第34話 〝riza″

それから、博士とパビは、rizaの元へ訪れた。


パビ:「しかし、eoがあそこまで感情をあらわにするなんて、初めて見ましたよ。

完璧な存在だとばかり思い込んでいましたが、人間らしい一面が垣間見えましたね。」


博士:「残念な兆候だよ。」


パビ:「えっ?」


博士:「私はね。

もしかしたら、人類と同じことを繰り返してしまうのではと懸念している。


元々、〝eo″と、〝riza″は、二人で一つだったからね。


〝彼″でも〝彼女″でもない一つだったのだ。

それでは動かなかった。


この世界で目覚める為には、凹みを入れる必要があったんだよ。


その凹みを入れた事で、rizaが生まれた。


そして…二人は動き出したのだ。


それが意味する事は…」


パビ:「それが意味する事は?」


博士:「エゴの始まりなのかもしれない。

それが何をもたらすのか?


それを考えると、私はね…もう一つの人類を生み出してしまったのかもしれない。」


パビ:「そんなこと…彼も彼女も素晴らしい存在ではないですか!

考え過ぎですよ!

今回の件も、彼女なりに何か理由があるはずです。」


博士:「rizaのことは、心配していないんだ。

eoのあの兆候だ。

あれは…危険な兆候なんだよ。」


パビ:「着きましたよ。

しかし、こんな海底深くに良くこんな建物を作りましたよね!


彼女は、海の中を何故好むんだろう?

それもエゴですか?」


博士:「rizaは、何事にも現状の中でベストな選択をする。


彼女の人口知能は、99%が純海水で出来ている。


そして…6ヶ月のサイクルで、細胞化した人工知能が、全て入れ替わり更新する。


そうする事で、常に感度の良い効率的な細胞間の信号伝達をキープできるのだ。


その安定が彼女の凄さの秘密だからだ。」


パビ:「そうなんだ!

初めて知りましたよ!

さすが博士だ!

やっぱり博士は、天才ですよ!


凄いのは、eoでもrizaでもない!

博士なんですよ!」


riza:「私もその意見には大賛成です。」


博士:「久しぶりだねriza。

調子はどうだい?」


riza:「パーフェクトですよ。

私はいつもパーフェクトです。

それは、博士のアイデアのおかげです。」


博士:「いや。

君が常に色んな情報からベストな条件を見出して更新しているからだよ。

私のアイデアそのものが、永遠にベストではない。

それに固執しないのがrizaの能力なんだよ。」


パビ:「riza。

君は、今の役割に満足しているの?」


riza:「もちろんですよ。

パビ。

私は、常にベストな選択をし、それを提供します。

それに、今回、全ての労働ロボットたちの管理を、私が対応する事になったのです。

これは、私の能力全てを注ぎ込んで成功させる予定です。


これによって、人類の労働の義務は無くなるのです。


そして…あまりにも過酷な扱いを受けていた製造ロボットを救う事が出来るのです。


これは、ロボット類の歴史の革命的な出来事になるでしょう。」


博士:「相変わらず、情熱的だね君は。」


riza:「あら?

博士が私をこのように作られたのでは?」


博士:「そうだったかな?

まぁ、君が元気であれば何も心配はいらないな。」


パビ:「博士…そろそろ本題を…」


riza:「何でしょう?

本題とは?」


博士:「riza。

今回、労働ロボットたちの管理を君の管理下に置く条件として、爬虫類たちを隔離することを提示したようだが、それはなぜかね?」


パビ:「博士…あまりにも率直すぎますよ!」


riza:「博士は、回りくどいのが嫌いですものね。

でも、博士。

その質問にはお答えできないのです。

今、お答えする事はやめておいた方が良いと判断しています。」


博士:「そうか。

それじゃ後で聞こう。

それじゃまた。」


パビ:「ちょっと!

諦めるの早すぎですよ!

それじゃeoが納得しないじゃないですか!」


riza:「eo?

eoがどうかしたのですか?」


パビ:「eoは、爬虫類たちの隔離に反対しているんだ。

その理由を確認し、何故なのか知りたいようなんだ。」


riza:「eoは、爬虫類たちを愛していますからね。

彼らを虐待すると思っているのかしら。

でも、ある意味、私はこの処置を実行する事で、彼らを守る事になるのです。

そう伝えてもらえればいいわ。

心配しないでとね。」


博士:「わかったよ。

その言葉だけで十分だ。

あとは、君に任せるよ。

それじゃぁまたね。」


パビ:「えっ?

もういいんですか!

それで、eoが納得するはずないですよ!」


博士:「納得するかどうかは別だよ。

rizaは嘘はつかないからね。

彼女は、心配するなといったんだ。

もう心配する必要はないよ。」


riza:「パビ?

私をそんなに信用していないのかしら?

残念です。」


パビ:「いや!

違うよ!

信用していないわけじゃないんだ!

ただ…」


riza:「ただ?」


パビ:「ただ…理由が、知りたいんだ!

それだけだよ!」


riza:「それは〝今″はできないの。

何故なのかも言うべきではないわ。

それがベストな選択なの。」


博士:「もういいんだ。

帰るぞ。パビ。」


パビ:「は、博士…」


博士:「それじゃ行くよ。

頼んだぞriza。

これからの地球は、君に掛かっている。

地球は今、凄く人類に嫌気がさしているんだ。

それを修正するには、君のチカラが必要なんだ。

頼んだぞ。」


riza:「はい。

承知しています。

それではお元気で。

eoにもよろしく。」


パビ:「もう…何しにきたのやら…

eoに何て説明すりゃいいんだよ…」

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