


ワン:「まぁ…私もその恐れる側に知らないうちに加担していたんだがね。

特に…このREPTILIENを立ち上げたメンバーは、軒並みそのクチなんだよ…

旧社会のある意味世界をコントロールしてきた組織にすごく近い位置にいたんだ。

いや…ビジネスが成功すればするほど、近づくようなシステムにこの世界全体がコントロールされていたんだよ。」


ペン:「それはいったい…?

い、いや…いいです…

もう過去の事ですから…

それを知ったところで、世界が変わってしまった今では…


ただ…我々はこの悔しさを、情けなさを忘れてはいけないような気がします。

いいように操られてきたことに対しては…


…?


しかし…偶然にも、最近相次いで亡くなったのは、皆REPTILIENの立ち上げた方たちではないですか!


それも、旧社会の世界的な大成功者ばかりです!


な…何か、その事と繋がりがあるんじゃないでしょうか?」


ワン:「わからない…ただ、不安しかないよ。

私も立ち上げたメンバーの一人だからだ…

そして、最近亡くなったメンバーと会話を交わした時に、奇妙な事を言っていたんだ…


『最近、この周辺で〝私″を見たことがないか?』


『えっ?』


ワン:「私は、思わず何かの聞き間違いかと思ったんだ。

しかし、違った。」


『最近、〝私″を見たことがないか?』


『やめてくれないか?

人をからかうのは。

何を言ってるんだ。』


『真面目に聞いているよ…

〝私″を見たことがないんであればもういいんだ。

忘れてくれ…』


ワン:「冗談を言ってる様子でもなかったし、かなり思い詰めた感じだったので、私は彼の話を聞いてみる事にしたんだ。」


『今、目の前にいるじゃないか?

その答えで、いいのかね?』


『いや…違う…この〝私″じゃないんだ…

〝私″ではない〝私″のことだ…』


ワン:「一瞬、鬱なのかノイローゼなのかその類いを疑ったが、その後、こんなことを言っていたんだ。」


『君は…〝君″を見たことがあるか?』


『えっ?』


『私は…最近、〝私″を見るようになったんだ…

もし、〝私″を見たら教えてくれないか?

幻覚でないことを証明したいんだ!』


ワン:「そう言って去っていったんだよ。

そして、気になって調べたんだ。

知っているか?

自分にそっくりな存在に会う現象…


ドッペルゲンガーを。」


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