第47話〝月の裏側″

トカちゃん:「ちょ、ちょっと…eo…はん?

あ…あん…た、と…飛ばし…過ぎ…ち…違うん?

く…首…に…か…掛か…る…じ…Gが…は…ハンパ…や…な…ない…で…。」


eoは、大気圏の熱圏内に到達した。


トカちゃん:「うぉあぉぅわぁ…

こ…こん…こんどは…あ…あつ…いでぇ…!

あ…あつ…あつ…ない…って…いぅ…いぅた…やん…かぁ…!」


eo:「大丈夫です。

少しの間だけ、我慢して下さい。」


トカちゃん:「な…なん…や?

あ…あんた…しゃ…あつ!しゃ…しゃべ…れ…る…やん…?」


eo:「心の会話ですから、体内にいるあなたには聞こえるのでしょう。


でも、喋らなくても、いつもあなたは、私の心を読み取って頂き、代弁してくれる。


言葉にして喋らなくても、あなたがいてくれれば大丈夫ですから。


いつもありがとうございます。」


トカちゃん:「そ…そん…な…こと…めん…と…むかっ…て…い…いわ…んで…も…ええ…や…ろ!

て…てれ…くさい…が…な!


うぉあぉぅわー…あっつう!」


eo:「もう少しの辛抱です。

間もなく大気圏内を抜けますから。」


トカちゃん:「も…も…う…げ…ん…かい…や…ぁ!!!


あれっ?


えらい、変わったで。


なんや!こ…今度はさぶっ…。」


ガタガタ…


トカちゃんは、震え出した。


eo:「宇宙空間に入りましたので。

まだ、月へはこれからです。

少々お待ち下さい。」


トカちゃん:「さ…さぶ…ぶ…ぶ…ぶ…ぶはぁ!

く…くち…が、こ…おって…もうた…がな…さぶ…ぶ…。」


月の表面上空に到達したeoは、感動のあまり動きを止めて見つめていた。


eo:「これは…かなり様変わりしましたね。

この光景は、圧巻です。

博士…。

あなたは、こんな凄いものをイメージしていたんですね。

あの方の中で創造された世界は、いったいどんな世界になっているんだ。」


トカちゃん:「も…う…つ、つい…た…ん…ん…かい…な…?

ぐ…ぐぢ…が…ぼう…ゔごがない…っぢゅう…ねん…がっ!」


eo:「本当に…凄い…」


トカちゃん:「ぼゔ…じ…じぬぅ…」


eo:「トカちゃんさん。

お待たせしました。

この変換されて、放出されているエネルギーを利用して、すぐ温めますので。

それでは、再変換します。」


ボワーンボワーンボワーン


トカちゃん:「ぶ…ぶ…ぶ…ぶ…うぶっ…

ぶはぁ!

や…やっと!

まともな空気が吸えたでぇ!

eoはん!

あんたしゃれになってへんで!

もう少しで御陀仏やったわ!」


eo:「見てください。

これが、月のエネルギー発生装置です。

すごく美しい光景…。


これが、人類の黒い歴史を救った奇蹟。

本当の自由を得た独立記念碑なのです。」


トカちゃん:「はぁ?

何言うてんねん?」


eo:「?

何かおかしいです。

労働ロボットの姿が見えませんし、彼らのエネルギー反応が一切感じられません。

…いったいどうなっているのでしょう?」


トカちゃん:「今度はなんやねん?

また、おかしな事になってんのかいな?

ほんま、どうなってんねんなこの世界は。


とりあえず、eoはんが会いたがっていたちゅう人物のとこに行ったらええんちゃうの?


なんかわかるやろ?」


eo:「そうですね…

な?これは?!

や…やはり…おかしいです!

月の裏側に、一つだけ生命反応があります!

そちらに移動します!」


トカちゃん:「もう、寒いのも、暑いのもどっちも嫌やからなぁぁぁぁぁ!」


eoは、その裏側を見た瞬間絶句する。


トカちゃん:「えっ?もう着いたん?」


そして、静かに降りていった。


eo:「rizaは、この事態を把握しているのか?

ロボットたちが一人もいない。

まさか?


ま…また?

あの?


うわぁ…ぁぁぁぁぁああ!

やめてくれぇぇぇぇええ!」


eoは、何かを思い出したように苦しみ出し、叫んだ。

ただ、心の中でしかその叫びは聞こえない。

トカちゃんのみ聞こえる心の叫びだった。


トカちゃん:「もう、どないしたんや?!

何がどうなってるねん!

eoはん!

あんたがこんなことになるなんて初めてやがな!

おい!eoはん!しっかりしてぇや!」


その時、月の表と裏の境目に位置するところから、空間の歪みのようなエネルギー弾がeoに向かって飛んできたのだ。


そして、そのエネルギー弾は、eoを包み込むと、eoはその中で消えていった。


トカちゃん:「な…なんか…けったいな違和感が…頭の中で動き回っとる…

なんやねん!

えっ?!

か…カラダが、バラバラに?

いや…粉々になって…い…く…ぅ…」


eo:「こ…これは?」


トカちゃん:「えらいこっちゃでeoはん!

わいらの体が散り散りバラバラや!」


eo:「しかし、会話が出来ています。

これは?

すごい安らかな気持ちになる。

何が起こっているのでしょう?」


トカちゃん:「これは、もしかしたら、世に言う天国っていうところちゃうん?

わいらは、死んでもうたんやて!

もうすぐ三途の河ちゅうやつのところに着くんちゃうか?」


eo:「いや…。

何かもう一人の人格を感じる…」


『もう少しの辛抱だ。

君たちが、混ざりあわないよう自分を持つ努力をするのだ。

名前を呼び合うことは、一番効果的だよ。』


eo:「あなたは?もしや?」


『さぁ、目覚める準備を始めよう。

私も少々歳をとったのでね。

多少運任せなところもあるので、その点は了承してくれよ。』


トカちゃん:「なんか知らんけど!

わいらはまだ生きてんのやったら、なんでも了承しまっせー!」

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