第13話 アレイシア学院 雪模様 2

 さあ、滑るぞー、と勢いこんだのは良い物の。

 クレアは初心者だった。

 カミトは班長としてそんな彼女を置いていくわけにはいかなかった。

 ゲレンデのふもとの緩い坂で、カミトはクレアにスキーの基本を教えていた。


「坂はこうやって横になって昇るんだ。いちにいちに」

「いち、に、お、お、キャアアア!」


 クレアは派手にすっ転んだ。雪の上で尻もちをついてしまう。


「いたた……」

「おい、大丈夫か」

「受け狙いなんて、いまどき流行りませんわよ」

「うるさいわね。受けなんて狙ってないわよ。出来るんならあんたはよそに行ってなさいよ」

「そうやってカミトを独占しようとしても無駄ですわよ」


 そう言いながらリンスレットは実に慣れた感じでスキーで滑ってみせる。

 さすが北の雪国育ちだった。


「むむむー」


 クレアは難しい顔をしながら練習を続ける。

 カミトは隅っこで雪遊びをしているエストに向かって呼びかけた。


「エストー、そっちはどうだー」

「おおー!」


 エストはみんなの邪魔にならない隅っこで雪の玉を丸めて積み上げることに挑戦していた。その目が興奮に輝いている。

 彼女にはどうやらスキーよりもそちらの方が楽しいようだ。

 夢中で雪玉を丸めて遊んでいる。

 カミトは再びクレアの練習を見てやろうと顔を向けるが、その前にレスティアが回り込んできて声を掛けてきた。

 彼女はスキーの腕前はかなりのようだった。


「ねえ、カミト」

「なんだ?」

「ナンパはしないの? 男はそれをするためにスキー場に来るらしいわよ」

「しねえよ! 学院長やメイドみたいなこと言ってんじゃねー!」

「フフフ」


 レスティアは実に巧みにスキーを滑る。カミトが追いかけても捕まらない。


「なんてスキーの上手い奴なんだ」

「カミト、あたしの方も見なさいよ」

「ああ、見てるから安心しろ」

「わたくしの華麗なスキーもご覧あそばせ」

「ああ、お前も上手いよ」

「あ」

「どうした、エスト」

「崩れちゃった」


 見ると、エストの積み上げていた雪玉が崩れていた。


「残念だったな、もう一度頑張れ」

「うん」


 それぞれに楽しみながら時間が過ぎていく。

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