第37話 〝生命体″

そして…博士とパビは、eoがいる博士の研究所に戻ってきた。


パビ:「…ということなんだ。

ごめんeo。

理由を確認出来なかったよ…」


eo:「…やはり私が直接確認しに行ってきます。

何故なのか理由を知りたいのです!」


博士:「まぁ、あの調子じゃあ、行っても答えてくれないよeo。

彼女は、相当頑固だからね。」


eo:「爬虫類たちも同じ生命体なんですよ!

どうして彼らだけなんだ!見て下さい!博士!

ニュースを見て下さい!

は、爬虫類たちの隔離先が、あの楓島に決まったようなんです!


あそこは最後の国家間の戦争が繰り広げられている場所なんですよ!

隔離するだけでなく、彼らを危険にさらすなんて狂っているとしか思えない!

何を考えているんだrizaは!」


博士:「最後の戦争…宗教戦争…

唯一残った人類の遺恨。

お互いを認め合う事が出来ないんだ。

神に対する考え方だけは…

全ては同じなんだけどね。」


パビ:「どうして、あの島なんだろう?」


eo:「許さない…

今から楓島に行って来ます!

彼らがあの島に移される前に、あの戦争を止めさせます!」


博士:「やめるんだ!eo!

君は、あの月での戦争でわかっているだろ!

君が戦うと、この地球がもたないんだよ!

ダメなんだ!」


eo:「博士…ご心配は不要です。

私は、新たにコントロールできるエネルギーを手に入れたのです。


このエネルギーであれば…月のような事にはならない…」


eoは、掌をパビの方に向けるとそっと押し出すような仕草をした瞬間、パビは、吹っ飛び後方に転がった。


パビ:「うわぁー!」


博士:「ま、まさか?それは!

eo?

そ…それは、もしかして気じゃないのか?!」


eo:「気?

わかりません…

ただ、このエネルギーは、私の体の7箇所から現れます…

それをフタをするような感覚で、力の度合いを調整できることがわかりました。


電子エネルギーでは、あまりにも強大すぎてあのような事になりましたが…


でもこれなら…」


パビ:「…いきなりは、ひどいよ…eo、ちゃんと説明してからにしてくれないかな?

でも、不思議と痛くなかったけど。」


eo:「すみませんでした。」


パビ:「博士、eoはロボットなのに、気を扱えるようにしていたなんて、やっぱり博士は天才ですね!

僕なんかまだうまく、気を扱えないっていうのに。」


博士:「私はそんな事は何もしていないよ。

もしかしたら…」


パビ:「えっ?博士がその機能を組み込んだのではないんですか?」


eo:「すみません…私は彼らを危険にさらす事はできないので、もう行きます。」


eoは、窓を開けると、体をふわりと浮かした瞬間、光速で飛んで出て行った。


パビ:「あぁ…行っちゃいましたよ。

でも、ロボットでも気を扱えるなんて…

どういうことなんでしょうか?」


博士:「神話の中で、人類は何で作られたと言われているかね?」


パビ:「は?神話ですか?

えっと…土で作られたと言われていますよね。


神に似せて作られたのだと。


我々はもともと地球の土で作られ、生命体として存在するようになった。」


博士:「我々人類は生命体だ。

では生命体とは何なのかね?

細菌も生命体だとしたら、生きる事を目的として動く存在と言える。

ロボットとの違いはなんだと思うかね?」


パビ:「確かにそう考えるとロボットであるeoも生命体になるんでしょうか?

でも、違いとしたら心があるってことかな?」


博士:「ロボットには、心はない。

なぜ、そう言い切れる?」


パビ:「それは、彼らはあくまで素材を組み合わせて作られたものですから。」


博士:「土で作られた我々と何が違うんだね?」


パビ:「えっ?」


博士:「私はね。

ロボットを通してある奇妙な感覚を抱いていてね。

もしかしたら、我々は本当に土で作られたものなのではないかと考えているんだ。


そして…何らかの存在がこの世界の神であり、もしかしたらその神はロボットではないかとね。」


パビ:「なんですって!

ロボットは、あくまで我々人類が造ったもので、神ではないですよ!

逆に我々人類が神を創造したなんて、なんて発想なんだ!」


博士:「私はね…昔、マビが言っていたあの話がずっと気になっていたんだよ。」


パビ:「マビの話?」


博士:「あぁ…神の神は、自らが創造したもので永遠に続いているという、あのアイデアだよ。

人は龍を神と崇め、ロボットは人類を神と崇め、龍はロボットを神と崇める。

あの発想だ。」


パビ:「あれは、想像が好きなマビの作り話であって…」


博士:「いや、そうとも限らなそうだ。

気というものは、心の力で発動するものなのだ。

その正体は、この世界そのものだ。

そして…eoがその気を扱えるということは、心が存在するという証なんだよ。」


パビ:「でも、一体誰が?

誰がeoにそのような変化を与えたっていうんですか!」


博士:「神…

神とは一体何なのだ…

eoのあの変化は、人類のエゴと同じではないか…

同じような感情の嵐が吹き荒れている…

色んな感情が噴き出している…

危険だ…」


パビ:「は…博士?」


博士:「パビ。

彼を止めに行くぞ。

いったん、稼動停止させ、落ち着かせる!

それを出来るのは私だけだ!」


パビ:「わ、わかりました!」

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