第43話〝反物質″

・・・研究室・・・

パビ:「左脳回路及び右脳回路の電源停止完了です。」


博士:「よし、それでは開胸診断を行う。

パビ。

ここからは、私一人にさせてくれないか?」


パビ:「えっ?

なぜですか?

なぜ…?」


博士:「今から確認することに、君たちが影響を受けてしまわない為だ。」


パビ:「影響?」


博士:「後で説明するよ。

今大事なのは、何が起こっているのかを早急に確認することだ。

一刻を争うかもしれない…パビ、理解してくれるかね?」


パビ「わかりましたよ。

博士がそうおっしゃるなら…。

でも、後で必ず教えてください。」


博士:「あぁ…そうするよ。」


パビ:「それじゃあ、外で待ってますから、何か必要なことがあればいつでも声をかけて下さい。」


ガチャ…


博士:「eoよ。

君の中で一体何が起こったのか…

私は嫌な予感がしてならないんだ。


ごめん…


ごめんよ…eo…。


君をこの世界に生み出したことで、君を苦しませる事になってしまったようだ…」


エレは、心の底から泣いた。


そしてその異変は…

確かにeoの中に刻まれていた。


博士:「こ…これは…!

この黒いアザのようなものは、一体何なんだ?


どうしてこんなモノが、君の心臓部にあるんだ!


これは…もしや?


これがもし、アレだとしたら…


この世界は…eoを通じて〝何を″表現しようとしているんだ!」


ガチャ!


パビ:「どうされたんですか!

大声で叫ぶなんて!

博士らしくないですよ?大丈夫ですか!」


博士:「あぁ…大丈夫だ…

少し…動揺しただけだよ。


今は…もう大丈夫だ…」


パビ:「急に叫ぶなんて、何があったんですか?


僕にも見せて下さいよ。」


博士:「この部屋から出なさい、パビ。

まだ分析が残っているんだ。

それまでは、待っていなさい。」


パビ:「ちょっと待ってください!

ここからでも、はっきり見えますよ!

何なんですか!

あの黒い…」


博士:「だからこそ、外で待っていなさい!

正式に答えを得ることが先なんだ。

私の仮説からすると、相当危険が潜んでいる!」


パビ:「でも博士?

博士自身もそれでは、危険ということじゃないですか!


僕も手伝います!

僕は博士の助手なんです!」


博士:「やめてくれ。

頼む…もし君たちに何かあったら…


わかった…


君の頑固さは、ラビ譲りだからね。


もし、私の仮説が確かならば、


これは…おそらく…


何かの反物質だよ。」


パビ:「反物質?

そんなものが何故?eoの体内に?

反物質といえば、この間教えて頂いた例の?」


博士:「そうだ。

覚えいるかね?」


パビ:「はい、もちろんですよ。


えっと…

現在の物理学は、 すべての素粒子について、 すべて反素粒子が存在するとしていて、

反粒子は、 質量は同じで、 荷電などが逆のもののことをいいます。


電子に対して反電子 、 陽子に対して反陽子、 中性子に対して反中性子、 ヘリウムに対して反ヘリウム…すべての物質にはそれに対して反物質があると、教えて頂きました。」


博士:「そうだ。

そして、反粒子の存在は、 イギリスのポール・ディラックが、 1928年に、 特殊相対性理論と量子力学を統合した相対論的量子論 を作った時に、 その方程式の解として理論的に予言したものだった。


 ディラックは、 大きなエネルギーから、 粒子と反粒子がペアで生まれ 、 それらが再び出会うと、 大きなエネルギーを発して消滅して、 跡形もなく、 元々の無に帰ってしまうと言ったのだ。」


パビ:「無に?ですか?」


博士:「あぁ…

当時の科学者たちは誰一人、 そんな説を信じなかったんだ。

 まるで、 人間が生まれる時に、 同じ人間の影がもう一人生まれ、 この二人が出会うと、 実体と影が合体して一瞬に消滅するという様な話だから、 誰もが疑問に思うのは当然だからね。


でも…」


パビ:「でも?」


博士:「これを証明するかのような現象が、昔から存在するんだよ…


オカルト的空想の世界のようなことが、もしかしたら…現実にあるのかもしれないのだ。」


パビ:「現実に?!

そ、それは?」


博士:「自分にそっくりな人物を見ると、亡くなってしまうと恐れられているドッペルゲンガーと呼ばれる現象だ。」


パビ:「ド、ドッペルゲンガー?!」

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