第44話〝月″

トカちゃん:「eoはん?どこに行くねん!

そっちは、さっきあんたが見てた方向と違うで?

〝黒″ちゅうやつに会いに行くんやろ?」


eoは、静かに首を横に振った。


トカちゃん:「どういうことやねん?

eoはんは、あの爬虫類たちが怯えとる〝黒″っちゅうやつの所がわかったんやろ?」


eoは、静かに首を縦に振った。


トカちゃん:「ほんなら、行くんやろ?

何で行かへんねん?

意味不明やで?」


するとeoは、空に向かって指を指した。


トカちゃん:「どこに行きたいねん?

空なんか指して?

もうすぐ日が沈むから、暗くてよう見えへんのに。

…ん?


まさか?」


eoは、優しい眼差しで軽くうなずいた。


トカちゃん:「月?もしかして、月に行こう思てんの?

やめときやめとき!

今さら月に何の用事があんねんな?

もう、あの場所は、ロボットだらけで、エネルギー工場しかあらへんねん。


まぁ…一人だけ、けったいな人間が住んでるとは聞いたことあるけど。


月に行って何がしたいねんな?」


eoは、黙って月を眺めている。


トカちゃん:「eoはん?

あんた?まさか?その人物に会いたいんか?」


eoは、大きくうなずいた。


トカちゃん:「わいは、月なんか行ったことないからなぁ。

宇宙って、空気無いんやろ?

そりゃ無理やで。

死んでまうわ!

行くんやったらeoはんだけで行きぃや。」


eoは、首を横に振った。

そして、トカちゃんを見つめてうなずく。


トカちゃん:「何でやねん!

わいも行かなあかんの?!

悪い冗談は、禁物やで!

わいは、そんな冗談は、好きやないんや!」


eoは、じっとトカちゃんの目を見つめていた。


トカちゃん:「わぉ!

ちょっとやめてや。

それは、本気の目やないか!

勘弁してぇなぁ!


ほんまに行かなあかんの?」


eoは、うなずく。


トカちゃん:「死んでしまわへん?」


eoは、うなずく。

そして、自分の胸を手のひらで押さえて、

再度トカちゃんを見つめる。


トカちゃん:「eoはんの体内に入れば、大丈夫って言いたいんか?」


eoは、うなずく。


トカちゃん:「ほんまかいな!もう、しゃあないなぁ!一緒に行ったるわ!

えらいもんと友達になってもうたわ。」


そして、トカちゃんを体内に入れたeoは、

月に向かって飛び立った。

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