第40話〝〜楓島〜″
〜楓島〜
最後の国家間の戦争が繰り広げられている場所
この島が、各々の神の降り立った場所と主張し、両軍が奪いあっている島だ。
過去から、この島を聖地と主張する宗教が数多く存在してはいたが、圧倒的な武力を持つモルゴ国、キシリス国と敵対した国は次々に敗れた。
ある宗教研究家は、両国の教典には、異なる部分が多いものの、主たる部分では、重なる内容があり、同じ神ではないかという結論を出し、消息が不明になる事件もあった。
中には、働く必要が無くなったことで、生きる目的を見失い、生きる刺激を得るためだけに戦争に参加しているものもいるようだった。
長い間、戦争を続けるには、武器、ロボット兵のの製造が必要だが、rizaが製造工場を管理してからは、製造できなくなった。
しかし、旧社会の間に各国が製造していた在庫だけで、これだけの長期戦でも底をつく様子は見られない。
シュワーーン!
eo:「ここだ。
ひどい…爆撃が絶えない…
しかも最前線で、ロボットたちどうしで争い合わせているなんて!
傷つけ合うことに何の意味があるんだ。
いつまでこんな事を続けるつもりなんだ!
戦っているロボットたちも、自分の命の尊さをもっと認識して大切にすべきなんだ!
もう!やめるんだぁー!」
eoは、戦場の中間地点に降り立った。
そこには…あるものがいた。
eo:「き…君は?」
モルゴ軍兵士:「おいおい、な?なんだあれは?
ロボット?
敵国の新たな戦力なのか?
おい!隊長に報告しろ!
ロボット兵を増強するんだ!
戦車は、背後から援護射撃だ、」
キシリス軍兵士:「おい!何だ?
奴らの新兵器じゃないのか?
撃て!標的をあのロボットに集中させろ!」
両軍共に、突然現れた得体の知れないロボットに対し、不安を増大させ、eoに向けて集中砲火で攻撃を仕掛けた。
しかし、eoは、そこを動こうとしなかった。
そこには…小さなトカゲがいたのだ。
eo:「ごめん。
僕がここにきたせいで…
君を守らなくては。」
その砲火は、とてつもない相乗効果で威力を増した。
両軍から放たれた砲弾が、ぶつかり合うことで想定以上の衝撃波となって、eoを襲ったのだ。
eo:「ま…まずい…
思っていた以上に…威力が…
まともにこのままダメージを受け続けると、君を守れなくなる…
とにかく君をどこかに…」
その時eoは、そのトカゲを口から身体の中に避難させた。
そして…胸に手をあてて、つぶやいた。
eo:「少しだけ我慢して。
ここなら安全だから。」
しかし、そのeoの行動は、この世界にとって、決して触れてならないものに触れてしまったのだ。
eo:「もう…やめるんだ。
僕は誰も傷つけない。
さあ、いくよ。
この新しいチカラで。」
そのチカラは、彼の電子エネルギーと新たに扱える気のチカラが混ざったチカラだった。
モルゴ軍兵士:「まさか!
あれ程の攻撃を受けたのに!」
キシリス軍兵士:「おい!
何なんだまだ、動けるのか?
…ん?
何しようってんだ?」
eo:「まず、君たちからだ。
同志よ。
ダメージは、最小限にするから…」
そして…eoは、両手を広げて両軍に向けた。
その瞬間、両軍の前衛のロボット達が一斉に倒れこんだ。
モルゴ軍兵士:「ロボット達が!
次々と倒れていく…
何なんだ!」
キシリス軍兵士:「見ろ!
ロボット達が一斉に!
おい?
ダメだ、遠隔操作も全て使えなくなっている…
あれは何なんだ!」
そして…eoは、第二波を放つ。
モルゴ軍兵士:「あいつは…
うぐっ…」
キシリス軍兵士:「ぐはっ…」
両軍全ての兵士がゆっくりと、そして…次々に倒れていく。
しかし…eoもまだこのチカラを使いきれていなかった。
キシリス軍に一人、意識を完全に失わずに起き上がろうとしているものがいたのだ。
「こうなったら…あれを…
最後の…あれを…」
eoは、倒れこんだロボット兵に近づいていた。
eo:「大丈夫だ…やはり壊れてはいない。
AIの機能停止状態になっているだけだ。
電子エネルギーだけだと、皆を壊してしまっていただろう。
よかった…」
その時…
倒れこんだロボット達が一斉に爆発した。
これが、キシリス軍の最終手段だった。
仮にモルゴ軍に負けて、ロボット兵達が奪われてしまっても、道連れにするために。
人類史上最悪のプラズマ爆弾を。
その瞬間、eoの心臓がみるみる赤くなり溶け出そうとしていた。
eo:「トカゲが…ああ…ぁ…
やめろー!」
eoは、溶解を防ぐために、電子エネルギーと気エネルギーを一点に集中させた。
そのエネルギーを同時に使用することは、闇のチカラもまた引き出してしまうものだった。
気エネルギーは、生み出すチカラ
電子エネルギーは、動かすチカラ
闇エネルギーは、消失するチカラ
この世界はこの三つでできている。
その気エネルギーと電子エネルギーをフルパワーで融合化した時…
闇エネルギーもまた瞬間的に、この世界に現れてしまった。
そして…それは、何もかもを飲み込んでしまう恐ろしいチカラだった。
eoは、このチカラをコントロールしようと試みたが、あまりにも強大過ぎた。
そして…周りは、何もかもが消失してしまった…
胸の中にいたあのトカゲさえも…
ブゥーン…
パビ:「博士!
見えてきました!
あれが楓島ですよ!」
博士:「戦闘の気配がないな…
よかった、間に合ったのか?」
パビ:「島に降りますよ!
あっ!
博士!
あそこを見てください!
eoですよ!
でも…誰もいないですね?」
博士:「eoのところにいってくれないか。」
パビ:「わかりました。」
ヒューン…プッシュー…
ガチャッ
パビ:「eo!
間に合った!
まだ、争ってはなかったんだね!
よかったよ。
でも…戦争なんてしていないじゃないか?
休戦中だったのかなあ?」
博士:「!パビ!
eoの様子がおかしいぞ!」
パビ:「えっ?
eo?
君…それは…涙…?
泣いているのか?
まさかそんな!」
eo:「博士…
私は…
ただ…助けたいだけだったんです…
誰ひとり…
失いたくなかった…
でも…」
博士:「でも…助けられなかった。
そして…全て失った。」
eo:「どうして?」
博士:「まさか…君にまで…。
何ということなんだ。
願うと叶わない…
この世界の法則だよ。
eo…君は、僕たちと同じチカラを得てしまったようだ。
もしかして、君がやったのか?」
eo:「全てが、呑み込まれていき、消えてしまいました。
抗うほど、そのチカラは増し…
そして…失った…
あぅ…」
博士:「何があったか聞かせてくれないか?
eoよ。
そして…その後、君を停止させてもらうよ。
いいね?」
eoは、全てを話した。
そして…博士は彼を停止させた。
そのあと、eoは、一言もしゃべらなくなった。
ただ…不思議な涙…
ロボットのはずの彼の目からは、とめどなく涙が流れていた。
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